表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/118

第64章 黒幕は誰だ?

私は八王子に着いた。すぐ目の前には、ヤクザでも診察してくれる有名な病院があった。まあ、いわゆる一軒家の個人病院って感じだ。私はハコスカを駐車場に停めた。そして、赤坂組の子分たちには、周辺に敵がいないか確認をしてもらう事にした。


私は全員に命令した。

「私はシマ姉さんに会ってくる。みんなは病院の周りのガードを頼む。ハコネが言うには、ハルクらしき人物を見たらしい。敵わないと思ったら命を優先してほしい」

すると、赤坂組の組員達は頷いて、蜘蛛の子を散らすように散らばった。


私は受付に行き、事情を説明すると、奥の部屋に案内された。そこにはベッドに横たわっているシマ姉さんがいた。そして、ベッドのすぐ近くにハコネが立っていた。


ハコネは私の顔を見ると。嬉しそうな表情をした。

「冬子ちゃん、来てくれたんや」

「ああ、当たり前だろ。それで、シマ姉さんの具合は?」

「今は安定剤で寝ているところや。命に問題はないけど、メンタルの調子が悪いみたいや。銃で撃たれるのは初めての経験やしな」


そう、黒羽組の市原が放った弾丸により、シマ姉さんは重症な状態だ。いつもは威勢のいいシマ姉さんでも、さすがにトラウマになってしまうのも無理もない。しかし、命に別状はなく安心した。


私は思い出したように手を叩く。

「そう言えば、ハルクが外にいるって言ったけど……」

「まあ、30分ほど前の話やけど……。もしかしたら、もういないかもしれへん。そうだ、冬子ちゃんも急いできて疲れたやろ? なんか、飲み物でも出すわ」


そう言って、ハコネは冷蔵庫からお茶を取り出して、紙コップに注いで差し出してくれた。確かに、車を飛ばしてきたので喉がカラカラだ。


私は喉を潤すために、ゴクゴクとお茶を飲み干した。

「ふぅー、うまい」


ふと、気が付くとスマホに着信がたくさんきていた。えーと、欣也伯父さんからだ。まさか、本家で何かあったのか? 私はスマホを操作しようとしたが、手が滑り地面に落としてしまった。


なっ、なんだ? 凄く眠くなってきた。ふと気が付くと、視界がグニャグニャとなり、眠りの世界へ旅立った。そして、瞼を閉じる瞬間にハコネの声が聞こえた気がした。


ハコネは悲しそうな顔をしていた。

「冬子ちゃん、ごめんな……」

なんで、謝るんだ? 私の幻聴か? いや、私は確かに意識を失う寸前でそう聞いたのだった。



東雲シマは目を覚まして、着替えをしていた。銃で負傷しているとは思えない、キビキビとした動きだった。いつもの着物でなく、青いワイシャツに黒いネクタイのパンツスーツ姿である。上着の袖は通さずに肩にかけている感じだ。


東雲シマは妹である東雲ハコネに小声で聞く。

「冬子ちゃんは寝たんかい? まあ、強力な睡眠薬やから、しばらくは起きんはずや」

「うん、ちゃんと寝とるで。これから、姉ちゃんどうする?」

「もう、欣也を殺すのは無理やな……。まあ、海外に逃亡する作戦しかないわな」


実は東雲シマは拳銃で撃たれていなかった。歌舞伎町の喫茶店の外で、確かに1発の銃声が鳴り響いた。だが、それは市原が東雲シマを撃った銃声ではなかった。東雲シマの子分が市原を撃った銃声だったのだ。


東雲シマは市原をおびき寄せる為に、自分が喫茶店にいる情報をワザと流したのだ。そして、喫茶店付近にあらかじめスナイパーを忍ばせて、いつでも市原を殺せるようにしていた。あの時に何があったか説明しよう。



東雲ハコネと川島が喫茶店で戦っている時の事である。東雲シマは喫茶店を出た。


すると、目の前には市原が拳銃を握りしめていた。

「東雲ぇー、この右手の借りを返しにきたぜ」

「………」


東雲シマは無言で右手を挙げた。その瞬間、隠れていたスナイパーがライフルの引き金を引いた。そして、市原は心臓を撃ち抜かれて地面に倒れた。即死であった。東雲シマは手袋をして、市原が握っていた拳銃の引き金を何発か引いた。そう、硝煙反応を残す為だ。


