ep.39 教育都市2
辨野は、情報部隊からPCに送られてきた例の教育都市の情報を、くまなく見ていた。
「もう目が疲れてきた……」と眼鏡を外した。
「……違和感があるところを見つければいいんですよね」
場地とビリーも、別のPCで情報を流し見していたが、場地がため息をついた。
「特に無いんだよなぁ。他の教育都市と特に変わらないし。学校関係、商業施設、民間企業……俺、コーヒー淹れてくる」
辨野がふとモニターに目をやり、「ん?」と止まった。
「……これ、怪しいな」
「え! どこ? ベンさん」
場地とビリーが辨野のモニターに駆け寄った。
「これ、他の教育都市には無いだろ。だけど違法じゃない。ただ営業してるだけなら、世界政府に目をつけられる事はないはず。だが……他に見当たらないからなぁ」
「うん」
場地とビリーも頷いた。
ラーメン屋を出るとすぐに、直斗は「じゃ!」と言って仕事に戻って行った。
「はぁ、何なんだよ」とレジーはため息をついた。
双子とボギーは商店街を抜けて、教育都市のほぼ中心に位置する大きな公園に入った。公園からは、高層ビルの校舎や施設が360度見渡せた。
ボギーはキョロキョロと見渡し、
「特に被害は無さそうだよね」と言った。
「つーか、俺らのせいで攻撃ぶっ込んだとか、責任おっ被せるって自体、無理あんだよ。俺らカンケーねーっつーの」とレジー。
「そもそも嘘だったしね」
「ナリタん時みたいに、一般人を何度も助けてたまるかよ」とキャンティ。
「そんな事言って────あ、ベンさんからだ」
ボギーはイヤホンを装着した。
「何〜? ベンさん。なんか見つかった?」
双子もイヤホンを付けた。
「うん、うん────大学の中に会社? 講師の副業……フンフン、よくわかんないけどそこに行ってみればいいよね────人型ユニットいるかな────わかんないか。まあ、行ってみるねー」
キャンティが目的の位置を確認し、3人で歩き始めた。
「人型ユニットがいなかったら、つまんねーんだけど」とレジーが言った。
「え、暴れに来たの? 原因を探りに来たんじゃないの?」
ボギーは若干引いていた。
「暴れたいに決まってんだろ。もしそこに人型がいなかったら、帰りにその辺にウロウロしてる巡回ユニット捕まえようぜ」
「俺の初めてのバトルん時、無駄な戦闘しやがってって言ったくせに!」
「あの時は保護する目的があったじゃねーか」とキャンティが言った。
レジーは目をギラギラさせながら、周囲を見渡した。
「目が合って誘いに乗ってくんねーかなー」
ボギーは項垂れてため息をついた。
「そんなパパ活女子みたいなこと言って……誘惑するのやめてよもう……」
「先生、東アフリカに関する問い合わせがありました」
大学構内にある文化人類学のゼミは、その日も活気に溢れていた。
「私、先生みたいに旅行業務取扱管理者の資格取るんです」
「先生は副業って禁止じゃないんですよね」
「学校によるかな。営利目的だけの副業は原則禁止だけど、教育や研究に関するもの、社会貢献につながるものなら許可を得られるとこも多いよ」
「教授のゼミより活気があるって、みんな言ってますよね!」
この文化人類学の講師の男は、パートナーが出産し、子どもと離れたくないと言った時、自身も馴染みのある発展途上国に、3人で逃亡しようと提案。
でもパートナーは元々体が弱い事で、途上国の生活は難しいと断念。
その後、パートナーと2人で移住を希望する人たちのサポートを行う為、資格を取り、旅行代理店業を始めた。
それに影響を受けた学生たちが、次々と協力。別のゼミの学生なども参加し、それなりの規模になっていった。
子どもがいなければ、外国への移住は違法ではない。だからそのサポートも不問だった。向こうで出産になれば違法にもならず、日本政府や世界政府から強制される事も無かった。
だが、ある1人の学生が検索した言葉によって、世界政府は、このゼミに対して要警戒レベルだと認定した。




