「鳥籠の叛王」 その1
「っ・・・・ はぁ、はぁ・・・・・・・・・」
「ん?もう終わりか?」
前が上手く見えない 体中が痛い 体力が限界と言う意味でもあるし、傷つきまくっているからと言う意味でもある
「いや、これはここまでよく頑張ったと褒めてあげるべきか?」
輪郭がぼやけてまともに仁の表情を見ることが出来ないが笑ってい居るのは分かる
「うる・・・さい・・・・!」
軋む体に鞭を打って仁に切り掛る 自分の目には仁を捉えたように見えたが、
「・・・・・・・もう限界じゃ無いですか もはや僕を捉えることすら難しいみたいですね」
実際には仁の手前を切っていたらし 刃がむなしく地面に突き刺さる
「ぐ・・・・・・っ」
何とかして地面に突き刺さった刃を引き抜こうとするが抜けない
「ぐっ・・・・ この・・・・・・・!」
懸命にもがくが、刃は抜けなかった いや抜けるどころか、
「おわっ・・・・・・・・・・・」
唐突に刃が消え、そのまま自分は前のめりに倒れてしまった
それくらいに、自分でも分かるくらいに疲弊しきっていた
「ホント、よく頑張ったと褒めてやるよ」
「そんな・・・・・・・ ぜぇ・・・ お世辞は・・・・・・・・・」
「お世辞じゃ無くて本当の讃頌だぜ」
声は楽しそうだった 仁の表情は分からない と言うよりもう見えない
首を上げる体力も無く、ただ仁のぼやけた足を見ていた
「オレと戦いながら能力を、物を偽る これはかなり凄いと思うぜ 例えるなら、そうだな・・・・
チェスをしながらボクシングをしている あ、世の中にはチェスとボクシングを交代でするというチェスボクシングたる物があるらしいですがそれよりも難易度が難しい事をしてたんだぜお前は
何せチェスとボクシングを同時にやるんだ 相手に殴り掛かりながらポーンd2、d4へ ってやってんだ体力も使うし何よりもっと頭も使う そりゃ前が見えなくなるようになるさ」
ふと、仁がしゃがみ込み、顔が見えるようになる
相変わらず表情はぼやけて見えないが口元が笑っているのは分かる
「ホント、お前はすげぇぜ やっぱり殺すのには惜しい」
「なら・・・・ どうする、気・・・・・・・?」
「どうする気って、もうあなたの事はどうもしませんよ もう立ち上がれないでしょう? 無力化は出来たんです 後はただ、レイを殺すのみ、です 貴様は生かしておいてやろう 何てね」
わざとらしく声色を変えて言う仁
そんなこと、
「そん、なこと・・・・ させ、ない・・・っ!」
「おや、まだ立ちますか」
全身が痛い、頭も痛い それでも立ち上がる それでも、守らなければ
「・・・・・どうしてそこまでするんです?」
関心を通り越してむしろ呆れたように言う仁
「どうして執拗にレイを守るんですか? あなたの推論だとレイに嫌われてるはずですがね やっぱりボクには分からないのですが」
「そりゃ・・・・・ 判らない っだろうね・・・・・!」
息も絶え絶えになりながらも懸命に声を出す
「自分は、僕は 嫌われていた でも、王さまは 違う・・・・・! 王さまは、沢山の者に好かれていた・・・・ 」
ふと、これまでの王さまを思い出す
みんなに優しくて、働き者で、進んで自分から声をかけて、そして街のみんなを助けようとして、
僕とは全く違う 自分じゃないような自分
言わば、ドッペルゲンガーのような自分
けれど、本物より本物らしい偽物
らなば・・・・・・
「それなら僕は、自分を犠牲にしてまででも王さまを守り通す!!!
どうしようもない、救いようのない僕の代わりに生きてくれるなら僕は命を投げ打ってもいい!!!」
再び手には黒い刃が現れる その刃の先を仁に向ける
「絶対に王さまは殺させない! 王さまが生きてくれる事こそが僕の願いだから!!!」
「・・・・・・・・・・・・・どーして人間はいつもこうなのかな」
と、仁が舌打ち混じりに呟く
「どーしてこうも間違えるのかなぁ・・・・・」
「間違える・・・・・?」
「何でもない 気にするな」
と、仁は剣をこちらに向けて、
「もういいや お前には期待ハズレだ さっさと死んでもらおうか」
そう言い放った
これが最後の一劇となるのだろう きっと次の衝突で僕が死んで、後は仁がどうなるかだな
王さまが逃げれるくらいの傷を負わせたいけど、まぁ、無理かな
ここで僕の『お話』は終わって、でもま、王さまが引き継いでくれるなら・・・・・
チラリと王さまの方を見る いや、王さまがいたところ、だな
いつの間にか王さまは居なくなっていた
気付かな内に逃げてくれたのだろう
そう、それでいい
一度目をつぶり大きく深呼吸する
そして意を決して仁に向き——————なお、り―——————————————————
「勝手に期待して勝手に期待ハズレとか言うの止めない?」
目を疑い未だにぼやけている目をこする
もう一度見てみるとその人物だけ異様にはっきりと見えた
「まさか、君が前に出るとは」
可笑しそうに顔を歪めて仁は言う
「ねぇ、反王君?」
目の前に、王さまがいた
「王、さま・・・・・・ ダメ・・・・・・・・」
早く、逃げて 僕が時間稼ぎしてる間に・・・・・
「いや、オレは王さまじゃねぇよ」
「・・・・・・・え・・・・・・・・?」
どう、ゆう・・・・・・・
王さまは仁を見て、それから僕を見て、言った
「十分自由は満喫しただろ、『王さま』? さ、『お城』へ帰る時間だぜ」




