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《21》強面皇帝と魔術師団団長2

 珍しくフロー兄さんから呼び出しがかかったのは昼を少し過ぎた頃だった。

 父は領地からの報告書に目を通していて、母と僕は隣国が侵入出来ないように国境に強力な防御壁の新術式を思案していた。


 突如、伝達魔法で告げられたマーク兄さんの怪我の報告に動揺を隠せない。

 最上位の魔術治療師の要請。如何なることにも対応できるように父と母を急ぎ連れて来てくれ。とのこと。

 始めて聞くフロー兄さんの焦りの混ざった緊迫した声にマーク兄さんに大変なことが起きているんだと自分の心臓が激しく鳴り、警告音を発している。



 (マーク兄さんが……怪我をした?嘘だろ。どれぐらいの怪我なんだ?最上位治療師の要請ということは命に関わるほど大きなもの……マーク兄さんがいなくなったら……僕は……) 



 「父様、母様、フロー兄さんのところに行きましょう。」



 急ぐ気持ちのまま両親の手を取ると魔術棟から王城に転移した。

 焦りがあったのか、転移予定の場所ではなく広場を見渡せる城壁に三人は転移していた。



 「……あっ」久々にやってしまったと頭を抱えた。



 「もう〜!アルは心の乱れが魔法で出てしまうのは相変わらずなのね。まだまだ修行が足りなくってよ!」

 「いいじゃないか。少し抜けているぐらいの方が可愛げがあるだろう?君にそっく……ん、んんん。」



 母が父の言葉に目を細め睨み付けていた。

 どうやら父曰く、僕は母似らしい。兄は顔は父似だが、性格は厳格な祖父似らしい。



 「ところでフローから何の用事だったんだい?突然転移するから驚いたじゃないか!」



 魔力の強い母と自分には伝わっていたが、魔力の弱い父には伝わっていなかったようだ。

 フロー兄さんからの要請を話すと、普段ふざけてばかりいる父も流石に緊迫した表情を浮かべている。



 「……フローレンのところに行こう!今すぐ行こう!」と父が母に促し城壁を降りようとしていたところ、ざわざわと人が集まり始めた。



 『マクシミリアン皇帝陛下ー御到着ーー御到着ーー!!』



 帰城を知らせる鐘が鳴り衛兵が声を張り上げてマーク兄さんの到着を知らせた。


 普段鳴らない鐘は轟音となって城に響き渡る。その異様な音に貴族や騎士以外にもマーク兄さんに憧れる平民までも不安気に様子を伺っていた。

 僕も拳を握り、城門から向かってくる一台の馬車を見つめ喉を鳴らす。


 (えっっ……なん…で?なんでマーク兄さんは馬に乗ってないの?……馬車を使ったことなんてないじゃないか、、)


 僕の思っていることが伝わったのか、隣に立つ父と母も不安そうに手を重ねてその馬車を見つめていた。


 城内に続く頑丈な扉の先に兄の姿が見えた。

 蒼白く生気のないフロー兄さんの表情に緊張が走る。

 馬車が停車しても反応がない。何度目かのフロー兄さんの呼び掛けに答えるように“ガチャ”と馬車の戸開いた。



 「…………えっ?」



 馬車から出てきたマーク兄さんの腕の中には金色の女の子がいる。

 あんなに朗らかな表情をしているマーク兄さんは見たことがない。僕に見せる優しい表情とも違う。

 僕は知っている。だって、僕がランナに対してその表情をしているから。愛する人に向ける瞳、気持ちだから。



 (そっか、マーク兄さんも見つけられたんだね。愛する人を。ようやくマーク兄さんも密約から解放されるんだね。良かったね。)



 マーク兄さんは長年密約には悩まされてきたんだ。


 教皇側と密約を結ばなければならなくなったのは、マーク兄さんの祖父、前々皇帝の行いのせいだ。

 野心家で傲慢。野蛮で女狂いのだらしない堕落した男だったから……


 国民の生活を豊かにするのが一国の主というもの。

 しかし、引退しても尚、政に口を出し、毎晩のように舞踏会や晩餐会を開き国民の血税を湯水の如く使い豪遊していた。後宮には側室、愛妾や使用人という名の愛人を何百人と囲っていた。



