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日記のような物語(ダイアリーテイル)  作者: ミハヤ
「シフト・グリニッジ」
29/129

事件発生時刻前 其ノ一


「~~~~~~~っ・・・・・・・・・」


僕は大きく欠伸をしてから伸びをする


気の早いセミはもう既に鳴き始めている夏のころ、僕は一人学校の屋上の日陰のところにあるのベンチで本を読んでいた


僕の通う夕日向(ゆうひなた)高校は今時には珍しく屋上が解放されている学校だった しかし僕が転校してから、つまり一年生から今の二年生になるまでずっと昼休憩の時は屋上にいるがほとんど此処に人が来たところを見たことのない不人気の場所だったた


理由は多分、危ないからとかそうゆう意味では無くただ単に暑い、冬だと寒いからだろう


最近の高校ではエアコンを完備しているのところが多いらしく、エアコンの無い小学生を送った身としては大変珍しく感じる  と、言っても最近では小中学校でもエアコンを完備しているらしいが


全く、世の中は良く変わるものだ


しかしだからと言って屋上が使えない物と言う訳ではない

確かに日陰にいても少し汗ばむが、その汗ばんだ体に吹き付ける風がとても心地良いのだ これがエアコンだとむしろ寒いまである 僕はエアコン寒がり派なのだ 

実際寝るときは蒸し暑いのでエアコンをかけているが、それだと寒いので毛布を掛けて寝るという少しトチ狂った行為をしている


しかしこれはこれで良く眠れるのだ 冬に布団から出られない感じだと言えば分かってくれるだろうか


心地良く、また聞こえるのはセミの鳴き声と見た目ヤンキーっぽいやつらが外で遊んでいる音だけ 僕にとって屋上は最高の立地だった


クラス部屋は弁当の匂いがキツイはスマホの音が五月蠅いわ女子たちのファッショントークが気になるはで中々本が読めた物ではない


・・・・・・しかし、やはりどうしても女子のファッショントークには耳が行ってしまう

何せ僕も二週間ではあったが幼女をやっている期間があった その時にもっといろんな服を着てみれば良かったとたまに思う


理想郷の楽園(アヴァロンエデン)、何でも願いが叶う、異端の者たちを閉じ込める、この世界にとても近く、それでいて最も縁遠い世界 そのことは今でも思い出す


仁の事、ロストの事、そして、王さまの事も


もう一度行って見たい、と思わなくも無い だがもう行く気はない

だって、次に王さまと会ったらどんな顔をすればいいか分からないんだもん


そしてふと本を読むことが止まっている事に気付き再開する


こんな目立たない所で一人本を読む これではまるで虐められる前の僕と何ら変わりが無いように思える

ま、それもそうだろう 人はほとんど変わることの出来ない生き物だ


だが、それでももし、自分が変わったと思える時は、それは決して自分が変わったという事では無く・・・・・・


「—————————————!」


ふと、女子っぽい声が耳に届く きっと誰かが屋上へ続く階段を上がってきているのだろう


「・・・・・・・はぁ 」


またか

果たして、この光景を見るのがこれで何度目になるのだろうか


そんなことを思いながら屋上の扉を見やる


「—————————パイ————————!」


女子の声が段々と大きくなるにつれパタパタという軽い足音も聞こえてくるようになる

それと同時に、


「—————! ———————————だぞ!!」

男子の声、それとドタドタと重い足音


きっと、自分が変わったと思える時と言うのは、


「センパイーーーーー! 助けてーーーーーー!!!」

バタン! と大きな音を立てて扉を開けて出てきたのは身長が少し低い女子生徒 その後に続いて、


「っ、てめ! 卑怯だぞ、(レイ)に頼るのは!!」

少しがたいの良い男子生徒が現れる


「はぁ・・・・・・・・・」


僕はため息を付いてから、いつも通りの言葉を口にする


「またシバちゃんを虐めているのかユウキ あと、レイって呼ぶな!」


きっとそれは自分では無く周りが変わったからなのだろう


この騒がしい二人を見て、 周りが変わっちゃったなぁ・・・・ と、心の中で苦笑いを浮かべる今日この頃だった





「ったく、なんでいつもいつも飽きずに喧嘩ばっかするんだ?」


そう言いながらいつも通りまずは僕の後ろ、僕を盾にして身を守る女子生徒を見やる

「だって、ユウキがいつも殴ろうとしてくるんですよ!」


身長は低く、小学生、には見えないにしても高校生にも見えない、つまり中学生にしか見えないような身長で、髪型が天然なのかコテ巻きをしているのか毛先がカールがかった、この髪型をミディアムパーマって言うんだっけ? そんな髪型が特徴の一年下の後輩、芝埜河(しばのがわ) 沙里香(さりか)、僕はシバちゃんと呼んでいる


