「鳥籠の叛王」 その2
「え・・・・? お城へ帰るって、どうゆうこと・・・・・・・・」
「そのまんまの意味さ ところでさ、仁」
と、レイがボクに向き直って言った
「オレらちゃんと元の世界に帰るから殺すの止めてくれないか?」
「・・・・・ほう?」
これは予想外だった 完全に想定の外だった
てっきりレイはこのまま何もせずロストが蹂躙されるのをただ見ているだけだた思っていたのだが
「な・・・・! ぼ、僕は嫌だ・・・・よ・・・・・・・」
体力の限界が来たのか、それとも予想外の事態で糸が切れてしまったのか、最後の方は上手く言い切れず前のめりに倒れ込んでしまう
だが倒れ込むロストをレイが優しく受け込む
「王さまと、離れ離れに なるなんて・・・・ また、どうしようもない僕に戻るなんて嫌だ・・・・」
顔をぐちゃぐちゃにして泣きながらロストは言う
「そんなこと無いだろ、ロスト」
「・・・・・はぁ」
ため息一つ付きながらボクは剣をしまう そしてその場で座り込んで成り行きを静かに見守ることにする
ここで割り込むのは野暮と言う物だろう
同じ事を思ったのか、ふと足音に気が付いて振り返ってみれば刹那とシザースがボクの横に来て座っていた
少し苦笑いを浮かべてから、二人の『演劇』へと向き直る
「そんな事は無いだろ むしろ、ずっと一緒になるんだ・・・・・・って、何かこのセリフ安っぽいな」
たはは と笑いながら頬を掻くレイ
「そんな・・・・ そんな上手くいかなよ! 王さまはこう思ってるんでしょ! 僕が元に戻ったら王さまの人格と上手く合わさって僕が王さまみたいな人格になるとか! そんな都合よく・・」
「ならないだろうな」
「分かってるんなら・・・・・・っ!」
「そもそもさ、」
と、レイはチラリとこちらを見てから言う
「何でオレとお前、レイとロストに分かれたと思うか?」
「え・・・・・・・・?」
それは確かに良く分からなかった ロストは自分の醜い部分を嫌がったとか何とか言っていたが、
チラリとこちらを見たという事は、お前も考えてみろ という事だろう
二人に分かれた理由、いじめっ子といじめられっ子の二役を演じる為 は違うか・・・
それはロストが否定していた
んなら、レイがロストを、自分の醜さに反発して切り捨てて二人になった ってのは流れ的に違うのだろう
ならば、他に何が・・・・・・
そしてレイは考え込んでいるこちらを見て、その後キョトンとしているロストを見て言った
「ロスト、お前は切り捨てたかった いや、楽になりたかったんだな」
「え・・・・・・・・?」
「何でオレとロストと二人に分かれたか、 それはお前がオレを切り離したかったから、もう我慢したくたかったからだろ?」
・・・・・・・どうゆうことだ?
ロストのポカンとした顔を見ながら考える
レイがロストを では無く、ロストがレイを?
それはおかしくないか? だってロストの願いは『偽造』だぞ? 偽る事、嘘をつく・・・・・
「ん?」
その言葉に何か引っかかりを感じた
嘘をつく? もしかして・・・・・・・
「嘘を付いて、楽になりたかった?」
「・・・・そうなんだよ」
レイはロストの頭を撫でながら言う
「こいつは嘘を付いて楽になりたかった それが、こいつの本当の願いで、そしてオレは切り捨てられなかった願い これがオレとロストに分かれた理由だ」
「・・・・・・そうゆうことか」
これは盲点だった
「そうゆうことか!」
よく考えてみればそうか 『出来ないことを望むから願う』のは当然という事か
「えと・・・・ どうゆう、事なの?」
そう言ったのは刹那だった
肝心のロストと言えば、もう本当に訳が分からなくて頭が回らないのか、ただただポカンとしていた
だがま、仕方の無い事なのだろう これは本人に自覚無い事なのだから
言うなれば本人が知らない悪い癖を指摘されているものなのだから
「・・・・・つまりですね」
ボクは人差し指を立てて言う
「ロスト、正確にはあの二人の願いの元になった事件は何か覚えていますね?」
「え? う、うん 罪を擦り付けて、『偽られて』、それでも頑張って違うと言い続けて、それでも信用されなくて、そしてそれがいじめに繋がってそのことから自分を、自分の世界を守りたい、『反発したい』 ってのが願いの元現だったっけ?」
「うん、大体そんな感じですね」
うん、違和感も無く筋が通っている だが、
「それが、違ったって事です」
「そ、そんな事無いよ!」
そう声を張り上げたのはロストだった
「ぼ、僕は、元凶の子に同じ目に合わせたくて、それを嫌がって王さまが僕を・・・・」
「それが違うんだよ」
少し悲しそうにレイは言う
「なぁ、ロスト このいじめに発展したこの事件を手っ取り早く、しかも簡単に解決する方法があったんだぜ?」
「え・・・・・・?」
そう、この事件、罪を擦り付けられたことに対する解決策が在ったのだ 有ったのだが・・・・・
