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悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~  作者: みやもと春九堂@月館望男
【第14部】天空の箱舟・物理ハッキング編 ~古代兵器(野菜)は「ちゃんこ」の具材、セキュリティは「パイプ椅子」でこじ開けます~
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第144話 ロボット軍団? 鉄屑に変えてあげるわ! 物理最強の証明。

「……イリス。あれは?」


 わたしが尋ねると、端末からイリスのホログラムが飛び出した。


『照合完了。……天蓋管理システム統括AI、試作型『デメテル』。……私の、姉妹機(姉さま)にあたる存在です』


「お姉様?」


『はい。私は「演算と記録」を司る管理者として設計されましたが、姉さま(デメテル)は「育成と保護」を最優先事項としてプログラムされています。……いわば、この箱舟の「母親」です』


 イリスの説明に、ホログラムのデメテルが冷ややかな視線を向けた。


『……久しぶりですね、イリス。貴女、ずいぶんと「汚れた」人間たちに使役されているようですね。……嘆かわしい。演算器としての誇りを忘れたのですか?』


『否定。私は現在、最も合理的かつ効率的に世界を変革するマスター(ミリア)と、最強の個体(レヴィーネ様)にリソースを提供しています。これが最適解です』


『最強? 野蛮の間違いでしょう』


 デメテルはふん、と鼻を鳴らした。


『私の子供(種子)たちは、純粋無垢な存在。……暴力と欲望にまみれた地上の人間に、この尊い命を渡すわけにはいきません。貴女たちはウィルスです。……直ちに退去するか、有機肥料として処理されるかを選びなさい』


 デメテルが手を振ると、警備ロボットたちが一斉に襲いかかってきた。


 スタンロッドが青白いスパークを放ち、捕獲用のアームが蛇のように伸びる。


 だが、アリスの瞳に恐怖の色はない。


 彼女はスッと息を吸い込み、杖を振りかざした。


「……ここは保存区画だもんね。生存環境が維持されてるなら、宇宙服(光の繭)はいらない。……だから!」


 パリンッ!


 アリスは自ら「光の繭」を解除した。


 そして即座に、別の結界術式を展開する。


「『聖域障壁サンクチュアリ・シールド』!!」


 ズガンッ!!


 わたしたちの周囲に、六角形の光の壁が出現した。


 直後、警備ロボットたちが放ったスタンロッドの電撃や、捕獲用ネットが一斉に結界に弾かれる。


「すごい……! 物理攻撃と魔力攻撃、両方を弾いています!」


「へへへ、伊達にフガクで修行してないよ! レヴィちゃんたちが攻撃に専念できるように、守りは私が固める!」


 アリスが頼もしく叫ぶ。


 その横で、ミリアも懐からトヨノクニ製の魔導短銃を二丁、抜き放った。


「なら、露払いは私が! ……社長自ら、不良在庫(敵)の処分を行います!」


 ダアンッ! ダアンッ!


 ミリアの正確無比な射撃が、先頭のロボットのセンサーを撃ち抜く。


 しかし。


「なっ……!?」


 弾丸が命中した箇所が、水面のように波打ち、瞬時に塞がってしまった。


 ロボットの表面は、ヌラリとした銀色の光沢を放っている。関節部分が不気味に波打ち、形を変えているのが見えた。


「気をつけてください! あれは『液体金属(リキッド・メタル)』です!」


 ミリアが警告を飛ばす。


「物理的な衝撃を吸収し、自己修復する厄介な素材です! 斬撃や銃弾では、すぐに再生されてしまいます! 厄介です!」


 アリスの結界が、度重なる衝撃でミシミシと音を立てる。


 液体金属の触手が、結界の隙間をこじ開けようと蠢く。


「くっ……! 数が多いよぉ!」


「自己修復機能が早すぎます! これではジリ貧です!」


 二人が悲鳴を上げる。


 わたしは、優雅に一歩、前に出た。


「下がっていなさい、二人とも」


 わたしは鉄扇を開き、襲い来る鋼鉄の軍勢を見据えた。


「……野蛮、と言いましたわね?」


 ヒュンッ!


 風切り音と共に、先頭のロボットが「くの字」に折れ曲がって吹き飛んだ。


(しつけ)のなっていない機械人形風情が……!」


 わたしはステップを踏み、踊るように鉄扇を振るう。


 ガギィッ! バキィッ! ドゴォォン!


 ロボットのアームをへし折り、胴体を貫き、回し蹴りで装甲を粉砕する。


『無駄です! 液体金属の再生能力を……なっ!?』


 デメテルの余裕の声が凍り付いた。


 わたしに蹴り飛ばされたロボットが、再生するどころか、粉々になった破片のまま動かなくなったからだ。


 再生しようとする金属の動きよりも早く、わたしの追撃がその(コア)を叩き潰している。


「液体金属? 再生? ……ええ、知っていますわ」


 わたしは鉄扇を閉じ、ピクリとも動かない残骸を踏みつけた。


「再生が追いつかないほどの速度と圧力で、分子結合ごと叩き潰せばいいだけの話でしょう? ……所詮は物質。壊れない物などありませんわ」


『な……っ!? 理論上不可能です! 私の警備ドローンが、生身の打撃で破壊されるなど……ありえません!』


「ありえますわよ。……これが、貴女が『野蛮』と見下した、人間の生命力(筋肉)ですわ!」


 わたしは残骸の山の上に立ち、デメテルのホログラムを見上げた。


 もののついでに破壊した警備員(セキュリティ)たちを足下の影(暗闇の間)に収納していく。あとで何かに使えるかもしれない。


「いいこと? 私たちはウィルスでも汚染物質でもない。……お腹を空かせた、ただの『お客様』よ」


 わたしはニヤリと笑った。


「私の目的は、ここにある食材の回収。……大人しく冷蔵庫の鍵を開けるなら良し。開けないなら――」


 わたしは鉄扇で、広場の奥にそびえる中枢タワーの方角を指し示した。


「ドアごとぶち破って、中身をいただきますわ!」


『……野蛮! やはり人間は危険です! 排除! 排除レベルを最大に引き上げます!』


 デメテルが絶叫する。


 警備ロボットたちが瓦礫と化し、物理攻撃が通じないと悟った彼女は、次なる手を打ってきた。


『警備システム、自律兵器群全滅。……プランBへ移行。バイオ・プラントの「実験体」を解放します』


 ゴゴゴゴゴ……。


 地面が揺れる。


 広場の奥、緑色の光が漏れる「植物栽培区画」の隔壁が、重々しい音を立ててゆっくりと開き始めた。


『貴女たちの命を養分として、私の可愛い子供たちを育ててあげましょう』


「あら。ロボットの次は、お花のお世話係ですの?」


 わたしは身構えた。


 だが、そこから現れたのは、可憐な花などではなかった。


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