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第16章 黄金のマリア像を取り戻せ(メキシコ編)その3

私は詳しくさらに詳しく聞く。

「では、黄金のマリア像がないと、信者から不満が出る感じとかですか?」

「ええ、それを目当てに教会に訪れる方も多いです。私達の信仰のシンボルであるので、ミサまでには用意してほしいのです」

期限は3日以内か……。結構タイトなスケジュールになりそうだ。


私は事件の詳細を深く聞いた。

「なるほど、事件が起きたのはいつ頃ですか?」

「えーと、昨日の夜です。気が付いたら、マリンとマリア像が消えていたんです」


昨日の夜なら、そんなに教会から離れてはいないはず。

小さな女の子が5キロの像を持って、森の中を移動するには時間がかかるだろう。


となると、まだ協会にいる可能性もあるな。

「教会の中に隠れている可能性はどうですか?」

「一応は全て探しました。若いシスターに協力してもらって隅々まで探しました」

「では、私達も教会の中を探してもいいですか?」

「ごめんなさい。ミサが近いので……」

ルビーはやんわりと断ってきた。


宗教上の理由かな? だが、ここで引くわけにもいかない。素人では分からないところに隠れているかもしれない。


だから、私はもう1度お願いする。

「どうしても、捜索は無理ですか?」

「私は構わないのですが、部外者がいると信者によく思われないのです。ミサ前にも、信者がお祈り来るので、部外者がいるとクレームが入る事が多いのです」

「なるほど。そういう訳ですか……」

「ええ、申し訳ありません。ご了承頂ければ幸いです」


おそらく、ミサは神聖な祭事だ。部外者がウロウロすると、熱心な信者などに何か言われるのだろう。また、歴史的な建物だから、壊されたくないのも理由の一つだろう。


ナツならやりかねないと思われたのかもしれない。もう、これ以上粘ってもダメそうだ。

私は教会の中の探索はあきらめた。なら、可能性は一つしか残されていない。


マリンって女の子は町に逃げている可能性が高い。食料を確保するには町に行くしかないからだ。町までなら、徒歩で2~3時間あれば行けるはず。なので、一番近くにある町から探した方がいいかもしれない。


とりあえず、街に出てもみるか。

「大体は分かりました。私達が絶対に取り戻します」

ルビーは私の手を握りながら頭を下げて来た。

「冬子さん、ありがとうございます。よろしくお願いします」

「ところで、警察には連絡しましたか?」


すると、ルビーは歯に物が詰まったような顔をした。まるで、何か隠しているように見える。私と目を合わせずに答える。

「いえ、大事にしたくないのです。身内の問題ですから」

「ひょっとして、教会の評判を気にしているのですか?」

「ええ、正直に言うとそうです。信者の支援あっての教会ですので……。警察はマズイのです。つまり、孤児が窃盗しているとなると……」


なるほど、警察に頼んだ場合はニュースや新聞で、噂が簡単に広がってしまう。

私達に依頼した理由が分かった。金目当ての賞金稼ぎなら、口が堅くて漏れることはない。


予想通り、ルビーは本音を漏らす。

「正直言うと、教会は寄付で成り立っています。孤児が窃盗犯なんて噂が流れてしまったら、寄付をする人がいなくなってしまうのです。そうなったら、教会が維持出来ないのです。だから、大事にしたくないのです」

「結局のところ、警察には頼めないって事ですね? だから、私たちに依頼した」

やっぱり、私の考えと同じであった。色々なしがらみがあって、大変そうだなと思った。


ルビーは俯いて答える。

「ええ、教会は世間体が重要な仕事ですから……。騒ぎになったら信者からの寄付が減ります。だから、教会内に警察を入れるのは絶対に出来ません」

「だから、子供に賞金首をかけて依頼したわけですか?」


そう言うと、ルビーは少し声を荒げる。

「ええ、賞金稼ぎなら口は堅いでしょう。それにミサを絶対に成功させないと寄付が集まらないので、手段を選んでいる暇はありません。教会の子供達の生活を守る為です。どうか、ご了承頂ければ幸いです」

「ええ、それは分かりました。絶対に他言はしないので、安心してください」

それから、窃盗があった日や経緯など細かい情報を聞いた。全ての質問に、ルビーは丁寧に説明してくれた。


それから、目に涙を浮かべて言った。

「冬子さん、マリンは私の子供です。必ず連れ戻してください」

「はい、分かりました。私達にお任せください」

「今日は教会に泊まっていください。もう、夜も遅いですからね」

「では、お言葉に甘えさえて頂きます」

とりあえず、今日は教会に泊めてもらう事にした。


私は爆睡していたナツの頭を叩いて起こした。心地のいいツッコミ音が鳴った。

ナツは間抜けた顔をして起きた。

「ふえっ? 終わったの?」

「ナツ、今日は教会に泊まっていくよ。それと、朝飯は出してくれるってさ……」

「やったぜ、飯代が浮いたな」

まったく、マイペースすぎる相棒で困る奴だ。


私は腕時計を見ると、午後の11時を過ぎていた。明日は7時に朝飯が出るので、体を早めに体を休ませよう。ルビーに案内された教会の奥には宿舎があった。そこには、若い10人近くのシスターが住んでいた。


ルビーは一緒に生活している仲間だと言った。彼女らは、恵まれないストリートチルドレンを助けるのが目的らしい。それはさておき、私とナツは宿舎の一室を借りて休む事にした。宿舎の部屋に入ると、6畳の部屋に2段ベッドがあった。


後はテーブルとイスがあり、質素な部屋だった。ナツはブーツを脱いで、バタバタとベッドに向かっていった。

「俺は上で寝る。冬子は下な」

そう言うと、素早くベッドに乗り、リラックスしているようだった。


私も靴と上着を脱いで、仰向けにベッドへ転がった。

そして、今回の依頼内容を再確認する。

1つ目は、黄金のマリア像の奪還をすること。

2つ目は、孤児のマリンを連れて帰ること。

3つ目は、警察沙汰にならないように、速やかに仕事をすることだ。


期限3日間だ。ミサに間に合わなかったら失敗って事だ。ルビーはミサを開いて、寄付金を集めている。その寄付金で戦争孤児を育てている。


ミサには黄金のマリア像が必要不可欠だ。まあ、客寄せパンダみたいなものだ。あのルビーって女も、寄付で生活をしているから必死なのだ。もし、教会が潰れたら無職なのだから……。けれど、宗教も金がないと生活が出来ないって事か……。なんか結局は金だよな。どんな人間も生活をするのに金が必要って事だな。


私は腕時計を見ると、もう12時を過ぎていた。色々あったが、明日から行動しよう。とりあえず、近くの町から探してみるか。教会にいなければ街にしか可能性がない。


そんな事を考えていたら、ベッドの上から寝息が聞こえて来た。おそらく、ナツはもう寝たのであろう。私も寝よう。明日から、黄金のマリア像を探す仕事が始まる。私は目を閉じて深い眠りについた。



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