第15章 黄金のマリア像を取り戻せ(メキシコ編)その2
私達はハコスカから降りた。目の前には依頼主の教会があって、扉は歴史を感じる重厚な雰囲気だった。
私は教会の扉を開けて中に入る。ナツもゾンビのように付いてきていた。なんかフラフラだ。まだ、眠いのかもしれない。
それよりも、教会の中は広くてビックリした。天井も高く、美術品のようなシャンデリアが吊るされていた。真正面には祭壇が見えた。
入口から祭壇までの道を身廊という。身廊っていうのは映画とかで見るバージンロードだ。
いわゆる、新郎と新婦が手を繋いで歩く道だ。その身廊の横には、沢山の椅子と机が設置してある。これは、よくある結婚式の招待客が座る場所だ。椅子の数から、余裕で100人以上が入れそうだ。それほど大きい教会だと言う事だ。
私は少し大きな声を出した。
「すいません。誰かいませんかぁー?」
しばらくすると、祭壇の後ろにある扉が開いて、銀縁の眼鏡を掛けたシスターが出てきた。
シスターは声をかけてきた。
「賞金稼ぎの方ですか?」
年齢は20代後半くらいだろうか? 若いが落ち着いた雰囲気があり、もしかしたら30代なのかもしれない。
シスターは修道服を着ており、前髪はキッチリ揃っている。いかにも、真面目そうな印象は学生時代の委員長を思い出した。
私はシスターに遅れた事を詫びた。
「私達が賞金稼ぎです。遅れてしまして、大変申し訳ありません」
「いえ、遅れる事はメールで連絡を頂いていたので結構です」
「私は冬子と言います。横いるのがナツです」
ナツは笑顔で手をヒラヒラと振る。おいおい、お前は無法者かよ。普通の会社だったらクビだよ。だが、
ルビーは気にすることもなく自己紹介をした。
「私はこの教会の責任者のルビーです。よろしくお願いします」
私はルビーに頭を下げて、丁寧に挨拶をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ルビーは不安そうな顔で私達を見ていた。まあ、見た目が若いから心配なのだろう。ナツは特に幼く見られるパターンが多いのだ。だが、ここで依頼主を心配させてはいけない。
私はルビーに聞いてみた。
「心配ですか? これでも腕は立つ方です」
「いえ、かなり若い方達だと思って……」
「なるほど、今までに10人程の賞金首を捕まえています。ワイルドバンチにも記載されていたと思いますが……。とりあえず、ご安心頂ければ幸いです」
だが、ルビーは心配そうな顔で指を指す。その指の先にはナツが爆睡していた。身廊の横にある椅子に座って、国会議事堂の政治家のごとく爆睡していた。
起こすと面倒なので、そのまま話を進める事にした。ナツの野郎、マジでふざけんなよ。正直、今すぐに殴ってやりたい。いつも、私が謝る羽目になるのだ。
私は感情を殺してシスターを安心させる。
「すいません。あの爆睡しているバカは、戦闘要員なので気にしないでください。私が交渉役なのでご理解頂ければ……」
「なるほど、分かりました。それで結構です」
そう言っていたが、ルビーの顔は引きつっていた。まあ、当たり前だな。ナツの奴、あとで説教地獄を見せてやる。そして、頭グリグリの刑で泣かせてやるからな。
私は依頼内容の確認をした。
「さて、依頼内容の件ですか……」
「とりあえず、座ってください」
そう言って、祭壇の横にある丸椅子を差し出す。
私は椅子に座って、依頼内容を聞き始めた。
「冬子さん、内容の件ですが改めて説明させて頂きます」
「ええ、黄金のマリア像を取り返して欲しいって依頼ですよね?」
「はい、私は修道院で戦争孤児を育てています。もちろん、わが子のように育てています。
しかし、孤児の1人が黄金のマリア像を盗んでしまったのです。期限は3日以内で取り返して頂きたいのです」
ワイルドバンチの情報では、賞金首はマリンって名前だったな。まさか、子供とは……。
「ということは、賞金首って子供ですか?」
「そうです。無傷で取り戻してください。子供とマリア像の両方です」
孤児というのは、第三次正解大戦後の戦争孤児の事を言っているのだ。アメリカから沢山の子供が、移民としてメキシコに流れた噂は聞いている。アメリカは世界恐慌で、大人でも仕事がまったくない状態であるからだ。
しかし、メキシコでも子供に仕事なんかないから、結局は犯罪に走るしかいないのだ。その結果、大量の子供がストリートチルドレンとなって街にあぶれている。
彼らは窃盗、ドラック売買、人殺しなどの犯罪も平気でやるのだ。だから、子供だと思って、油断をして殺された観光客などは多い。人間は追い込まれれば何でもやるのだ。まあ、戦後の不景気を食べていくためには仕方のない事だ。
私は詳しい内容を聞くことにした。
「そのマリア像の写真はありますか? 大きさや特徴があったら、教えて頂きたい」
ルビーは1枚の写真を差し出すと、そこには黄金に光るマリア像が写っていた。
なるほど、これは高価そうなマリア像である。
ルビーはマリア像について説明をする。
「大きさは50センチ位で重量は5キロ位です。特徴は純金で出来ています」
なるほど、値段にすると3000万ギル位の価値だな。まあ、本物の場合の時だけどね。
「あとは、盗んだ子供の顔写真はありますか?」
すると、ルビーはもう1枚の写真を渡す。
「1年前に修道院に来た子供です。とても、窃盗をする子とは思えないのですが……」
私は写真を受け取った。そこには8歳~10歳位の金髪の可愛い女の子が写っていた。だが、反抗的な目をしている。
ちょっと、ナツに似ていると思った。まあ、どこにでもいそうだ。
「名前はマリンと言います。明るくて素直な性格の子で、何でこんな事をしたのかしら?
何か理由があると思うのですが……」
「それを調べるのが、私達の仕事なので任せてください」
私はルビーに確認しておく。それは目的の賞金額のことだ。
「メールで確認しましたが、賞金額は200万ギルを頂く形でよろしかったでしょうか?」
すると、ルビーは鞄から金出して見せた。
「はい、お金は用意しています。経費はある程度は負担できます。まあ、交通費程度ですが……」
「なるほど、心遣い感謝します。ところで、期限が3日というのは、何らかの理由があるんですか? かなり、期限は短いように感じましたので」
「ええ、あの黄金のマリア像はミサで必要なものなのです。そのミサが3日後にあるのです。そのミサとは……」
ミサとはカトリック教会においての祭儀である。つまり、教会のお祭りって事だ。どうやら、ルビーの説明だと黄金のマリア像は祭りのシンボルらしい。




