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第69章 デスドローン、再び

今から数分前……。ワン姉妹はロイドビルA棟の20Fにいた。


そして、ワン・シャンリンはソファに座ってテレビを見ていた。そのテレビ画面には、移民解放連盟の二階堂の逮捕されたニュースが流れていた。つまり、お台場カジノの占拠事件が解決したのであった。


最後はあさま山荘事件のように、警察が強制突入にして、数人の負傷者を出したものの終わったのだ。元警視庁のコメンテーターによれば、二階堂は死刑か終身刑になる可能性が、高いと解説されていた。


二階堂は逮捕の瞬間、沢山のカメラに囲まれながら、こう叫んでいた。

「ワン・シャンリンは永遠に不滅だぁー」

そう叫ぶ彼の表情は何処か満足毛な顔をしており、遅い青春を取り戻したようであった。


ワン・シャンリンは妹に伝える。

「マーメイ、二階堂が逮捕された。警察がこちらに動くのも時間の問題だ。あと、時間はどのくらいだ?」

「およそ、20分程度だ。しかし、まずい事になったぞ」

そう言って、ワン・マーメイはパーカーのフードを頭から取った。


それから、防犯カメラの画面を姉に見せた。

「姉さん、侵入者だ。おそらく、東雲シマが言っていた賞金稼ぎだ」

「天王洲文太の孫娘だな……」

「ああ、ココに来るのも時間の問題だ。ならば、これを使うか……」

ワン・マーメイはそう言うと、イスから立ち上がった。


そして、あらかじめ用意していた段ボールから、新作のデス・ドローンを6台取り出した。それは土星をイメージさせる兵器であった。


本体は球体型のドローンであり、その周りには、電動丸ノコギリのギザギザの刃が装着されているのだ。刃の部分は回転するように出来ており、相手の首を簡単に切り落とせる兵器である。


ワン・マーメイが目を見開くと、6台のデス・ドローンが空中に浮かびだす。これは頭に埋め込んだICチップにより、脳波によるコントロールで、自由自在に動かせるのだ。まあ、ファンネルみたいなモノだ。


このシステムはワン・マーメイが大学時代に、IT会社から資金提供をしてもらい、独学で開発したドローンであった。元々は体の不自由な人の為に作られた、介護補助ドローンであった。


しかし、ワン姉妹は軍需産業の方が儲かると判断して、この技術を軍用ドローンに転用したのだ。そして、今回このような刃物型ドローンを用意していたのは理由がある。


冒頭でナツ達を品川埠頭で襲った爆弾型ドローンもあるが、ロイド保険のシステムコンピューターを爆破に巻き込む訳にはいかなかった。しかし、刃物型のドローンであれば、敵を切り刻むだけで済むのだ。


ワン・マーメイはニヤリとした表情を姉に向けた。

「姉さん、あとはデータを読み込みが終わるのを待つだけだ。画面の表示が100パーセントになったら、パソコンからCDを取り出してくれ。姉さんは、そのCDを持って先に逃げろ。私があの賞金稼共を殺してくるよ」

「マーメイ、一人で大丈夫か? あいつら、品川埠頭でデス・ドローンを破壊した賞金稼ぎだ。若いからって甘く見るなよ」

「キャハハ……。姉さん、私はIQ180だぞ。あんな、バカ共には負けないよ。10Fのエントランスで待ち伏せすればいい。2人とも手足を切り落として、ダルマにしてやるよ。じゃあ、行ってくる」


そして、ワン・マーメイはA棟の10Fへ向かった。その後ろを6台の電動丸ノコギリ付き、ドローンが飛びながら追いかける。



俺と冬子はエレベーターの中で会話をしていた。冬子はバイクにまたがり、エンジンを駆けっぱなしであった。俺はその後ろに座っていた。


俺はエンジン音がうるさいので、大声で話しかけた。

「冬子、姉のワン・シャンリンはお前に譲ってやるよ。父親の仇だからな。その代わり、妹は俺にくれ。確か、賞金額は400万ギルだっただろ?」

「ナツ、油断するなよ。妹の方が残虐な性格って噂があるぞ」

「俺は強すぎるから大丈夫さ」


そんな会話をしている内に10Fに着いたのであった。チーンという音と共に、エレベーターの扉が開く。10Fに降りると、大きなエントランスがあり、エレベーターも5基もある。これより、上がオフィスなのでシンプルな造りである。


目の前には、何階に何の会社を案内する受付や看板が設置されていた。床は大理石であり、フカフカのソファや意味不明なオブジェがある。まるで、高級ホテルのフロントみたいだ。


とりあえず、ここはB棟ビルなので、A棟ビルに移動しなくてはならない。俺は周りをキョロキョロすると、このフロアの案内板を見つけた。すると、B棟ビルからA棟ビルに行く、一本道の場所が分かった。俺は冬子にそれを説明すると、バイクでそこへ移動した。


冬子がその道を見て驚く。

「凄い、壁も天井もガラス一面だ。さすがに金をかけているな」

俺はバイクの後ろから、冬子の肩へ顎を置いた。

「冬子とプレイベートで来たかったね」

「でも、人が多そうだよ」


冬子の言う通り、床以外は全部窓ガラスで、景色の眺めも中々であり豪華な造りだ。フロアの案内板では、空が見渡せる一本道なので、スカイロードという名前であった。全長70メートルもあり、幅も10メートルくらいはある大きさだ。


