小早川礼子編〈その四〉
そして三人は、渡瀬竜馬の元に向かった。
竜馬「どうした、お前達の方から出向くとは珍しいじゃないか、。」
亜輝「ええ、どうしてもあなたに会いたいと言う人がいるのでお連れしました。」
竜馬「かわいらしいお嬢さんじゃないか。お前達のマスクなら当然だが、しかし、俺に用とはどういうことだ。」
礼子「はじめまして、私の名は小早川礼子です。」
竜馬「小早川だと、今、小早川と言ったのか。」
礼子「そう、私の父の名は小早川敬護。」
竜馬「ま、まさか、敬護の娘なのか。」
亜輝「小早川敬護といえば、その昔、自分の命と引き換えに十人の人質の命を救った伝説の警察官のことか。」
竜馬「そうだ、その時、合同で捜査の指揮をとっていたのが、この俺だ。」
亜輝「なんですって、礼子の父親とですか。」
竜馬「その昔、十八年前になる。お前達がまだ生まれていない時の話だ。俺はドグマと懸命に戦っていた。そんな時、日本にも大量の殺戮兵器が持ち込まれようとしていた。そんな折、日本の警察が協力を求めてきたのだ。その陣頭指揮をとっていたのが小早川敬護だった。その後、コスモス日本支部も全面的に協力することとなり、合同捜査本部が立ち上げられた。俺と敬護は、その本部の責任者となり、捜査を行うこととなった。俺と敬護は、思想も考えも全く同じだったこともあって、すぐ打ち解けあった。そして名前で呼び合うような仲になっていた。捜査の協力のかいあって、犯罪組織を後一歩というところまで追い詰めたのだが、奴らは人質をとってたてこもった。その時、俺がおとりになる提案をし、敬護に援護を頼んだのだが……」
敬護「俺が行く、今の日本には、お前のような奴が必要だ。」
竜馬「いや、お前には妻がいるではないか。俺が行こう。」
敬護「俺も警察官だ、こういうことも覚悟の上の仕事だ。妻にもよく言い聞かせている。竜馬、最後にお前と組めて良かったよ。あとは頼んだぞ。」
竜馬「そう言って、敵の真っただ中に飛び込んで行った。そして、敬護の捨て身の行動で、人質は全員救助された。その後、大量殺戮兵器は持ち込まれることなく、ドグマの作戦は失敗に終わった。お父さんは、俺の身代わりに殉職したのだ……お父さんを死に追いやったのは俺かもしれん。俺の事が憎いだろう。」
礼子「いいえ、その逆です。あなたに会うまでは、正直戸惑っていました。母からは、高校を卒業したら渡瀬さんの所に行きなさい、そして父の遺志を継ぎ、世界の平和のために戦いなさいと言われていたのです。しかし、あなたに会ってその戸惑いが、確信に変わりました。父が、あなたにかけた意味がわかったからです。」
亜輝「なぜ、あのテロの時、渡瀬さんが生き残ったのか、今わかった。」
項志「ああ、そうだな、俺もわかったぜ。」
亜輝「友との約束を守るためだったのか。」
項志「亜輝、俺達の大将はとてつもない人らしいなぁ。」
亜輝「そうだ、もはや日本中で、この人に匹敵する人物はいないだろう。死してなおこの人にかけようとした礼子の父の気持ちがよくわかる。今の世の中を変革して行く力があるのだろう。俺はそう思う。」
項志「名前が竜馬というのも納得いくぜ。」
礼子「父の命日の前に必ず花が飾られていたのは、あなただったのですね。」
竜馬「敬護、死してなお、俺を助けようというのか……体は機械になってしまったが、涙はまだ流れるようだ。」




