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第10章 ナツ VS 冬子(イタリア編)その2

それにコイツの自信がある目はむかつくぜ。自分が正しいと言わんばかりの目がな。

冬子が俺の目を見ながら喋る。

「お前、ボスを殺すつもりなのか?」


俺もガンを飛ばし返してやった。

「ハハハ、お前バカだろ。殺したら半額になっちゃうだろ? 俺は金の為に生きているんだよ」

「そうか……。でも、こっちは殺す気だ。死にたくなかったら動くなよ。次は拳銃じゃなくて心臓を撃ち抜くつもりだ。マジだぜ」

「はいはい。抵抗しませんよ」


俺は無抵抗のポーズをする。すると、冬子は拳銃をちらつかせる。

「よし、そのまま動くな。動いたら撃つぞ」

クソ、ヤバイぜ。何だ……この女はスキがない。多分、動いたら死ぬな。ブレンドとはレベルが違いすぎる。仕方ないので素直に従うフリをして、反撃するしかないな。


冬子は拳銃を両手で構えた。

「両手を頭に抑えて、床に伏せろ。動くなよ」

「分かった、分かったよ。言うことを聞くよ」


俺は両手を頭につけようとする。

それと同時に素早く、足で目の前の大理石のテーブルの端を踏み潰した。だが、冬子も同時に動き、素早く拳銃の引き金を絞ったのであった。


俺に向かって2発の弾が発射された。しかし、大理石のテーブルはテコの原理で立ちあがった。俺はテーブルの裏に隠れた。すると、テーブルに2発の弾がめり込み、盾になったのである。


その行動に冬子はビックリした顔をする。

「なっ?」

拳銃の弾は残り3発。冬子って女は倒すのは厳しい。


俺が頑張って倒せても、無傷な状態ではいられない事は分かる。なら、戦闘を出来ない状態にするだけだ。リボルバー拳銃は装填に時間がかかるのが欠点だ。


だから、拳銃の弾を空にしてしまえば攻撃は出来ない。残りの3発を全部撃たせて、そのスキに逃げればいいだけだ。そして、逃げるついでにマロンを捕まえる。よし、とりあえず冬子の拳銃の弾を空にしてやるぜ。


俺はテーブルの裏から飛び出し、右側から冬子に回り込んだ。

そして、顎を狙って下から右足を上に蹴り上げた。

「ぶちまけろや、ジャップ」


しかし、冬子は後ろに、ボクサーのように背をそらして避けた。コイツ、俺の蹴りを簡単に避けやがった。だが、これは避けられないはずだ。


俺はそのまま蹴り上げた右足を地面につくと同時に、その反動で左後ろ回し蹴りを放つ。

「このアマ、喰らいやがれ」

しかし、冬子は体を左に半回転しながら避けた。


おいおい、マジかよ? 俺の蹴りを見切っているのか? ほとんど、見破られた事がないはずなのに……。俺は結構なショックを受けてしまった。


悔しいがコイツ、強い。今までに会った中で一番強いかもしれない。いや、でもやるしかないだろう。500万ギルの仕事だし、そもそも逃がしてもくれそうもない。


冬子が話しかけてきた。

「やるじゃないか、お前は相当強いな。こっちは攻撃を避けるので精一杯だよ」

「じゃあ、避けなくていいだろ。蹴りに当たってくれよ」

「そういうワケにはいかないよ。こっちも仕事なんでね」

そう言うと、拳銃を向けて来た。ヤバッ、早いぜ……。俺も同時に、一人用のソファを冬子に目がけて、


サッカーボールのように蹴った。

「おりゃぁあああー」

聞こえた銃声は2発。拳銃の弾が宙に舞ったソファにめり込む。ソファが盾になったのである。銃口を見れば大体の弾道は予測がつくんだよ。冬子はまたまた驚く。

「こいつ、ソファを盾に……」


よし、残りの弾は1発だ。あと1発を防げば勝ちだ。拳銃の弾を装填しようとしたら、そのスキに蹴りをぶち込んでやる。覚悟しやがれ、日本人女。


俺はソファが一瞬、冬子の視界を防ぐチャンスを狙ったのだ。そして、ソファが床に落ちる瞬間に、冬子に向かってジャンプした


しかし、冬子は俺に向かって、口元に笑みを浮かべて拳銃を向ける。

おそらく、空中なので、動きを変えられないと判断したのだ。そして、俺を殺せたと思ったのであろう。だが、甘い、甘い、甘いぜ。空中でも動きを変えられる方法があるんだぜ。


