ep.18 come on in my kitchen
RPGを進めてる気分で書いています
「行き場がないってビルが多いから? 何がイヤなん?」
ボギーは妖怪たちと、石段に腰掛けて話し込んでいた。
《ビルというより、街全体が一晩中眩しいし、うるさいのだ》と、鬼神・大嶽丸が嘆いた。
《そう、夜が無いのよ……昔は都会って一部だけだったのに……落ち着かないったら》
蛇女・清姫もため息をつく。
《わしも眩しいと疲れるなぁ》
鼠妖怪・鉄鼠がそう言うと、ひょうすべが「そうそう」と相槌を打った。
「へー。あ、じゃあアレ試そう! みんなで繰り出そっか!」
そしてレジーとキャンティは、真夜中のコンビニ帰りに衝撃映像を見た。
黒いサングラスをかけたボギーを先頭に、大小様々な妖怪たちが皆で黒いサングラスをし、堂々と練り歩いて来た。
「やっぱアホだわアイツ」
《ヤッホー久しぶりー、レジキャン》
雪女がレジーたちに手を振った。
「………………お前ら、どこ行くの」
《都会を満喫しに来たわ〜。からかい甲斐があるじゃない、こっちの人間は〜》と水を滴らせた海女房が言った。
《イズモは皆、普通にしてるからなぁ》
《わしらもたまにはパーっと遊ぼうかと思ってな》
妖怪たちは皆でキャッキャとはしゃいでいた。
後ろから歩いて来た場地にキャンティが言った。
「お疲れ。何これ」
場地は諦めた表情で、
「もう……好きにさせよう」とボギーを見た。
ボギーは妖狐とギャーギャー言い合っていた。
「だから〜! おっぱい見えてるってば!」
《見せてんの!》
「何で!」
座敷わらしがレジーの服の裾を引っ張った。
《レジーは何食べてるの?》
「……アイス」
《バジ、アイス買って。あずきのやつ》
「さっき食っただろ!」
場地はため息をついた。
「はー、……まぁいい、みんな迷子になったりしないか?」
《もう、バディは優しいねぇ。大丈夫よ、遊んだら適当にイズモに帰るから》
てんやわんやしながらも、妖怪たちは「じゃーねー」と言って、サングラス着用でサイバーパンクの街に消えて行った。
「おかえり。場地はとんぼ返りさせて悪かったな」
辨野はグッタリして帰って来た場地に言った。
「とんぼ返りは慣れてるからいいけど、今度はベンさんが引率ね……」
「あららお疲れ。ところでカミサンたち、何か言ってなかった?」
「ああ、ベンさんに伝えろとは言われた。“ヨコハマを見張っておけ”だって」
「なるほど」
「何かあった?」
辨野はダイズからのメッセージを開いて、スマホを場地に見せた。
『若い男女数人、集団で行方不明。例のブローカーの犯行と思われる。警察が追跡中。
加えて20代男性4名、タカチホから2年前にヨコハマに移り住んでいた集団から失踪』
「何?」
ボギーもスマホを覗き込んだ。
「またIDの乗っ取りで誘拐? あと……ヨコハマから失踪って、AIユニットに捕まったのかな……」
部屋の隅のソファーにいたビリーが、目線を本に落としたまま言った。
「そのブローカー、結構大きな組織の一つ。主犯格の名前は『ロク』」
「そいつは、元野良だ」
辨野の言葉に驚き過ぎて、ボギーは声が出なかった。
「コイツは裏で、外に出たい野良たちにIDを与えてる。普通に金目当てでもやってるし、ロクの仲間は気付いてないだろうな」
目を見開いて呆然としているボギーに、辨野は続けた。
「外で生きたいって思うのも、それも当然なんだよ。どっちで生きて行きたいかは、本当は選ばせてあげたいと思う。ただ──野良から外に出るには、誰かのIDを奪い取って生きていくしかない。ダミーでちょこっと拝借じゃなくて、しっかり外で生きていくならな」
ボギーの顔が、今までにない絶望の表情をしていた。
「IDは見た目の年齢が同じくらいで、成り代われる人間に渡る。盗られた方は──お前も知ってる通り」
レジーが冷蔵庫からコーラを出して、普段ボギーが料理をしている辺りをチラッと見た。
「何あいつ、部屋に籠ってんの?」
リビングにいた場地に聞いた。
「見た事ない顔してたよ。自分が生体販売されてた時より青い顔してたな」
「バッカじゃねーの。いちいち気にしてたら生きていけねーっつーの」
ボギーはベッドの上で胡座をかき、何も無いただの天井を見上げ、ぼーっとしていた。
そのまま後ろに倒れ、ベッドの上に大の字になってケルベロスに話しかけた。
「俺、何がショックなのかもわかんないんだけど」
《何がどうショックだったか、ちゃんと考えてごらん》
「ナリタの人たちとか、イズモも、みんな普通に過ごしてるからさ。
みんな辛いのに頑張ってんなぁ、としか思ってなかったんだよね。
考えたら当たり前だよね。
嫌になるよなぁ、うん」
《それでお前はどうしたい?》
「みんなを助けたいなぁ。みんなは無理か」
《みんなを助けたらお前は幸せか?》
「俺が最高にハッピーだなぁ」
《じゃあ何をすれば良いんだ?》
「何だろう…………聞いてこよ!」
ボギーはガバッと起き上がった。
《そうしろ、そうしろ》
ボギーは部屋を飛び出し、リビングで叫んだ。
「俺、何すればいい?」
辨野はニヤッと笑い、
「はい、じゃあ計画はこうね。あ、別にギター弾いて眠らせる程じゃないけど、楽器屋には出番無いから出て来ないでねって言っておいて」と言った。
以前も書きましたが『ギターの悪魔からクロスロードでギターを渡された』というロバート・ジョンソンの伝説を使わせてもらってます。
タイトルは彼の曲から拝借。
『ギターの悪魔』って言葉だけで厨二心をそそられます。