それに対し、

「だってお前がいつも俺の悪口言ってくるからだろ! なぁ、(レイ)!」

「だからレイって呼ぶな」

その言葉に反応しながら前を見やる


身長は少し高いといった印象で、小中学校の時にスポーツでもしていたのか妙にがっしりとした印象を持つウルフカットの髪型の、これまた一年下の男子生徒、時杯(ときつき) 優鬼(ゆうき)、大体はユウキと呼ばれている

ちなみにこいつだけ先輩の僕に思いっきりタメ口を聞いているが、まぁ僕が一月が誕生日と早生まれな為に年齢が同じだし、何より普通に小中学校を通って無かった僕としてはどうでもいい事だ、だが、


「いい加減僕をレイって呼ぶのは止めろ」

此処だけは譲れなかった

「僕の名前を呼ぶときは————————————————」


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「えっと・・・・・・・ もしかして、また名前忘れました? 亡神(なくしがみ) 冷鵺(れいや)センパイ?」

「そんなことはない」

「絶対忘れてただろ・・・・・・・」


うん、忘れていた がっつり自分の名前を忘れていた 何故かよく忘れていた


「センパイって見た目クールキャラなのに妙に天然というかドジっ子と言うか、何か変な属性ついてますよね・・・・・」


「・・・・・・・・・・・」


正直、否定は出来ない 事実クラスでもいつの間にか『無口で愛想が無いが面白いやつ』という立ち位置が定着してしまっていた

体育のチーム分けの時も何時も指名されるのは最後なのになぜかみんなに期待されて困っている


「とにかく、僕を呼ぶときは上の名前で呼ぶか、せめてヤを付けろ」


「へいへい、わかったよ冷鵺」


めんどくさそうに言うユウキ そうこうしている内にいつの間にか喧嘩の事が有耶無耶になるのもいつもの事だった



「お、冷鵺、今日は異世界転生系の小説なのか」


「ん? あぁ」


ふと、ユウキが僕の持っていた本に目をやり、釣られて僕も本を見る

その表紙には可愛らしい黒毛の狐のような耳と尻尾をもった獣人の女の子の絵と、今ドキらしい妙に長ったらしいタイトルが刻まれていた


「おやおや 冷鵺さんもしかしてその表紙の女の子が可愛くてその本を買ってしまったのかな?」


「大方そうだな」


「そうなんですね・・・・・・」


「そんなに意外か?」


「いえ・・・ その、ただ単にセンパイはそうゆう女の子が好みなんですね って思って」


「否定はしないが、 まぁ、好み、とは少し違うかな」


「?」


僕は表紙の女の子を見やる 何処か元気そうで、事実表紙を元気に走り回って良そうな印象を受ける

どうしても、あの子を思い出してしまってつい買ってしまった


「と言うか、二人とも本の表紙をバカにしてるがライトノベルが買われる理由の七割、いや八割は表紙のおかげだぞ」


「別に馬鹿にはしてねぇよ てか冷鵺の方が作者馬鹿にしてるだろ」


「そうですよ ライトノベルが買われるのは背表紙が良いからでは無く文章の内容が良いからでは無いですか?」


「間違ってはいないな」


「なら何で「しかしな、それは人気になってからの話しだ」被せんなよ・・・」


「人気になってから、ですか?」


シバちゃんが こくん と可愛らしく首を傾げてから言う


「そうだ そもそも第一、無名の者がイキナリ文章の良さで本を買ってくれると思うか?」


「まぁ、それは無いですね・・・」


「あぁ、そうだ 悲しい事にそれは二万に千くらいしか無い」


「意外とあるな・・・・・」


そうゆうユウキのツッコミはさておき事実最初に質の良さで買ってくれることなどまず無い

「と、言いたいが、今は情報社会だからな 壁に耳あり障子に目あり、遥か彼方に人口衛星ありだ 今は必ず何処かに目があり、一度誰かが目にすると瞬く間に広がる時代だ


例えばブランド物の新企業を立ち上げたとしよう 普通なら最初は一歩一歩地道に信用稼ぎをしなければならないが、仮に最初のお客様がネットである程度有名な人が買いに来たとしよう」


