ep.26 幼馴染の思惑
山深い、神々の庇護のもとにあるイズモのコミュニティでは、今度は人間たちの異例の会議が開かれていた。
食堂を追い出された子どもたちが、青空の下元気よく遊んでいるのが、食堂の窓から見えた。
コミュニティの食堂は人で溢れており、中心にいるのは目を輝かせた賢斗だった。突然野良になるという賢斗を、皆で説得していた。
「よく考えろ。俺たち野良は、結界の外で見つかったら殺処分なんだ」
「簡単に決めるな。ここは子どもと一緒に暮らしたい人間が、社会的なものを全て捨てて来るとこなんだよ」
「外で働いててもチャコちゃんには会えるわよ? 悪いことは言わないから!」
コミュニティの人間たちも賢斗を止めようと必死だったが、賢斗はなかなか譲らず、チャコも困った顔で言った。
「私は日本中飛び回ってるから、ここにじっとしてなんかいないのよ? AIユニットと戦えるのは私しかいないんだから」
「そんな危ない事は全部ベンにやらせればいい! な? ベン」
突然話を振られたベンは、驚いて生返事をした。
「え? 俺? ま、まぁいいけど」
「でもねぇ、チャコちゃんの面倒をみたいなら、出来れば外で働いてた方が安定してるわねぇ。資金も余裕があるわけじゃないし」
賢斗は資金の事を言われて、一瞬冷静な表情になった。
「そうか……。あ! なら直斗が野良の資金繰りを考えてくれるはず!」
直斗も突然話を振られ、驚いて声を上げた。
「は? 何で俺が」
「お前なら出来ると思うんだよな〜」
「は? ……え? マジで言ってる?」
「マジで」
「……面白そうかも」
直斗の一言に、ベンはますます頭を抱えた。
「また……何言ってんだお前らは……昔から賢斗がとんでもない事を思いついて、直斗が面白がって実行するんだよ……」
賢斗は真顔でベンに向き直った。
「俺、知っちゃったからにはさ、チャコちゃん抜きでも何かしらするよ」
「……だろうな」
ため息をつくベンとは対照的に、賢斗はやる気に満ちた目をしていた。
ボギーはパンケーキ用の具材を、キッチンから運んでテーブルに置いた。
「その賢斗さんって人は、今は野良なの?」
テーブルにはベーコン、チーズ、ほうれん草ソテー、レタス、スクランブルエッグ、薄焼きハンバーグなどが並んだ。
「これで飽きないっしょ」とボギーは満足げだった。
「俺はいつもの甘いのでいい」
「甘くても飽きない」
レジーとキャンティは、バターとメープルシロップたっぷりのパンケーキを食べ始めた。
辨野はほうれん草とベーコンを皿に乗せた。
「俺たちもコミュニティの人間も猛反対したんだけど、結局な。もともと教師になる予定だったから、子どもらに勉強教えてるよ。あと『第一次産業サイコー』とか言って農作業してる」
「俺が行った時はいなかったのかな、ってベンさん! パンケーキも手伝って!」
「タカチホでも呼ばれて先生やってる時あるなぁ。若しくはチャコちゃんの龍神巡りとかで、一緒に全国行脚の最中だったかもな」
情報部隊・ヤスたちAIロボットは、ダイズを強制的に寝かしつけた後、世界政府と日本政府のやり取りの解析を続けた。現在までの状況を知らせるため、ベンとチャコにメッセージを送信した。
[現在巡回ユニットを大量に増やしています。
さっさと野良を見つけて“新型“を試したいようですね。
やっぱり野良対策でした。わたくしの当たり。
いえ、最初に言ったのはわたくしです。
さて、とりあえずコミュニティの皆さんは、結界の外にはあまり出ないでくださいね〜。
ターゲットは単独で動いている女との事。ベンさんたちは二組で動く事が多いからでしょうか。
チャコさん1人に対し物量作戦でしょうかね。という事は試作品の数は結構ありそうですね。
はーやれやれ。世界政府もあの手この手を打ってきますねぇ。
“新型“はどのようなモノなのかまだハッキリとはしていませんが、重機ロボットのようなものと推測されます。
『レアムーン』と呼ばれているもので強化している可能性が高いです、はい。
その“新型“は今、日本のどこにいるでしょう。
なんと! 医療センターに移動したようです。
あら、ダイズさんが起きてしまった]
「病院?」
連絡を読んだチャコは、怪訝な顔をして言った。
ベンの返信は
[代表で誰か1人がテキストにまとめてから送れ]だった。