「それはお前も気づいてたんだろ 何より、今のお前が何よりもの証拠だ」
「え・・・・・・?」
そう言って自分を見渡すロスト 小さな女の子の体 偽りの体 自分のじゃ無い、別の体
「お前がオレを切り捨てた、いや、オレから逃げ出した理由って、それがオレだと出来ないとわかっていたからだろ?」
一番手っ取り早い方法、 それは、
「『自分がやりました』 って嘘を付くこと、だろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
この時のロストの表情をどう表現すれば良いだろうか
驚いた とはまた違う、 無表情 は絶対違う 知られたくない秘密を知られた ともまた違う
表現するなら、 そうだ
「そ、そんこと、 そ、そになこと・・・・・・・・・」
悪戯がバレて無いと必死に自分に言い聞かせているような表情とでも言えば良いだろう
そんな表情を浮かべているせいか、上手くろれつが回っていないが、それでも懸命に言い訳をしようとする
「そんな・・・・・・・ そんな・・・・・・・」
「ロスト、いや『叛王』、もう、出来ないって判っただろ? もう嘘は付けないって判ったでだろ? 檻から出て自由になっても生きられないって判っただろ?」
そしてレイはロストの頭を撫でながら、告げた
「そろそろ『虚飾の鳥籠』へ戻っておいで」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
たっぷり数十秒、下手をすれば一分以上使ってから、ロストはぽつりと言った
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
こうして、あっけなく あんな壮絶な殺し合いをしたにも関わらず、いやだからこそあっけなくなのか、こうして、鶴ならぬ王の一言で全ての幕が閉じた
何て事は無い、ロストの本当の願い それは復讐でもなく、ましては王国、自分の居場所を守る事でも無く、ただ単に王国から、鳥籠から出たかった それだけだった
自分を縛る自分から解放されたかったのだった
嘘を付けない自分から、楽な生き方をしない自分から、“虚”ろな物で着”飾”った自分から
これは憶測だが、きっとロストは学校でずっと一人で本を読んでいたに違いない きっと誰とも喋らなかったに違いない
それは何故か きっと、ただ単に喋りたくないのに喋らないといけないのが嫌だったのだろう
ロストは嫌なものは嫌とはっきり言うタイプなのだろう それは素直、とも言えなくも無いが、この場合は頑固と言われるだろう
それ故にあの日、言えなかったのだ 出来なかったのだ 『僕がやりました』と言う一言を
簡単に楽になれる事を 無実の罪を着せられるという事を 嘘を付くと言う誰もが出来る事を
それは人間としてとても強いことだと思う だがそれは、その強さは人間にとって『普通では無い』のだ
人間は集団で嘘を付く生き物だ さながらクロウのように、集団で、自分ら以外の者を、自分以外の弱い立場の者たち、もしくは孤独に生きる強い者たちを狩る生き物だ
常識から外れた者たちを狩る生き物だ
本当はロストもお喋りとか、みんなと遊ぶとかしたかったのだろう 楽しく笑いたかったのだろう
だが、持ち前の強さが いや、持ち前の虚栄が許さなかったのだろう 嘘を付かない、自分に正直に生きるという虚飾が 作り笑いをしたくないという、意地が
まとめると、ロストの本当の願いは『偽る』事では無く、『抗う』事でも無く、『自由になること』 自分から解放されることだったという事だ
その願いを叶える手段として、偽る事を用いた、正確には心の底では嘘を付ければ解放されると思っていたのだろう
その考えは間違いでは無かった 現にロストは願いが叶い、笑って、泣いて、怒って、楽しんでいた 楽しむようになれた 『自分に縛られない自由』を
でも、それは無理だったのだ それは決して束縛から逃れられないという意味ではない
ロストは結局、捨てきれなかったのだ 自分を、抗うという事を 『反発』し続けるという事を
『叛がい続ける』と言う、自分の嘘偽りのない王国の核、『王』を
さながら、ずっと同じところを飛び回り続ける鳥のように、空に飛んでもその土地に縛り付けられる様に
ここでふと、本当にふと思い出したのだが、鳥と王さまの組み合わせで思い出したのだが、
『幸せな王子さま』と言う童話を
大切な王子の為に、王子の元を離れなれず、冬になって死んでしまったツバメの事を
だがまぁ、その幸せな王子と違ってこちらの物語ではちゃんと南の国へ、元の世界へ行くのだが
ちゃんと冬になる前に、オレに殺される前に南の国へ行くのだが、
果たして、南の国へ行くのと、その場で王子と朽ち果てるのと、どっちが幸せかと言えば、
ボクには分からなかった
判るはずも、無かった




