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第61章 天王洲会 VS 網代組

俺が玄関前に出ると、門が破壊されているのが分かった。門の近くでは、片目のないオッサンが日本刀を振り回して、天王洲会の若い衆を切り殺していた。あいつがボスの網代だな。


網代は大声をあげていた。

「おりゃー、おりゃー。欣也出せやぁー」


そのすぐ近くで、ハルクも天王洲組の若い衆を投げ飛ばしていた。更にその周りを、網代組の子分達がフォローしている感じだ。ずいぶんと年齢が高めのオッサン集団だ。えーと、人数は全員で10人か……。となると、敵は合計で12人だな。


いよいよ、組が解散して、ロクな人材がいないのだろう。しかし、こいつらの勢いは凄い。天王洲会の若い衆が1人、2人と気が付けば、10人も殺されていた。


俺がいる玄関から、門までは10メートルくらいの距離がある。ここを死守しないと、中に突入されてしまうな。網代の子分達は門を突破すると、こちらに走ってきた。だが、こっちも玄関には4人の若い衆がいるのだ。


そいつらは拳銃を取り出した。そして、玄関先の柱を盾にしながら、突撃してくる網代の子分達に向かって一斉射撃をした。パン、パン、パンと乾いた音が辺りに響いた。俺は発砲した若い衆は4人もいるので、誰かが当てるだろうとタカをくくっていた。


しかし、こいつらは恐怖でビビって、柱に隠れるのを優先して、相手を見ずに撃っていた。だから、当然当たらない。うーん、赤坂組の組員と違って、あまり役に立ちそうもない感じだ。このままだと、確実に突破されるのは時間の問題だ。


しばらくすると、網代組の組員4人が玄関に向かって、大声を出しながら突撃してきた。

「行けぇー、一番槍じゃぁー」

「欣也は屋敷の中だぁー」

「殺ったれ、殺ったれぇー」

向かってくる4人は拳銃を発砲してきた。


そこで、赤坂ノブオが玄関前に立つ。

「お前らは引っ込んでいろ」

その言葉に、天王洲会の若い衆は柱に隠れた。


ノブオの爺さんは拳銃を信じられない速さで抜いて、向かってくる連中に4発の弾丸を放った。その弾は全て命中して、突撃してきた4人の心臓を撃ち抜いたのだ。それから、男達は地面に倒れたのであった。スゲー、冬子並みに早いぜ。


柱に隠れていた天王洲会の若い衆は驚いた表情をみせた。

「さすが、赤坂のオジキ」

ノブオの爺さんは柱にいる子分達の顔を見る。

「バカ、感心している場合か。次が来るぞ」


門にいる網代は大声で叫ぶ。

「ハルク、赤坂のオジキは俺が殺る。お前は庭から回って、欣也の首を殺ってこい。すぐに行く」

「へい」

そう言うと、ハルクは2人の子分を連れて、庭の方に走り出した。


しまった、玄関でなくても、中庭から本家の居間に行けるのだ。網代は何度も本家に来た事ある人間なので、立地について全て把握しているのだろう。中庭の入り口を守らないとまずいな。


俺はその事を赤坂ノブオに伝える。

「聞いた通りだ。俺は中庭に行ってハルクを止める。爺さん、ここはまかせたぜ」

「ああ、頼むぜ」


そう言っている内に、網代が日本刀を振り回しながら、玄関へ突撃をしてきた。

「うぉおー」


柱に隠れていた子分が網代に向かって走り出した。

「オジキを守るぞぉー」

「おらぁー」


ノブオの爺さんは子分達に命令をする。

「バカ、戻れ」


しかし、4人の子分は命令を無視した。4人は網代に向かって、走りながら拳銃を連射しまくった。放たれた弾丸は、網代に当たったはずなのに、何故か死ななかった。そして、網代は4人の子分に対して、一瞬で間合いを詰め、日本刀で切りかかった。その斬撃は目にも止まらない速さだった。


その結果、切られた4人は首筋から、大量の血がブシュ―と噴き出した。そして、ゆっくりと地面に倒れこんだ。あの、片目のオッサン強い。あっという間に4人を殺しやがった。もう、玄関前には俺とノブオの爺さんしかいない。


その瞬間、赤坂ノブオは素早く、網代に向かって発砲した。

「テメー、ウチの若い衆を殺しやがってぇー」

弾は確実に当たったはずだが、網代が倒れる気配はない。コイツ、不死身なのか? 全然立ち止まる様子がなく、こちらに走って来る。ゾンビかよ……。


赤坂ノブオは舌打ちをする。

「ちっ、防弾スーツか……」

俺はその言葉で、確かハルクも防弾スーツを着ていた事を思い出した。だから、死ななかったのか……。網代は勢いを止めることなく、あっという間に玄関先にたどり着いた。


それから、網代は一気に赤坂ノブオに近づいて、日本刀を上から振り下ろした。しかし、ノブオの爺さんは、拳銃を押し出して、日本刀を受け止めた。日本刀と拳銃の押し合いがはじまった。


