第13章 コンビ誕生秘話(イタリア編)その3
ナツがハンバーガーを頬張りながら話す。
「モグモグ。俺に作戦は任せてもらえないか?」
「いいけど、どうやってブレンドを潰すつもりだ?」
ナツはポテトフライに手を伸ばしながら質問に答える。
「ああ、マロンには兄貴がいる。別のマフィアのボスをやっている。さっきの内容の会話をさぁ、その兄貴に送ってやるのさ……。そしたら、どうなると思う?」
なるほど、マロンの兄貴が弟の仇を討つってわけか。このナツって少女は結構頭が切れるんだな。すごく、お馬鹿さんに見えるけどな。
そのナツはニヤリとした表情を作る。
「これなら、俺達の手を汚さないで済むだろ。それに無実も証明されて一石二鳥だ。俺って頭良くねえ?」
「でも、これなら手を組む必要はなかったはずだろ? 自分1人で解決出来たはずだ。それなのに、私に話して何のメリットがあるんだよ? 昨日は殺し合っていた相手だぞ?」
「それはな、冬子と話をしてみたかったからだよ」
「なんで?」
ナツはオレンジジュースに手を伸ばしながら答えた。
「それは、この件が終わったら話すぜ。まあ、先にブレンドの件を片付けようや」
「ああ、分かったよ。とりあえず、さっさと終わらそう」
そして、私達はマロンの兄貴に会話の入ったデータを送った。マロンの兄貴は弟の死を悲しんだ。すぐに、自分の部下に仇を討たせるように手配した。
ブレンドには裏切りの制裁を与えるようにと。そして、楽に死なせるなという命令と共に……。数日後、ブレンドの死体が、荒野に転がっているという話が入って来た。
手の指は全部切断された状態だったらしい。後は両方の目玉がくり抜かれていたらしい。裏切りものには制裁ってやつだ。シチリアのマフィアの世界は裏切りを絶対に許さない。血の掟によって、ブレンドは制裁されたのであろう。この辺は日本のヤクザと同じだな。
こうして、ブレンドとの戦いは幕を閉じたのであった。ナツは依頼主にマロンは自分が殺したと伝えていた。そして、ちゃっかりと半額の賞金を貰っていた。その賞金250万ギルもすぐに使ってしまっていたけどね。なんか、ナツは憎めない奴だと思った。
それから数日後。
私はナツに話があると呼び出されたのである。待ち合わせ場所はイタリアの観光名所であるミラノの大聖堂広場前である。目の前には、ミラノの象徴であるドゥオーモ。正式な名称はサンタ・マリア・ナシェンテ教会である。
教会の一番高い場所にある黄金のマリア像が、ミラノの街を見守っていた。時刻は夕方で、教会に夕日が差し掛かっており、沢山の観光客がにぎわっていた。私は辺りを見回すと、赤毛の少女がゆっくりと歩いて来た。それはナツであった。
ナツが声を掛けて来た。
「やあ、来ると思わなかったぜ。冬子ちゃんよ」
夕日がナツの赤毛を照らして、神秘的な赤色を作っていた。ナツは私の顔をジッと見て来た。
しかし、コイツは一体何の目的で、こんなことをしているのだろう。
「ナツ、この件が終わったら話したい事って何だよ? ブレンドの件は片付いただろ。
他の用ってなんだよ? 金なら払わねえぞ」
「冬子、この先の当てはあるのか?」
「いや、特に決めてないよ。また、用心棒の仕事を探すつもりだ。しばらくは無職ってやつだよ。私は拳銃の腕しかないからな」
「そこで、俺に良い提案があるのよ」
ナツは私の肩に手をまわして言った。すげー、馴れ馴れしい奴だな。
「なあ、冬子さぁ。私の助手をしないか?」
「助手?」
「そうそう、賞金稼ぎの助手だよ。いわゆる。相棒だな」
「ふっ、賞金稼ぎか……。悪くないかもね。アハハハハハハ」
私は少し迷っていた。何にするにでも、金が必要だ。
すると、ナツが顔を近づけてくる。
「俺も1人で仕事やるのは限界を感じていたのよ。今回の件で更にそれが強くなった。
だから、頼れる相棒が欲しくなったのさ」
「なんで、私を選んだのさ?」
「それはシンプルに強いからだ。自分より弱い奴とは組みたくない。俺は強い奴が好きだ」
「なるほどね。それで分け前は?」
「それもシンプルに山分けでどうよ? 悪くない条件だと思うけどね」
「いいよ、ナツ」
私は返事をした。この時に何故、即答したのか分からない。
たぶん、ナツに惹かれ始めていた。いや一緒に過ごしたら楽しそうな予感がしたからである。ナツは驚いた顔をした。
「いいよって、俺と組んでくれるって事か?」
「まあ、しばらくならね」
「わあ、やったー」
ナツはガッツポーズをして喜んでいるようだった。そして、顔を赤くして照れながら喋る。
「正直、断られると思ったぜ。なんか、真面目そうなタイプだしな」
「ああ、ちょっと迷ったけどね。まあ、人生は長いしね。こういう経験も悪くないと思っただけだよ。お前の全部信用はしてないからな。ダメなら、すぐに解散だぞ」
私はそこは厳しい口調で言った。だが、ナツが気にせずに握手をしてきた。
「それでもいいさ、冬子」
「ナツ、よろしく」
そして、ここに2人の女賞金稼ぎが誕生した。
この賞金稼ぎコンビが、世界中に名を轟かせるのはもう少し先の話である。
イタリア編は完結です。
次回より、メキシコ編をやります。




