レスキューボーイズ 第二部 小早川礼子編〈その一〉
あの球場での事件から一週間が過ぎようとしていた。
亜輝と項志は、河川敷を歩いていた。橋脚のあたりで、何やら人が争う声がしたので行ってみたのだが、一人の女とホームレスらしき人達が、七、八人の男達に囲まれていた。その女とは、以前亜輝が宇和島の高校に通っていた時、その学校で生徒会長をしていた小早川礼子であった。
亜輝「礼子さん。」
項志「あれ、礼子じゃないか。お前、こんな所で何やってんだ。」
礼子「神龍君、我皇君、やっと見つけたわ。グッドタイミング。」
亜輝「東京に出て来たのですか?」
項志「礼子、東京観光か!」
礼子「これが観光に見える……からまれてるのよ、どうでもいいから早く助けなさいよ。」
項志「相変わらず、高飛車な奴だな。それが助けてもらう奴の態度か。」
亜輝「項志、何か訳がありそうだ、助けてやれ。」
項志「まあ、気は進まないが……」
その時、その横にいたホームレス三人の内の一人が、二人に話しかけてきた。
ホームレス「違うんじゃ、このお嬢さんは、わしら三人がからまれているところを止めに入ってくれたんだよ。」
項志「そうだったのか、礼子、相変わらず無茶な奴だなあ。」
礼子「ええ、そうよ。弱い人達をよってたかっていじめる奴らを見過ごす訳にはいかないわ。あなた達も同じでしょう。」
亜輝「項志、これは一本取られたなあ。」
項志「さすが礼子、口ではかなわないぜぇー」
その時、取り囲んでいた男の一人が言った。
男「コラ、ガキども、こいつらの知り合いか。お前ら、この状況がわからんのか。」
項志「どういう状況だ。」
男「ガキと女とホームレスで、俺達に勝てると思っているのか。怪我をしたくなかったら、ガキと女は引っ込んでいろ。」
項志「この人達が、何か悪いことでもしたのか。」
男「この浮浪者どもは目ざわりなんだよ、町にとって不用なのさ。不用なゴミは処理しなくてはならん。」
項志「強ければ弱い者を処理してもいいんだな。この町では……」
男「そういうことだ。強い者が生き、弱い者が死ぬ。これが弱肉強食のルールだ。」
項志「ほぉー、では、この俺が、お前達全員ブチのめしてもいいってことだな。」
男「なにー、言わせておけば、やれー」
項志「行くぞー、ゴミどもー、いい声で鳴けよー」
そう言い終わると同時に勝負はついていた。男達は全て地面に倒されていた。男達はいったい何が起こったのかわからず、その状況が理解できない様子だった。
しかし、陰でその様子を見ていた男の一人が走り去って行った。
ホームレス「いかん、君達、早く逃げるんだ。」
亜輝「なぜですか。」
ホームレス「走って逃げた男、このグループのリーダーを呼びに行ったに違いない。」
そして、こう続けた。
ホームレス「このグループのリーダー、元プロボクサーなんじゃ。何人もの人が、奴の為に病院送りになった。」
亜輝「警察に通報しないんですか。」
ホームレス「そんなことをしてもムダじゃ。」
亜輝「なぜです。」
ホームレス「このグループ、ボンボンの集まりで、町の有力者とつながっているんだよ。」
礼子「許せないわー、そういう奴ら放っておくと、ろくなことはないわー、項志君、手加減する必要はないわ。やっておしまいなさい。」
項志「へいへい、お前に言われなくてもやりまっせ!!」
ホームレス「あんた達の気持ちはうれしいが、ここは逃げてくれ。」
亜輝「ここで逃げては、あなた達の身が危ない。それに大丈夫、項志は負けませんよ。」
そう言って、ホームレスの肩を叩いた。
ホームレス「なんという人達だ。自身の安全より、俺達ホームレスの身を案じてくれるとは。今までそんな人間に出会ったことはなかった。」
そしてその時初めて、人の温かさを知ったのである。
項志「というより、もう遅いらしいぜ。」
走って行った男が、体格のいい大柄な男を連れて来たのだ。