しばらくすると、ハコネが喫茶店から出てきた。

「姉ちゃん、こっちは終わったで……」

「ああ、こっちも終わったわ。後はウチが市原に襲われたようにしたらええ。しかし、あの川島とか男達が乱入するとは計算外だったわ。あれが強かったら、計画は狂ったかもしれへん」


すると、ハコネがシマの肩を叩く。

「まあ、それでも上手くいったからええやん。これで、姉ちゃんは自由に動けるで、病院で長期入院って事にしてな……」

「ああ、ワン姉妹に連絡をとるわ。さてと、次はお見舞い作戦に移るで」


そう、次の作戦とは病院に天王洲欣也を呼び出す事である。そして、網代組のヒットマンに殺させるという作戦だった。東雲シマはワン姉妹を通じて、網代ケンに情報を伝えていたのだ。だから、網代組が病院にあらかじめ隠れる事が出来たのだ。


他にも、東雲シマはワン姉妹を通じて、網代ケンに東雲組のシノギが必要など、もっともらしい理由をつけて、自分の組員には手を出すなと通告させたのだ。全ては自分が天王洲会の2代目になるのが目的であったのだ。


もちろん、安全な場所で自らの手を汚す事はしなかった。だから、撃たれたフリをして、抗争から長期離脱する作戦を立てたのだ。


しかし、病院で天王洲欣也の暗殺に失敗してしまう。そして、本家から冬子と赤坂組の組員を遠ざけて、本家の戦力をダウンさせて、天王洲欣也の暗殺を再度企てた。しかし、これも網代組の壊滅のより、失敗に終わったのだ。



場面は八王子の病院へ戻る。東雲シマはベッドに腰掛けて、ハコネは立ちながら姉の話に耳を傾けていた。


まず、東雲シマは煙草で一服をする。

「さっきな、本家の盗聴器を盗み聞きしてたんやけどな。ウチらの裏切りがバレたみたいや。おそらく、ウチが東雲不動産に調査依頼をした資料を見てしまい、そこから推理をしたみたいや。まあ、中国企業との絡みも記しておったからな。あれで、欣也は頭がええから、そこまで辿り着いたんやろうな」


ハコネはため息をつく。

「はぁー、誰かが資料を開いたんやね。それで、網代組はどうなったん?」

「ふっ、全滅や。網代はド頭をぶち抜かれ、ハルクも倒されたみたいや。さすが天王洲の本家や。こりゃ、手強いで……。ふう、ウチらの計画も狂ってきたで」


今回の天王洲会の分裂抗争の黒幕は東雲姉妹であった。東雲シマの父親はヤクザであった。しかし、3年前の抗争で、全ての罪をかぶって自首して、終身刑になったのだ。そして、翌年に刑務所で病死をしたのだ。


天王洲欣也は東雲姉妹の父親が体を張ったので、娘であるシマとハコネの面倒を一生見る事を約束したのだ。いわゆる生活費、学費などは普通の家庭の2倍は出した。


だが、東雲姉妹の母親は夫が死んだ事により、メンタルを患い自殺した。それでも、東雲姉妹は天王洲会を恨むことなく、シノギの勉強をして、天王洲会の財政を立て直すのに全力そそいだ。その結果、東雲シマが中心になり、天王洲会は政府、ゼネコン、大企業を取り込んでいき、組織はデカくなっていった。


しかし、東雲シマは心の底にはいつも不満があったのだ。父親も母親も自分自身さえも、天王洲会には命を尽くしてきた。だが、2代目体制の新組織になったら、網代ケンが若頭として仕切る事になる。それは我慢できなかった。


この頃、東雲シマは天王洲会で一番金を稼いでおり、自分こそが会長に相応しいと考えるようになった。それに自分の人生なのだから、自分が中心に生きていくべきだと思うようになる。つまり、天王洲家の犠牲になる事に我慢できなくなりつつあった。


そこで、網代ケンを借金漬けにして、麻薬ビジネスに手を出すよう仕向けた。そして、組を分裂するように誘導したのだ。若頭と言えば、組の舵をとる役職である。東雲シマは網代ケンが若頭になれば、天王洲会がなくなる事を危惧した。


理由は合法的なビジネスを仕切れると思えなかったのだ。東雲シマ自身が何よりも、これからの天王洲会は合法的な財団法人化するべきだと考えていた。


第三次世界大戦から10年が過ぎて、そろそろ警察が暴対法を締め付ける事を予想していたのだ。だから、合法で儲かるシノギを考えた。それは日本人が忘れてしまった資源であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