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ep.24 白い眷属




「今年も遠足は水族館が良かった……」


 教育都市から少し離れた場所の山に、小学生たちが遠足に来ていた。不平不満を言いながらも、教師の後について山歩きをしていた。


「山やだよ」

「もう疲れた」

「オレも疲れた……」


 引率の教師はハハハと笑い、

「自然に触れる機会をありがたく思わなきゃ駄目だぞ。ほら、頑張れ」と子どもたちを鼓舞した。


 ブツブツ言う同級生たちと連なって、ベンは足元を見ながらひたすら歩いていたが、ふと何かの気配に気づき顔を上げた。




 藪の中に佇む大きな白い犬が、鋭い目でベンをじっと見つめていた。




「……白くてデカい犬が……めっちゃ見てくる」


 前を歩く賢斗は周りを見渡した。

「どこ?」

「あそこに……あれ?」


 ベンと確かに目が合っていたその犬は、もう消えていた。


「ナオ、見た?」

「見てない」

 疲れてどうでもいい直斗は、首を横に振った。



「あれに似てた……なんだっけ、動物園にいた……絶滅した動物のクローンで集めたエリアの、えっと……ニホンオオカミ」

 

 ベンは周りを見渡したが、犬らしき姿はどこにもなかった。歩き疲れていたベンは考えるのをやめた。


「あんなとこにドッグランなんてあったんだな……」


 


 それからその白い犬は何度もベンの夢に現れた。夢に時折り現れては、鋭い目を向けていた。






「ベン、CBTもOSCEもクリアしたんなら研修先見学か?」

「まあ、そうだな」

「臨床研修センターの人がマッチングしてくれたってホントか? もう決まったって早くね?」



 ワイワイ話をしながら大学構内の学食を食べる医学部の4年生たちは、忙しさに目を回しながらも、雑談や情報交換に花を咲かせていた。



 カフェテリアを出たベンは、教育都市内のキャンパスを歩きながら、うーんと唸っていた。


「まぁいいか。教育都市と離れても」


 ベンは幼馴染2人に電話を掛けた。





 先日ベンは、臨床研修センターの人間から紹介され、とある大学病院の一室で医師2名と対面していた。



「俺はここで医師をしているカイ。こちらは先輩のシロ先生だ。都内で診療所を開いている」

「初めまして」


 3人は軽く挨拶をし、シロが事情を説明し始めた。


「実はイズモから“使い”が来てな。こんな事は初めてだが、お前を指名しろと指示されたんだ。まぁこっちは見込みがある奴がいるなら願ったりだと思ったんだが」


「私も初めてですね。こんな事」

 2人の医師は、まだ疑問が残っているような話ぶりだった。


「何の話ですか?」


 ベンは2人から野良について聞かされ、初めは呆気に取られていたが、だんだん内容を飲み込んでいった。


 ベンは少しの間黙っていたが、こう答えた。


「いいですよ。と言ってもまだ学生ですが。そんなんでいいんですか?」


「俺もまだ引退する年じゃないからな。後継がいれば安心するってだけだ。まあ、とにかく肩の荷が降りた」


「にしても指名するって、君はどこで気に入られたんだろうね」

「俺にもさっぱり……」



《連れて来たか》


 突然現れたのは、海蛇を全身に(まと)うように絡ませた、“使い”と名乗る男だった。



《この男を連れて行く。ご苦労だった》



 残された医師2人は、呆気に取られたまましばらく動かなかった。






 イズモに連れて来られたベンは、コミュニティの人間に案内され、本堂に座っていた。


「大学病院で面談だと思ったら、突然ここに連れて来られたんですが……緊張したのに」


「これから本物の圧迫面接だぞ。ハハハ」とコミュニティの男が言った。


「マジですか……」



 “使い”がまた現れ、静かに言った。


《お前に力を貸したいと名乗り出た者がいる》

 


 ベンがそこで出会ったのは、端正な顔立ちをした武将が連れて来た、白い狼だった。


「……なんかイケメン来た」


 武将は鋭い目でベンを見て言った。


《私はまだ完全に認めてはいないが、この者がお前を選んだと言っている。私の眷属(けんぞく)、オオグチノマガミだ》




 ベンの目を鋭く見据える白い狼──オオグチノマガミとベンは、二度目の対峙を果たした。







教育都市の設定は、偏差値高めは都心部に近く、運動能力系はフィールド広めな地方にいくイメージかな。

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