どちらも、一歩も動かない。いや、動けない状態なのかもしれない。しかし、ノブオの爺さんは年齢のせいか、苦しそうに拳銃を持つ手が震えていた。おそらく、若い網代に力負けしているのだ。このままだと、殺される予感がした。


俺はノブオの爺さんを手伝おうとした。

「爺さん、加勢するぜ。2人でさっさと倒しちまおうぜ」


しかし、ノブオの爺さんが俺を見ながら、ニヤリとした表情を見せた。

「バカ、俺1人で十分だ。ナッちゃんは欣也を頼むぜ。俺もすぐに行くからよ。欣也が死んだら、俺達の負けだ。サナエに加勢してやってくれ……」

「くそ、分かったよ」


確かにサナエちゃんは強いが怪我をしている。それにハルクに一度負けているのだ。天王洲欣也が殺されたら、天王洲会は終わりだろう。なら、ノブオの爺さんよりも、天王洲欣也の命が優先だ。


俺はノブオの爺さんに声をかけた。

「爺さん、死ぬなよ」

ノブオの爺さんは笑って頷いた。俺は玄関の柱を蹴って、三角飛びで屋根に上って、中庭の方へ向かった。



赤坂ノブオと網代ケンの2人は死闘を繰り広げていた。かつては盟友でもあったが、今はお互いが敵である。赤坂ノブオは拳銃を使って、網代の日本刀を防いでいた。


赤坂ノブオは網代の目にガンを飛ばした。

「網代、まったく無茶しやがってよ。昭和のヤクザかよ、お前って男は……」

「オジキ、俺は欣也が天王洲の2代目に相応しいか、個人的に試しているだけですよ。俺に殺される程度なら、歌舞伎町は仕切っていけないでしょうよ」

「デカい口を叩く前によ……。まずは、俺を殺してみろよ」


網代は鼻で笑って、日本刀に更に力を加える。年齢と力の差もあり、徐々に赤坂ノブオが押されていく。なので、赤坂ノブオは後ろに引いて、一度距離を取り、日本刀の攻撃範囲内から逃げた。


それから、もう1度、拳銃を1発ぶっ放した。コルトローマンの大きい銃撃音が響いた。赤坂ノブオは脳天を狙ったので、網代を確実に殺したと確信した。


しかし、目の前には首筋を撃ち抜かれた網代の子分がいた。さっきまで門にいた網代の子分の一人が、こちらまで近づいて、親分である網代ケンの盾になったのだ。


首筋から血が流れている瀕死の子分が呟く。

「オッ、オヤジ、あとは頼みます……」

網代はその組員の心意気を見逃さすに、赤坂ノブオに向かって斬撃を放った。


赤坂ノブオは斬撃をかわす事は出来ず、脇腹あたりを切られて、腸がはみ出てそうになる。すぐに慌てて右手で、脇腹を抑える状態になった。そして、出血多量による貧血で、その場に座り込んでしまう。


そして、網代は座り込んだ赤坂ノブオを見下ろす。

「オジキ、激しく動かなければ、助かる可能性はありますよ。アンタには若い頃に、随分と世話になったから、これで恩は返したぜ。じゃあな、オジキ」

網代ケンは古いヤクザであり、世話になった赤坂ノブオを見逃したのだ。


それから、網代は玄関の中に入って、欣也のいる居間の方へ向かった。その後を追おうと、門から駆け付けた網代組の3人の子分が続こうとする。しかし、赤坂ノブオは玄関の柱を背もたれにして、なんとか立ちあがった。


もはや、ゾンビのようで、顔は真っ青で今にも死にそうだ。それでも、網代の若い衆3人の道をふさごうと立ったのだ。


それを見た網代の子分の一人がドスを取り出した。

「くそ、黙っておけば見逃してやるのに……。赤坂のオジキ、往生してやぁー」

若い衆の一人はそう叫んで、瀕死の赤坂ノブオの腹を刺した。しかし、赤坂ノブオはポケットにある手榴弾のピンを既に抜いていた。


そして、刺した相手の髪の毛を掴み、血まみれの口でなんとか言葉を発した。

「あ、あとは頼むぜ、サナエ……」

最後に浮かんだのは自分の孫であるサナエの顔だった。


その瞬間に赤坂ノブオは3人の敵を巻き込みながら爆発をした。そして、もう一つの隠し持っていた手榴弾に引火してしまう。その結果、大爆発が起こり、玄関先は吹っ飛んでしまい、屋敷は煙に包まれた。


赤坂ノブオは最後まで、イケイケの極道であったのだ。

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