ep.28 アディクテッド アンデッド
双子の言葉通り、チャコに攻撃し続けている敵は、首から下をオールインワンのパワードスーツに収められた、目はうつろで異常にやつれている、まるでゾンビだった。
パワードスーツは鋼鉄の装甲で、ヤスたちAIロボットのような日常的な機能性より、戦闘を目的としているのが、見た目で理解出来た。
レジーとキャンティの目は驚きで一瞬大きく見開いたが、瞬時に冷静さを取り戻した。
冷酷で氷のような目の奥には、爆発しそうな闘志を燃やしていた。
「──ババア、攻撃食らったのか?」
攻撃を受け続けながら、チャコが状況を説明した。
「違う、これは突然血を吐かれて浴びちゃったの。中身が人間だったから、びっくりして油断した」
「やっぱり人間かよ」
「よく聞いて! パワードスーツに私の攻撃が効かない! 多分あなたたちもそうだから、朱雀様、白虎様、防御に徹してください! それと中の人間は、自分の攻撃を受けられただけで、その衝撃に耐えられなくなってきてる。なるべく衝撃を与えないように、攻撃を流すように!」
チャコの背後に龍神も姿を現し、
《この装甲の問題は、強度云々ではない。我々の力を跳ね除けるようだ》と言った。
「なんだよそれ」
「信じらんないんだけど」
中の人間は、ただパワードスーツに支えられて立っているだけのようだった。だがパワードスーツは腕を振りかぶり、強烈なスピードと重さで攻撃をしてきた。
レジーとキャンティは攻撃をかわしたり受け流したりしながら、打開策を考えていた。
だがうっかり正面で受けてしまうと、パワードスーツの圧に耐えられず血を吐く者がいた。
「げっ!」
神獣の防御で血を浴びずに済んだが、パワードスーツの動きは止まず、中の人間は血を撒き散らしながら攻撃を続けていた。
「こいつ、もう意識無いんじゃねーの? なのに動くって事は──」
「彼らの生死は関係ないって事よね」
そこで情報部隊からの声が、イヤホンから聞こえて来た。
『チャコさんチャコさん、イエツナです。その通り、そのパワードスーツは中の人間の動きに同調して駆動するわけではなく、センサーで相手のトルソー部分、いわゆる胴体を見て生身かどうかを判別して、攻撃していると思われます」
「まずいわ……」
『あと彼ら──“素体”はドラッグ・アディクト、麻薬依存のようです。海外のゾンビタウンと呼ばれているところから、中毒者が一掃されたと一瞬だけニュースになりましたが、その人たちの可能性が高いです』
「捨て駒じゃん」
「バッテリーが切れるまで攻撃し続けるのか? その頃には中身全員生きてねーわ」
「そう! だからバッテリー外すか、脱がすか、もしくは──」
双子は元々身軽な上に式神の防御もあり、体力が尽きることは無かったが、レジーは逆に暴れ足りなさでイライラが顔に出て来ていた。
「キモい! ブッ飛ばしてえ! こっち来んなクソが!」
キャンティもイライラし始めていた。
「最悪! しつけえんだよ!」
チャコは防御しながら、外装をくまなく見ていた。
「イエツナ! パワードスーツのバッテリーってどの辺にあるの?」
『一般的に腰のあたりですが、チャコさんのピアスカメラで見たところ、ベルトのようなものや、ウエストバッグ的なものは付いていませんよね?』
「無い!」
『バッテリーのような重いものは、腰から下に配置して安定させるので、脱がせたらわかると思います』
3人で敵全員の攻撃を受け続けながら、バッテリーを探すのは困難だった。
式神の力が備わっているのに攻撃が効かない、もし攻撃が効くとしても、中の人間に損傷を与えずパワードスーツだけを破壊するのも、不可能に近い。
チャコは撤退しかないと判断した。
「撤退しよう」
チャコのもとに向かっている辨野や場地たちは、イヤホンから聞こえたその言葉を黙って聞いていた。
「この人たちが生きてる間に撤退しよう。まだ謎は解明出来てないけど、私たちがここにいるだけでパワードスーツは止まらない」
『英断』と場地が言った。
『了解』とビリーも返事をした。
レジーは悔しさで叫んだ。
「腹立つ!」
そこで突然、ボギーの声が全員に届いた。
『ねー、ちょっと試したい事あるんだけどさ! 撤退はその後でいい?』
双子は顔を見合わせた。
「──とりあえず全員到着するまで、このまま待とうぜ、チャコ」
攻撃を受け流しながらキャンティが言った。
「わかった!」
辨野とボギーが医療センターに到着した時は、真っ赤な血飛沫が飛び散る真っ白な広い部屋で、チャコたち3人はゾンビのように何度も立ち上がる敵と、終わらない攻防を繰り広げていた。
「お待たせ! ベンさん1人捕まえて〜」
ボギーは向かって来たパワードスーツを一度かわし、それを辨野が背後から両腕を押さえ、うつ伏せに倒した。
辨野と重なるように、オオグチノマガミが姿を現していた。
「カミサンの霊力っつーか、なんかそれが効かないんでしょ? だったら力技っしょ! 人間だもの!」
ボギーはバールを両手で持ち、
「オリャァ!」とパワードスーツのトップとボトムの継ぎ目に、カギ先を打ち込んだ。
レジーとキャンティは目を大きく見開いた。
「マジかコイツ……」
パワードスーツの色、何色がいいですかね。
白、カーキ……