 毎年上がる税金に、国民の生活は苦しくなる一方で働き手となる若い男は魔物退治に駆り出される。

 魔物退治には爵位を継ぐことのない次男や三男、そして平民たちも強制的に派遣されていた。

 騎士でもなく、剣を一度も持ったことのない平民や成人前の幼い子息の派遣は、死地に向かわせるだけだと貴族から批判の声が多く上がっていた。

 前々皇帝は粛清を行う。批判し異を唱える貴族は反逆者として爵位を剥奪し極刑に処した。

 税が納められなくなれば、既婚、未婚関係なく女、女児を税の肩代わりとして高級娼館と称した別名『帝のハーレム宮』に連れていかれ、皇帝の女にさせられていた。


 そんな王に反旗を翻し立ち上がったのが、マーク兄さんと神殿を治める先代の教皇である。


 このような悲劇が今後起こらないようにと国と教皇側と密約を交わした。魔術契約なので密約破棄は簡単に出来るものではない。




 特に王族の婚姻には制限をつけた。




 ・一夫一妻とする。


 ・婚姻を認められる歳は二十歳とする。


 ・婚姻は伯爵家以上の上位貴族の出身でなければならない。


 ・恋人、愛人を作ることは許されない。体の関係も然り。


 ・万が一妃との間に男児が生まれなければ、愛妾を上位貴族の令嬢の中から一名指名する。


 ・愛妾に子が出来れば、その子を妃の子として育てる。皇子を産んだ愛妾は他国に居を移し、如何なることがあろうとも我が国に足を踏み入れてはならない。

 

 ・三十歳の誕生の日に婚姻が結ばれていなければ、国内筆頭の家柄の令嬢と婚姻を結ぶ。

 成人の儀(16歳)で婚約者候補としての婚姻密約の発動を開始する。

 婚約者候補が成人前であればその者が成人を迎えた日に密約発動となる。

 

 ・密約発動前に婚姻した場合は全ての密約は解除される。


 ・婚姻を結ぶ相手が現れた際には、『永遠なる指輪』の魔法具を使用し、皇妃に相応わしい令嬢であるかの真偽を問う。認められれば婚姻の義を行う。

 指輪に認められれば教皇であっても婚姻破棄は出来ない。婚姻後不義を犯した場合は指輪が制裁を下す。


 ・その他の事由により密約解除は教皇の判断により決定される。

 



 神殿を通した密約解除はとても厄介だ。教皇の存在は神の使いといったところ。神殿は独立した機関になる。

 帝国内、外にも大多数の信仰者がおり、どの国にも属せず対等な立場にある。年々その発言権も増している。

 皇帝、国王であっても手が出せない巨大な組織になっていた。



 特に現教皇は人気は凄まじい。特に女性に……

 歴代教皇一の美貌の持ち主で、長く真っ直ぐな白銀の髪にダイヤモンドの輝きを閉じ込めたシルバーグレーの瞳。物腰は柔らかで、優しく穏やかに微笑みを絶やさず、人々を惹きつける妖艶な美男子である。


 若くして聖職者の長となった美しすぎる教皇は神々の化身と呼ばれ絶大な支持を受けている。

 強力な光魔法を保持していることから神の化身などといわれている。

 国々を護り支えているのは各国の王ではなく教皇であると密かに言われている。



 教皇の光魔法などマーク兄さんの能力に比べれば足元なも及ばないのに……。


 

 最近では、一部の熱狂的な信者が各地に配置され《教皇様のお話を聞かないと神々の怒りが君たちを襲うであろう》などと脅しめいた活動をしている組織も増えている。

 力を持ちすぎると良くない考えを働かす者が増えるのはどの時代も変わらない。


 年々帝国内の神殿の発言力が増してきていて、皇帝支持者の男性陣が目を光らせて注視している状態だ。

 密約解除は神殿を破壊すれば一番手っ取り早いのだが、、、教皇支持者の帝国の女性たちが許さないだろう。そんな暴挙にでれば反乱を起こしかねない。

 ある意味、帝国民女性がほぼ全員人質になっているといってもいいだろう。


 母は昔から物凄く教皇や神殿を毛嫌いしている。

 教皇は清廉などではなく、腹黒く闇が深い。皆騙されていると常に警戒をしている。

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