表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/118

第72章 交渉

今から数分前、ワン・シャンリンは……。


ワン・シャンリンはヘリコプターのコントローラーが効かずに焦っていた。もう、墜落が免れないと判断して、素早く脱出する事にした。パイロットの部下を見捨てて、自分だけヘリコプターから飛び降りた。


背中に背負っていた簡易パラシュートを開き、ビル下の大木に向かって降りていく。そして、このまま逃亡をしようと思っていた。


しかし、ヘリコプターの方が先に墜落して、その爆風で巻き込まれてしまう。そして、ビルの窓に体を叩きつけられて、背骨と右足を複雑骨折してしまう。それでも、なんとか地面に降りる事ができた。


だが、骨折による激痛で、その場を1歩も動く事が出来なかった。それから、地面に座り込んでしまった。もう、辺りは真っ暗な夜になり、雪が降り始めていた。ワン・シャンリンは、自分が初めて負けた事を認めた。


そして、悔しそうに呟く。

「はあ、はあ……。私がこのザマだと? クソ、クソ……。あんなガキどもに……」


ワン・シャンリンのすぐ目の前には、ヘリコプターの残骸が燃えている。警察や消防が来るのも時間の問題だ。彼女はこのままだと、警察に逮捕されてしまう事を恐れた。捕まれば、確実に死刑だ。だが、一歩も動けない状態なのだ。


そこに、東雲姉妹が近づいてきたのであった。東雲シマは、スーツ姿に袖を通さず、トレンチコートを羽織っていた。妹の東雲ハコネはセーラー服に、新選組の羽織のようなモノを着ていた。それは東雲組の半纏であった。


ワン・シャンリンは2人の顔を見ると、安堵の表情を浮かべた。

「しっ、東雲シマ、助かったぞ。私を海外に逃がしてくれ……。はあ、はあ、まず車を用意してくれ、この通り、足が折れていて動けない」


しかし、東雲シマは煙草を吸いながら、冷たい声を出した。

「まず、データが先や……」

「そうか、そうだったな……。ちょ、ちょっと待ってくれ。これに入っている」

そう言って、懐からCDケースを取り出した。


東雲シマはそのCDケースを開いた。

「なんや、割れとるやないか?」

「すまない、墜落して時に割れてしまったみたいだ。だが、聞いてくれ。屋上の扉前に、ノートパソコンにあるはずだ。それにデータが残っているはずだ」

「そうか……」


そう言うと、東雲シマはワン・シャンリンに背中を向けた。そして、入れ替わるように、東雲ハコネがワン・シャンリンの前に立ち、上から見下ろしてきた。それから、ニッコリとした表情を浮かべた。


次の瞬間、ハコネは日本刀を抜刀しながら叫んだ。

「死ね」

その刃の先端はワン・シャンリンの喉をかすめた。


すると、ワン・シャンリンの喉がパクリと口を開いた。その口から血が水道のように流れ出す。ワン・シャンリンは喉から、溢れ出す血を止めようと、必死に両手で抑える。


それから、振り絞るように声を出した。

「ごっ、おぐかはぁ……。裏切っ……、お前ら……」

そして、ヒューヒューと口から声を出しながら、苦しそうな息遣いになっていく。


東雲ハコネはニヤニヤと口元を緩める。

「ふっ、せいぜい苦しんで死んでいってや」


その言葉に、ワン・シャンリンは恨めしい顔になっていく。

「こっ、こっ、こっ……。ころひゅてやる、ころひゅ……」

「なんや、全然聞こえへんで。なんて?」

「こひゅる、こひゅ……、こひゅー……」


しばらくすると、ワン・シャンリンは喉から両手を離した。もう、手を動かす力もなかったのだ。その結果、喉から大量の血がドバドバと流れて出し、そのまま前のめりに倒れて死んだ。アスファルトの地面が地に染まっていく。


東雲シマはロイド保険のビルを見上げた。

「ハコネ、データは冬子ちゃんが持っとる。奪うで……」

「うん」

こうして、2人はロイド保険のビルに向かった。



私とナツはノートパソコンを持って、20Fのオフィスにいた。そして、パソコンのデータの中身を確認すると、地方で一人暮らしをしている高齢者の個人データが入っていた。もちろん、土地台帳のデータもあった。


その数は名簿の数は1104313人にものぼった。ほとんどの人が日本海側に近い、メタンハイドレートの発掘地域に住む人々だ。ここに住む人を殺して、外国人を住ませて、乗ってしまおうという計画だったのだろう。


これを、シマ姉さんが計画していたと思うと、頭がクラクラした。だが、まだデータは元の持ち主のモノだ。とりあえず、日本を守ったみたいだ。しばらくすると、スマホに着信があった。相手はシマ姉さんだった。


私がすぐに電話に出た。

「シマ姉さん……」

「冬子ちゃん、ワン姉妹を倒すとはさすがやな……」

「うん」

「データはどないした?」


データ? おそらく、この土地台帳の事を言っているのだ。シマ姉さんは土地台帳を盗んで、名前と写真を書き換えて、別の人間の乗っ取らす計画だった。それがないと、メタンハイドレートの発掘現場を作るのが難しいのだろう。


例えば、反対する人間がその土地に残り、ネット上に反対運動の動画でも流されたら、マスコミが来て計画がパアになるからだ。でも、これ以上シマ姉さんに悪い事はしてほしくない。これはヤクザのシノギの範囲を超えている。


だから、私はハッタリをかました。

「ワン・シャンリンが持っていたと思うよ。ヘリコプターごと落ちたから、データも粉々だよ。もうないから、メタンハイドレートは諦めて、姉さんもハコネも海外に逃げなよ。もう、分かっていると思うけど、欣也伯父さんが2人の命を狙っているよ。私はさぁ、2人に死んでほしくないよ、どれだけ悪人でも……。家族だから」

「ハハハ、冬子ちゃんは相変わらず優しいな。でも、お姉ちゃんに嘘を付いたらあかんで。冬子ちゃん、ノートパソコンを回収したはずやろ? それ、持ってきてくれへんか?」


何故か理由は分からないけど、データが残っているのを知っている。もう事前に、ワン姉妹に聞いたのかもしれない。こういう場面で、シマ姉さんはハッタリをかまさないタイプだ。そう、土地帳簿のデータがあるのを確信しているのだ。


私はその返事を拒否した。

「私が嫌だって言ったら? このパソコンを破壊するかもよ」

「なら、奪いに行くで。殺し合いや」

「本気なの?」

「嘘や、嘘やで……。ウチは冬子ちゃんと戦いたくないわ、ハハハ。とりあえず、ウチと会わへんか? これが最後になるやろうし……」


先程とは違い、いつもの優しい声だった。懐かしく感じて、泣きそうな感じになる。私はどうしても、あの2人に会いたくなった。


だから、こう答えたのである。

「いいよ、パソコン持っていくよ。別れの挨拶くらいはしてもいいよ」

「そうか、分かったで……。冬子ちゃんのいるビルの前で待っとる。ハコネも一緒や」

「分かった、すぐに行く」

私はノートパソコンを持って、シマ姉さんのいる場所へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