第22章 賞金首マリンを探せ(メキシコ編)その2
私達は近くの町に着いた。駅の近くに行くと、駐車場を見つけたので愛車を停める。私達は車のドアを開けて、駅がある方へ歩いていった。
見回すと、町の大きさは普通の地方都市って感じだ。駅前にはコンビニやのレストランなどが並んでいる。この町の大きさなら、2手に分かれて探した方がいいな。
私はナツに提案する。
「ナツ、名前はマリンって女の子だ。金髪で年齢は8歳~10歳くらいだ。金はないし、何処かに隠れている可能性が高い。なので、2手に分かれて探そう」
「とりあえず、足を使って探すか……」
ナツはそう言って、ブーツの赤ボタンを押すと、靴の底から複数の小さいタイヤが出た。
もう一つの青ボタンを押すと、ブーツにエンジン音が響く。エンジンが付いたローラースケートだ。ナツのお気に入りの武器だ。
「とりあえず、私は東口を探すよ。ナツは西口を頼む」
「オッケー」
「じゃあ、2時間後に駐車場に集合って事でいいかな? 何かあったら連絡くれ」
「おう、じゃあ後で。俺は西口を探すぜ」
そう言うと、ナツは素早く足を滑らして、エンジン音と共に消えていった。
スピードは原チャリ位の速さだ。もう、10年前に発売したブレードバイクって乗り物だ。10代の若い奴の間では流行っているが、私は昔の車やバイクの方が好きだ。
それはそうと……。私は町の様子を確認すると、駅前にはストリートチルドレンみたいのが地面に座っている。子供のくせに、目は濁ったような奴らばかりだ。ここにマリンがいる可能性は高いと思った。
木を隠すなら森の中、子供が隠れるなら、子供の中って事だ。
ちなみに東口はオフィス街が広がっており、西口は商店街や公園などがある。私は西口に向かった。なぜなら、ナツがサボらないか確認する為だ。
町の裏路地を探す。ナツはいない。
図書館を探す。ナツはいない。
公園を探す。ナツは……いた。
ベンチに横になって寝ているナツを発見した。両手を頭の後ろにやって、両足を組んで寝ている。自由人って感じのポーズだ。カッコつけてサボるとは腹が立つな。
私はナツのポンポン頭を叩く。
「おい、起きろよ。ナツ」
「久しぶり、冬子」
私は頭を抱えながらナツに言った。
「おい、久しぶりって、30分前に会ったばっかりだろう。いい加減サボるなよ」
「いや、瞑想中だ」
そう言うと、ベンチの背もたれに寄りかかり、何かに気が付いたって顔をした。変な宗教やヨガにでもハマったのか? いや、そういうタイプではない。
そして、ナツが突然に呟いた。
「そうか、思い出したぜ……」
「思い出したって何がさ?」
ナツは指を1本立てて左右に揺らしている。。
そして、意外な事を口にした。
「そういえば、昨日会ったぜ。マリンって女の子にさ……」
「えっええー!!」
私はにわかに信じられなかった。いつもの冗談だと思った。
ナツは語り始めた。
「冬子ちゃん、疑っているだろう? そう思って証拠もあるぜ」
「証拠だって?」
「ほら、このディスクを渡されたんだよ」
「ディスク?」
そう言って、一枚のディスクを渡してくれた。
1枚の変哲のないディスクだ。中身はパソコンがあれば見られるタイプだ。車の後部座席には、ノートパソコンがあるので問題ない。ナツは普段はディスクなんて持ち歩かない。なので、マリンに本当に会っている可能性が高い。
私はナツに質問した。
「なあ、マリンには何処で会ったのさ?」
「ああ、夜中に教会のトイレに行くときに会った。何か、物置部屋みたいな所で食事をしていたよ」
「食事?」
「ああ、缶詰だけどな。俺も分けてもらったぜ」
教会に隠れているって事なのか? でも、ルビーは教会の中を探したはず。もしかしたら、探してない場所にいるのかもしれない。隠し部屋でもあるのかな?
となると、黄金のマリア像を何処かに隠して、自分も教会の中に隠れている可能性が高いな。つまり、教会にいる可能性が高くなった。
私は他の質問をする。
「ナツ、他に何か言っていたか?」
「えーと、誰にも言うなって言っていたな。理由は知らないけどね」
なるほど、教会の人間に知られたくない事があるって事だな。あの教会には何かあるな。ルビーの言動は確かに不自然な所が多すぎる。
まずは警察には言えない。だけど、子供の命を優先させるなら、確実な警察に任せるだろう。それに最初から、誘拐とかの可能性は言わなかった。ずっと、マリンが最初から盗んだように印象操作していた。
それは、マリンが盗んで逃げる理由があったのを知っていたのだ。だから、私達に泥棒の印象をつけるために賞金首にした。
だって、愛する子供に賞金首を懸けるのはありえない。理由を述べていたけど、子供が教会から逃げるなんて異常な状態だ。ルビーが虐待をしていた可能性だってある。修道服で真面目な印象しか受けなかったからな。私の考えが甘かったかな?
私はディスクの中身を確認しようと思った。
「ナツ、急いで車に戻るぞ。パソコンでディスクの内容を見よう。そしたら、何か分かるはずだ」
「おう、了解だぜ」
私達は車に戻り、後部座席からノートパソコンを取り出した。先ほどのディスクを入れてみる。そこには人身売買のデータが入っていた。
私は人身売買のデータを確認すると、子供達のプロフィールが入っていた。性別、国籍、年齢、健康状態などが表示されている。主に6歳~12歳位の子供のデータだった。その中にマリンの名前もあった。
マリン=トル(9歳 女児)。アメリカからの移民の子供である。
1年前に失業率20%を超えたアメリカから、両親と共に仕事を探してメキシコ移民する。
両親は仕事を探しにきたが、爆破テロに巻き込まれて死亡。
残されたマリンはストリートチルドレンで毎日を過ごす。以降は残飯を漁る生活をしている。
しかし、健康状態は良好。(心臓移植に問題なし)
臓器移植の闇ブローカー(コロンビアマフィア)に納品予定。
なるほど、あの教会で人身売買が行われているって事だな。あの眼鏡をかけたルビーって女が首謀者なのだろう。マリンって女の子は自分が商品って事に気がついた。
だから、身の危険を感じて逃げたって所だろう。その途中で、証拠のディスクを見つけた。
そこで、マリンは証拠のディスクを持って、警察に駆け込もうとした。
しかし、ルビーに気づかれてしまう。逃げるのが難しいと判断して、教会の中に身を隠したって所だろう。おそらく、大人が入れない場所に隠れていたから、ルビーも見つけることが出来なかったのだ。
教会の中の探せてくれない理由が分かった。ヘタに内部を荒らせると、人身売買の証拠が出てきてしまうからだ。それが、警察に頼まなかった本当の理由だろう。警察は人が良さそうとか関係なく、教会の関係者を徹底的に洗うのが仕事だ。
そしたら証拠が見つかって、ルビーは逮捕されて死刑は免れないはずだ。だから、私達に証拠ディスクを取り戻させて、マリンを口封じで殺すつもりだ。
それなら、こんな所で時間を潰している暇はない。
「ナツ、教会に戻るぞ。マリンが危ない。見つけたら殺すつもりだ」
「だよな、悪党が考える事はいつも一緒だな……」