「ある程度、なんですね」


「話に説得力を持たせるために在りそうな例としてある程度だ


で、その人がそのブランドバックを買ってSNS? で良いんだよな? 僕反応が怖いのと書き込みに対しての返答をしなければならないというプレッシャーでしてないから良く分からないんだけど」


「意志弱ぇな・・・・・」


「うるさい で、そのSNSに『マジこのバック使いやすい! みんなも使ってみ☆』と書き込むとしよう」


「軽いなその女」


「するとその書き込みが三千人に見られたとしよう するとその中からバックを買ってくれる人が現れる

それはただ単にこのバックが良さそうと言う理由だけでは無くその投稿者への信用があるから、詰まる所『この人がそう言ってるのなら大丈夫だろう』と言う理由でも買ってくれる訳だ


そして信用は更なる信用を呼び出して、更に買ってくれる人が増える 


今は情報化社会だからな いい意味でも悪い意味でも広がり方が尋常じゃ無い 誰か一人見てくれたら一気に広まる可能性が高い時代だ 重要だからもう一度言うがこれはいい意味でも、悪い意味でもあるんだがな


ま、要約すると最初は地道に信用を稼ぐよりも悪徳商法並みの『一目惚れ詐欺』をした方が良いという事だ」


「何ですその写メ詐欺の端数系みたいなのは・・・・・・」


「とにかく、まずは本を手に取ってもらうところからスタートしなければならないんだ そして在るものはこういったのだ 『可愛いは唯一無二の絶対正義だ!』と ならば必然的に本能的に可愛いので表紙飾っとけば手には取ってくれる


表紙は可愛いけど内容は何か微妙だった でも良し 表紙が可愛いから、表紙の子がどうしても気になるからという理由で今後買ってくれるかも知れない


事実表紙の子がかわいいからと言う理由で買い続けている本は僕にもある」


「「あるんだ・・・・・・」」


「悪いか」


「いや、悪くは無いが・・・・」


「小学生の時に表紙の可愛さに惹かれて女の子向けそうな本を学校の図書室で借りていたのが悪いか!」


「いや、だから悪くはねぇって」


「キャラクターの可愛さに惹かれてマイ・〇トル〇ニー見てたの悪いか!!」


「だから悪くねぇって!! てかわざわざそんなこと告白するな!! その発言が一番悪いわ!!!」


「まぁとにかく、表紙につられて買ったら以外にこの小説がドツボにハマってしまったならなおの事良し、 それは作者冥利に尽きるからな 


ま、つまるところ、第一印象は一回しか無いんだから、表紙で誘惑(ハニートラップ)するのが最近の売れるコツだと僕は思う」


「ルビ、おいルビ! ハニートラップとか言うな!」


「事実だろ? 最近では最初のカラーの絵に女の子の裸か下着を書くのが一般的なのだろ?」


「ま、まぁ、確かにそんな話題が一時期ネットでありましたね、それ」


「だろ?

・・・・・・そう思うと男だらけの奇妙な冒険って凄いな あのマンガ、ほとんどガタイが良い男だらけなのに男女問わずかなり人気あるよな」


「あれは擬音が斬新ですからね やっぱり世の中見た目だけでは無いという事ではないですか?」


「そうだぜ お前も小説家になるんだったらそうなれるように頑張れよ 決してハニートラップで上り詰めんなよ」


「何で僕が小説家目指す前提なのさ」


それと仮に僕が小説家を目指したとしても誘惑は文章では使わないから

だって僕純情物が好きなんだもん!

こう、段々とフラグを立てて行って段々と二人の距離が近づき、そしてやがてゴールというシチュエーションがかなり良いよね!


