ところで本当は今何時? 二刻
「さて、いっちょやりますか! ・・・・・って言いたいんだけどさ・・・」
俺は辺りを見渡してから言う
「何で此処なの?」
「さぁ?」
いつものように軽い感じで答えるレイ
今日は此処の見張りをしようと冷鵺、もといロストに言われて来たのは町の少し外れた場所、所々に草木が生い茂っている、いわゆる公園のような場所だった
と言ってもここは動物含めてあまり人気が無い場所なのであまり見回る必要性が見受けられないのだが・・・・
「って、当本人のロストはどうした」
「そういえば良なくなってるね」
辺りを見渡しても人影らしい物は無く、ロストは何処にもいない
「何処行ったんだろうね・・・・」
レイは頭を掻きながら言う
「って、レイお前何持ってるんだ?」
「ん?」
何故か頭を掻いている方の手には紙が握られていた
「あれ?こんなの持ってた覚えは無いんだが・・・・」
レイはその紙を開き、俺も横から覗き見る すると紙にはこう書いてあった
『ゴメンちょっと深月ちゃんのところに寄らなきゃいけない用事を思い出したからちょっと行くね すぐ戻るから! ロスト 』
「・・・・・・あいつ、自分で誘っといてどっか行くのかよ」
「あらら・・・ ま、結局いつも通りオレら二人って事だね」
「そうなるなぁ」
手紙をたたみながらぼやく
「ま、どうせここら辺に都合よくシルエットが現れるなんて事もないだろ 折角だから観光してこうぜ」
「・・・・・・そうだね」
「よし、取り敢えず歩いてみようぜ」
俺たちは林の中を歩く
「此処を来るのは二度目だが、やっぱり何処か静かな感じがするよな」
「オレは一度目だからよく分からないけど」
肩を竦めてレイは言う
一度ロストと一緒にこの自然公園みたいなところに来ていた 来た理由は特になく、ロストと町の間取りを覚える為に歩いていたらいつの間にか着いていたと言う訳だ
「もしかすると、ロストはここに来たかったってだけかも知れないな」
そうなると深月のところに行ったってのも嘘なのかな?
「何処かで昼寝とかしてるんじゃ無いだろうなあいつ 全く、こっちは化け物退治に来たってのに、危機感ないなぁ」
「・・・・・それ、ユウキ君が言えた事か?」
「ん?」
ふとレイは少し呆れた顔をしながら言う
「ユウキ君、君ちょっと緩み過ぎだと思うんだけど」
「あー、ま、言われればそうだが・・・・・」
「そういう意味では無くて」
レイは頭を横に振ってから続ける
「君が使ってるその『時間移動』の能力の事 ちょっと過信気味に見えるけど」
「あ? いきなり何だよ」
レイは少し迷うような素振りを見せてから言う
「その能力を使えば何でも出来る、みたいに思ってない?」
「いや何でもって訳では無いが・・・ でも、自分の力を信じれるってのは良い事じゃん てか何?レイもロストと同じような説教かよ」
「同じような説教だよ」
心配そうにこちらを見つめるレイ
「そうゆうのあんまりよく無いよ?」
「・・・・・・うるせぇな、いい加減にしろよ」
「いい加減にしないよ そんな気持ちでこれからもシルエットバスターをしようなんて思ってたら、いつか誰かの命を「うるせぇ、言うなよ!!」
その言葉に思わずドキッとしてしまい思わずレイの胸倉を掴んでしまった
「そんな事をさせない為にこの力を使ってるんじゃねぇか! それの何が悪い!」
「別にそれが悪いとは言って無いよ」
「じゃぁ何なんだよ!」
俺はあの日の事を思い出す あの女の子を助けられなかった日の事、間に合わなかった自分の事を
「俺はもうあの日のような目の前の命を失わないように頑張ってるんじゃねぇか! それの何が悪い!」
「だからそれは悪く無いって、話しを聞いてよ」
「てかそもそもさ・・・・・」
俺は更に腕の力を強めて言う
「お前に俺の何が分かるんだよ」
あの時の苦痛を、あの時の悲しみを
「俺の事分かってるように喋るんじゃねぇよ!!」
