ep.22 来訪者
突然の来客に、ボギーはポカンと口を開けたまま動かなかった。今まで人が訪ねて来た事が一度も無かったからだ。
そのスーツの男を見るなり、レジーとキャンティが
「ゲッ」と言った。
その男は薄ら笑いを浮かべ、双子にこう言った。
「よぉ。相変わらず女装してんのか?」
「う〜る〜せ〜え〜、丸焼きにすんぞコラ」
「俺にそんな口きいたらダメって習わなかった? クソチービ」
男はヘラヘラと笑った。
「フリーズドライにすんぞコラ」
ボギーは辨野の顔を見た。
「この人は俺の幼馴染の直斗くん。そして野良の大事な資金源でもある」
「え〜! それは大事な人じゃん!」
「でしょ? なのにこの扱いよ。この女装ツインズ酷くね?」
双子は犬のように唸って睨んでいた。
「猛犬かな?」
直斗はボギーを見た。
「お前は新しく来た方の猛犬?」
「ボギーっす。よろしくどーぞ!」
「北海道からわざわざようこそ。今日はお前の顔を見に来たんだよ」
場地もビリーも和やかに話しているので、悪い人じゃなさそう、とボギーは思ったが、
「なさそう、じゃねーよ。あるよ」とレジーが言った。
「ボギオ、また思った事が口に出てたよ」
「マジ?」
「お、ビリーは弟が出来たみたいだな」
「おとうとって何すか?」
昔、同じ質問をした辨野と直斗がシンクロした。
「だよなー」
「全部終わったらもう俺、海外に逃亡してもいいよね」
直斗は少し疲れた表情を見せた。
「どこ行きたいの」
「決めてないけどさ、一人で自由になりたいなーって」
「直斗さん、パートナーとかいないの?」とボギーが聞いた。
「そのパートナーが嫌なの」
「? 何が?」
「そんな質問をコイツにしたらダメ」と辨野が言うと、直斗はしれっとこう言った。
「だって女は妊娠したらお金もらえるんだし、なんでそんなにパートナーが欲しいかね。意味わかんね」
「直斗さんは家族制度、要らない派?」
「俺個人的には家族は無くていいの。だって今の制度ならヤ……」
ゴツッ
辨野が直斗の頭を殴った。
「……りたい放題だよ?」
頭をかかえた直斗が言った。
「んなわけない」と辨野。
「クーズ」とレジー。
「カース」とキャンティ。
「パートナーいらないんだ。へー」とボギー。
「お前はこのクズカスくんを見習わないように」と辨野。
「なーに言ってんの。国が子どもを作る道具としてしか見てないんだからさ。俺は模範的な国民なんじゃないの?」
「そういえば資金源って、直斗さんに仲間はいないの?」
「1人が気が楽だなと思ってね」
辨野が続けた。
「俺たちが生まれる前から、資金源の人たちっていたんだけどな、結構消されたりしたんだよ。会社ごと」
「1人だから俺が消されたら終わりなんだけど、まあ、何とかなるかなって」
「ああ、だから強そうな連中に守られてるんだ」
直斗の周りを、屈強な守護神や式神が取り囲んでいた。
「やっぱそう? 俺見えないからさ」
直斗は「新人の顔も見たし、じゃ!」と言ってさっさと帰って行った。
ボギーは直斗を見送った後、
「ホントに顔見に来ただけだった。今度は俺の飯、食べてくかな」と言った。
「言っておくよ。でもあれはたぶん、逃げて来たんだろう」
「AIユニットから?」
「女から」
「真正クズだ」
突然、今度はインターホンが鳴った。
「え……マジで追いかけて来た?」