「ところで、話しは変わるが何で最近異世界移住、もしくは転生物が多いんだ?」


やっぱ最終回のゴールインのやつはすっごい泣きそうになるよね! 僕の人生の中で未だに思い出すあの狼と

「・・・・・冷?」

「ん、え?   ・・・・・・・あぁ、確かに異世界物が最近は多いよな」


最近は妙に分厚い本に長ったらしい説明口調のタイトル本をよく書店で見かける

正直あの長々しさは鼻に付く


何せどう略せばいいか妙に分からない名前ばかりだし

『人間を辞めて三千年 そろそろ人間に戻りたいです』とかどうやって略せばいいんだ?

ニンヤメか?


ま、それは置いといて、


「内容は大概が異世界に転生とか移住とかして R (リアル) R P G (ロールプレイング)を楽しむというハイファンタジー系が多いよな」


「リアルロールプレイング、ですか・・・・・・ 聞いたこと無い言葉ですね」


「当然だ 何せ今作ったからな」


「ただのパワーワードかよ・・・」


「カードは生み出すもの、言葉は創造するだ それより異世界系というのはある種の『場面想定』だろ、って言うよりある意味で言えば一種のリアルファンタジーだと思うぞ


異世界食堂系って要約すれば日本文化を日本を知らない世界に広めるってだけだからな

こう一言でまとめると世界中に散らばった日本人を探す番組で紹介される日本人と大差ないからな」


「ま、まぁ 判らなくは無いが・・・・ 何と言うか、夢が無いな」


「それを言っでは、現実世界(ローファンタジー)に夢を持たない奴も夢が無いと言えるな」


「現実世界をファンタジーって言い切るのは無理があると思うが・・・」


「そうか? 


・・・・・そもそも、ローファンタジーとハイファンタジーの違いって判るか?」


「いえ・・・・・ そもそも、ローファンタジーとハイファンタジーって何ですか?」


「うむ、ローファンタジーってのはいわゆる『拡張現実(VR)』、現実にあればいいなと言う概念だな」


「ある種のオカルト的な何かって事か?」


「そうだな 河童とか花子さんみたいな妖怪の類もローファンタジーの世界、もっと言えば現実に沿った世界の物だ


対してハイファンタジーはいわゆる『非拡張現実(NVR)』、現実には無い、それこそ林檎が上に落ちればいいとか言った思考の事だな」


「現実には無いって、ホント夢がねぇな・・・・・ ワンチャン現実世界にも異世界が」

「無い」


僕は言い切る 異世界がこの現実世界にあるからこそ、言い切る


「そもそも異世界の定義は此処ではない何処か、非日常、もっと言えば現実に無いからこその異世界だ


さっきも言ったが、要約すれば大航海時代に道の国に行くのと何ら変わりは無いんだ 重要なのは帰ってこれる、つまりは人に伝えれるかどうかなんだ 


ある種異世界ってのは名も知らない島と同義だからな 限られた(ハイ)者が知っている(ファンタジー)皆が知っている(ローファンタジー)の違いだけだ」


つまるところ、あの世界は異世界だが誰も知らないから、僕しか知らないから異世界なのだ

広く知れ渡った異世界など、それはもう異世界ではない


「・・・・・・・そうなると、悲しいものだな」


ふと、空を見上げて、目には見えないがきっと飛び交っているはずの電波を見て思う

「この現実にはインターネットと言うある種出入り出来る異世界(ローファンタジー)があるのに出入り出来ない世界(ハイファンタジー)を望むなんて、きっと世の中の人間たちは世界が変わって(シフトして)欲しいと無意識に思っているのかな」


「「・・・・・・・・・・・・・」」


ふと、ユウキとシバちゃんが何か思う事があるのか黙り込んでしまい、静寂が訪れる

まるで時が止まったかのように誰も喋らない


だがまぁ、この世界にそんな時間が止まるというハイファンタジーは存在するこのも無く、


『キーン、コーン、カーン、コーン・・・・・・』


「あ、」


昼休み終了のチャイムが鳴った


「って、俺ら次移動教室じゃねぇか! 芝埜、早くいくぞ!」

「う、うん!」


そう言って来た時と同じように慌ただしく出ていく二人


「全く、仲が良いな」


そう思いながら僕の方は移動教室では無いのでゆっくりと

「あ、僕も次移動教室だった・・・・・」

駆け足で屋上を後にする







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