ぜぇ、ぜぇと息を荒げながら言う そんな俺にレイは
「分らないよ、君の事なんか 君が何を体験したのか、君が何を背負っているのか、そんなのはロストが聞いた事の少し程度しか知らない」
「なら・・・・」
「じゃ、逆に聞くけどさ」
レイは俺の言葉を遮って言う
「君はロストの何を分かってるんだい?」
「っ!」
「君はロストの傷を知ってるかい? そもそも・・・・」
レイは俺の腕を掴んで言う
「ロストが不登校になっててずっと家に引きこもってたっての、知ってた?」
「・・・・・・・・え?」
思わずレイから手を離す
「ど、どうゆう事だよ? あいつが、不登校だった?」
「そうだよ いじめによる、ね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
知らなかった、知らなかった・・・・・・
そんな言動はロストがしてなかったし、態度にもそんな様子は微塵も無かった いや正確に言えばイヤに一人が好きな奴だとは思っていたが、そんな理由があったのかよ・・・・・
「・・・・・いじめの原因は?」
「罪を擦り付けられてそれを否定し続けたけどそれを信じて貰えなかったため」
レイは一度ため息を付く
「ずっと疑問に思ってたと思うけどさ、なんでオレとロスト、二人に分かれてると思う?」
「いや・・・分からねぇ・・・・」
それは前々から疑問に思っていた どうやったら一人の人間から二人になるのかと
「それはね、ロストは自分から逃げたかった、もっと言えば違う自分に成りたがったって事なのかな」
「違う、自分・・・・・?」
訳が分からず同じ言葉を繰り返す
「元々この罪の擦り付けってね、僕がやりましたって嘘を付けば簡単に終わった事なんだ」
「で、でも、それは・・・・・・」
「うん、実に嫌な解決方法だね、誰かも知らない犯人を庇うなんて だからロストは反論した、だからいじめが始まった
それをロストはひどく後悔したんだろうね それで自分から、オレから逃げたしたい、こんな自分から逃げたしたいって思ったんだろう
それがこの結果さ」
レイは自分の体を見せつけるように言う
「でもロストは簡単な嘘すら付けない子だからね どうしてもオレを見捨てられなかった 見捨てられなかったから、ロストはオレを理想的な自分、理想的な冷鵺、つまるところ王さまにした訳だ」
「ロストがレイの事を王様って言うのはその為か?」
「そ、その為 理想的な物で居て欲しいって願いからだね 自分に出来なかったことを、自分にはして欲しいって言う願いから」
「・・・・・・・・・・・・」
自分を切り捨てて自分を幸せにする? なんだそれ・・・・ まるで来世に期待して自殺するようなもんじゃんか・・・・・・っ!
「そんなの、おかしいだろ・・・・・・」
「うん、おかしいよ」
・・・レイが少し笑ってそう言うのは何故だろうか どうしてこんな話の途中にそんな顔が出来るかが俺には分からなかった
「ホント、おかしな話だよ せっかく理想的になれたってのに別の理想を死ぬ気で仁から守ろうとしたなんて」
「は!? 仁から!?」
「うん 詳しい話は難しくなるから省くけど、ロストが自分の願いを勘違いしたせいで仁と殺し合いをするハメになったりしたからね」
うそ、だろ・・・・・・! あれと殺し合いしたのかよ あの悪魔と!
「長くなったけど、この能力ってのはこれくらいの深い傷から出来ているんだ 願いが叶ったところで断ち切れないような深い傷で、自分じゃ分からないような心の底の思いで、だからさ・・・・」
と、今度は真剣な顔でレイは言う
「気を付けなよ その能力が必ずしも自分の思った通りのものだとは思わない事だよ」
「・・・・・・・・・・・」
「ま、予想外の展開には気を付けるように ロストの二の舞にならないようにね」
最後はいつもの何処か抜けたようなレイで言ったが、何処か怒るような感覚があった
分かった気でいるな、自分の能力の事、それとロストの事も、 と