俺は左足でパブにある柱を蹴って、身体を方向転換した。いわゆる、ポールダンスで使う柱だ。そして、冬子の拳銃の照準から逃げる。

予想外の動きに驚いたのだろう。冬子が口をポカーンと開けた。

「なっ?」


俺は空中でミドルキックを放つ。

「もらった、死ね」

よし、決まった。これは、避けられない。そこからは、全てがスローモーションに見えた。冬子も焦った顔をしているが、とっさに左手でガードをする。


その華奢な左手でガードは無理だ。俺の鉄板入りブーツで、腕ごとぶち折ってやるぜ。俺のキックが冬子の左手首にめり込む。何かが壊れた音が響いた。


おそらく、冬子の骨が折れたのであろう。冬子の顔が苦痛に歪んで苦しそうな感じだ、

よし、やったぜ。これで俺の勝ちだ。手首の痛みで戦闘不能だ。


その瞬間、俺は冬子と目があった。だが、冬子の目は死んでいなかった。その顔は勝ち誇ったように見えた気がした。冬子は右手の拳銃をゆっくり向けた。冗談だろ? まだ、動けるのかよ、この女は……。やばい、拳銃には残りの1発の弾が入っている。


俺は地面に着地してないので、空中で方向転換はもう無理だった。これは避けられない。やべえ、死んだかも……。冬子は拳銃の引き金を絞った。ホール内に銃声が響き、俺は弾を避ける事が出来なかった。


しかし、冬子は左手のダメージがあったせいか、わずかに、銃の標準が外れたのであった。

おそらく、左手の痛みで集中力がなかったのだと思われる。


その結果、俺は右腕をかするだけで済んだのだ。だが、右腕から大量の血が飛び散った。

地面にはポタポタと血が落ちる。俺は思わず大声で叫んだ。

「痛ってぇえええー。クソ、右腕が……」


俺は右手を抑えたが、血が止まらない。そして、冬子も左手を抑えている。しかし、この女はまだ戦う気があるらしい。折れた左手首をスーツのポケットに入れて、拳銃の弾を取り出している。弾を拳銃に装填しようとしているみたいだ。


なん……なんだ、この女。左手首が折れているのに、戦おうとするなんて狂っているぜ。おいおい、コイツは化物じゃないか。とても、500万ギルの案件じゃないぞ。


それよりも、俺の右手の出血もヤバイ。いわゆる、出血多量の状態だ。このままだと意識が飛んじまう。クソ、悔しいが一旦撤退だ。俺はポケットから煙幕弾を出す。それを床に叩きつけると、ホール全体が煙に包まれる。


冬子が目を擦りながらゴホゴホと咳をしている。他にも、周りにいる人間も同様に咳き込む。これで、数十秒は稼げるぜ。俺はパニック状態になった客に紛れて裏口に走った。


そして、裏口から外の道路に出る。

ブーツの赤ボタンを押すと、靴底からローラースケートのようなタイヤが出る。次に青いボタンを押した。すると、バイクのようにエンジン音が鳴って、タイヤが自動回転する。俺はバイクのように道路を走り出した。


このブーツは最大60キロまでスピードを出すことが出来る。日本のバイクメーカーが作ったモノだ。俺は車をスイスイ避けて、安全な場所まで逃げる。右腕からは血が出ているので、左手で押さえて出血を止める。しかし、無様に逃げる事になるハメになるとは……。


この俺が、このナツ様が逃げる? いつもカッコよく敵を倒していたのに……。

思わず、俺は悔しくて叫んだ。

「くそったれがぁあー」


しかも、賞金首は捕まえられずに、利き腕に重傷を負ってしまい、まったく不運な日だった。冬子って女はヤバイ。次に戦ったら、どちらかが死ぬ。拳銃の腕も凄いが、負傷しても戦おうとするメンタルもヤバイ。


しばらくすると、俺は痛みと悔しさが同時に溢れて来た。生まれて始めて賞金首を逃がしてしまった。悔しすぎて涙ぐんでしまった。情けないぜ。まったく。次は絶対に倒してやるからな、日本人女。


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