俺達はバイクでスカイロードを走りだしたが、途中でラジコンのような物体とすれ違った気がした。俺の気のせいか? その瞬間、バイクがバランスを崩して倒れそうになる。


俺はその状況に慌てて声を出した。

「冬子、どうした?」

すると、冬子は思わず叫ぶ。

「パ、パンクだー。クソ、ハンドルがきかない……。ナツ飛び降りろ」


俺はその言葉で、素早くバイクから飛び降りた。すぐに冬子も横に転がって受け身をとった。それから、コントロールを失ったバイクは、一本道のガラス面にぶつかり、ようやく止まった。強化ガラスだったせいか、衝撃を吸収して、バイクは爆発しなかった。


俺は倒れたバイクを見ると、前輪が刃物で切られたように裂かれていた。さっき、何かがすれ違ったのは気のせいじゃなかったみたいだ。すると、若い女の笑い声が聞こえた。


俺達は声の方向へ顔を向けた。すると、A棟のエレベーター前には、パンク風の女が立っていた。髪の色は金髪で、クラシックなヘッドホンを首にかけており、オーバーサイズのパーカーに、黒デニムのホットパンツを着こなしていた。


そのパンク女の周りには、ドローンが6台浮かんでいた。球体型のドローンであり、それを中心として、ロックマン2のメタルマンのような武器がついている。あれで、バイクのタイヤを切ったのか……。


すると、冬子は女の顔を見て呟く。

「コイツ、ワン・マーメイだ」

なるほど、このパンク女がテロリストのナンバー2か……。


ワン・マーメイは両手をパーカーのポケットに入れたまま、こちらを睨みつける。

「ふーん、こんなガキどもに、網代組は潰されたのか……。まったく、役に立たない奴らだったな。まあ、天王洲会はバカしかいないのか?」


冬子はその言葉に反論をする。

「ふざけんな、お前らが分裂するように仕組んだだろ?」

「ふっ、我々ではない。東雲シマが持ち込んだ話だ」

「シマ姉さんの悪口を言うな」

「いや、言わしてもらおう。なぜ、東雲シマが裏切ったか知りたいだろう? 元々のこの計画は……」


その話を聞いていると、冬子がイライラした表情になっていく。でも、冬子も東雲シマの裏切った理由が知りたいから、黙ってパンク女の話を聞いていた。どうやら、このパンク女の目的は、冬子を怒らせたいだけだ。その理由は一つしかない。そう、時間稼ぎだ。


俺は冬子の肩を叩く。

「冬子、落ち着けよ。こいつは会話をして時間稼ぎをしているだけだ。こいつら、データを盗むのが真の目的だろ? でも、まだこの場所にいるって事は、姉の方がハッキング作業を続けているって事だ……。少しクールになれや」

「そうだな、少し頭を冷やすわ、。ありがと、ナツ」

「そうそう……。それにさ、このパンク女が真実を喋っているとも限らないだろ? だから、聞く必要なんかねえよ」

「確かに……。とにかく、コイツを倒せばいいだけだ」

そう言うと、冬子は拳銃を取り出した。よしよし、俺も冬子を扱うのに慣れてきたぜ。


ワン・マーメイは口元を緩めた。

「ふっ、簡単に言ってくれるな。この刃物型のドローンは6台ある。つまり、6対2だぞ。バカは簡単な数字の計算も出来ないのか? 私の視界いる限り、デス・ドローンから逃げられないぞ」

「ああ、そうかもな。なら、試してやるよ」

そう言って、冬子はワン・マーメイに拳銃を発砲した。


パンという一発の銃撃音がエントランスに鳴り響いた。しかし、ワン・マーメイは6台のドローンを盾にして、拳銃の弾を弾いてしまう。それから、2台のデス・ドローンが俺達に襲い掛かってきた。


冬子は迫りくる2台のデス・ドローンに、何発も拳銃の弾を打ち込んだ。パンパンと銃声の音が聞こえた。だが、ドローンはびくともせずに、こっちに飛んできた。


冬子は悔しそうな顔をした。

「くそ、マグナム弾なのに……」

そう言って、拳銃の弾を撃ち尽くすと、空の薬莢を床に捨てていた。そして、すぐに新しい弾を装填した


その一方、ワン・マーメイはケラケラと大声で笑い出す。

「キャハハハ、無駄だ。防弾、防刃で弱点なしだ。お前らはここで死ぬ。手足を落として、ダルマ女にしてやるよ。品川埠頭の借りを返すぞ」

そうか、コイツがドローンを使って、品川埠頭で俺達を襲った女か……。冬子じゃ無理そうだな。まず、俺がやるか……。


俺は冬子に耳打ちをした。

「冬子、弾の無駄使いはするな。その弾はボスキャラに使え。まあ、ここは俺に任せろ。フフフ、このセリフを一度言ってみたかったぜ」


それから、俺は冬子の前に立った。そして、こちらに飛んできたドローンの1台に、飛び蹴りを食らわした。しかし、ビクともしなかった。くそ、固いし、丸ノコギリのような刃物が回転しており、ブーツと接触すると火花が散った。


そのスキに後ろにまわり込んだ、もう1台のドローンが、こちらに飛んできたので、俺は素早く横に転がって避けた。あっ、スカジャンの袖が少し、切られてしまった。


俺は深く溜息をついた。

「くそ、お気に入りなのに……」

それから、俺を襲った2台のドローンは、次に冬子に標的を変えてきた。


しかし、冬子はドローンの攻撃をボクサーのようにかわす。いつもながら、見事なフットワークだ。だけど、1度でも攻撃を喰らったら終了だぜ。


マグナム弾も効かないし、俺のサイボーグブーツも効かない。それにワン・マーメイは、残りの4台のドローンで自分の身を守っている。このままパンク女に突撃しても、切り刻まれて殺されるだけだ。


2台のドローンでも苦戦しているちゅーうのに……。さて、どうするか? 

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