番外編 見学ツアーへようこそ〜新生児室
「高等部の皆さん、本日はようこそ、職場見学にお越しくださいました。実際の仕事の様子や職場の雰囲気を見て、少しでも将来の参考にしてもらえたら嬉しいです。気になることがあれば何でも気軽に質問してくださいね。それではまず、新生児室から見ていきましょう」
エントランスから大きな自動ドアを2回通ると、廊下と部屋を分ける壁が全てガラスの、見透しの良い廊下に出た。
「新生児担当保育士さんたちは、この数百の保育器が並ぶ新生児室で、24時間交代制で働いています」
新生児担当保育士たちは、ガラスの向こうに人だかりが出来ているのに気付いた。
「あ、今日は職場見学の日か。もうそんな季節かぁ。働き出すと1年って早いよー」
「ホントだよね。あ、K-8ベッド、オムツかも。あ、あの子寝返りうった! 早くない?」
「マイクマイク!」
「連絡です! K-2ベッド、IDマヒロ.5932……ベッド移動です」
保育士は、新生児ベッドをK列からLに静かに移動し始めた。
廊下では、案内係がそれを説明していた。
「皆さん、今ベッドの移動が行われていますね。Aのグループのベッドが、病院から移動したばかりの新生児です。それから成長と共に移動して行きます」
「ごめん、Jのミルクの用意、お願い」
「りょーかい」
頼まれた保育士は、【human milk】と書いてある大型冷凍庫を開けて、
「この時間は……Jは2、3、7、10……、あ、3と10はもう在庫切れだ」
彼女は人乳バッグを取り出し、解凍器に入れた。
「3と10は終わった。人工ミルクオンリーになったよ」
「了解。7はまだ人乳あるんだ。個人差あるなぁ」
教育都市外にある産院では、必ず産後ケア施設が設けてあり、自身の体のメンテナンスや、搾乳が行われていた。
同じ産院で産んだ者同士が顔を合わせるので、待合室は女性のお喋りが絶えなかった。
搾乳室には、胸に装着する搾乳器付きの席が、ずらりと100席程並んでいた。皆、搾乳しながらもお喋りを続けていた。
「なんか私、もうおっぱい出なくなってきたー!」
「終わったかー」
「えーん。小遣い稼ぎが……」
「まあ、こればっかりはしゃーないよー」
「めちゃめちゃ出る人が羨ましいよう。お金になるんだからぁ」
「いやいや、この間の人、パンパンにカチカチに張ってて、めちゃめちゃ痛がってたよ。お金要らないから、一日中搾って欲しいから泊めてって言ってた」
「わら」
「個人差あるよね〜」
「家で自分でやるのって、確かにむずい」
「やっぱ赤ちゃんが吸ってくれるのが一番楽だね」
「まあね。は〜疲れた。私、今回は長くおっぱいでたから、結構稼いだんだー」
「いーなぁ」
自分で書いといて、母性のボの字もねーなぁと思ってしまった。人乳=母乳




