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《18》強面皇帝と前々皇帝2

 カルロスのご正妃として慎ましく生きてきたフレシア太皇太后は真面目な女性だった。

 結婚当初から続く女狂いの夫に嫌気が差し放任してきた。息子のヨハネスを皇帝にすると念書を書かせていたから。

 愛する息子に政権が渡ってこれからは穏やかに暮らせるのだと思って歓喜していた。

 しかし引退しても尚、絶対的な権力を持ち身勝手に振る舞う夫の暴君振りに頭を悩ました。

 懸命に国を立て直そうと頑張る息子夫婦を支えながら、夫の不始末を収める日々が続く。心を壊してしまった息子夫婦に代わり、孫のマクシミリアンに教育を施し皇太子として立派に立てるように奮闘した。

 弟のボルジア侯爵もマクシミリアンの皇位継承を叶えるために夫に従う振りをしているだけだと信じていた。

 しかし、思いがけず流れ込んで来た皇帝代理の職を任されたことにより自己利益に走った。

 夫も弟も信用できないと内密に反皇帝派に近付き協力を求めた。


 マクシミリアンを皇太子に立たせる手筈が整った矢先だった。



 カルロスは突如皇太子には産まれたばかりのレイアとの子を指名すると宣言し、アントニオが成人するまで後継としてレイアの父親の男爵と自分が務めるとまで言い始める。

 カルロスはレイアとの間に授かった妃似の息子アントニオも異常なほど溺愛した。レイアは特別扱いされたのち更なる欲がでた。

 “皇族の血を引く自分の息子を皇帝にしたい” “皇帝の母” “皇太后の立場が欲しい”と。


 いくらカルロスに気に入られていようが、レイア実家の身分が低いことや正妃の産んだ皇子が既に皇帝の座にいること。

 その皇帝の息子のマクシミリアンが優秀で太皇太后の後ろ盾があること。

 年齢的にも皇太子に相応しい人物であることから、次期皇帝の座にはマクシミリアンを推す貴族が圧倒的に多かった。


 流石にボルジア侯爵もボルジア家の血を引くマクシミリアンを皇太子にと推した。

 下位の男爵に自分の地位を揺るがされるような事態になってしまうのではと焦りをみせた。

 一先ず皇太子候補としてこの継承問題を有耶無耶に話を流した。

 

 そもそも、レイアのことを支持する貴族は少ない。

 学園時代の問題行動、見習い侍女の際の怠慢な態度、加えて側妃になると我が儘で自分勝手な性格が露になり、貴族も城勤めの者も支持する訳がない。

 皆は年老いたカルロスの戯言と笑った。



 そしてカルロスが末の皇子を皇太子指名をすると宣言してから四年後。アントニオは四歳の誕生日を迎えた。


 男の寵愛は儚いもので日が立てば飽きられるもの……

 あんなに寵愛を独り占めしていたレイアのことも、溺愛していた末の王子の誕生日も忘れ、成人前の若い令嬢に現を抜かし新たに第九側妃として迎え入れた。

 自分の地位を脅かされるかもしれないと焦ったボルジア侯爵が、カルロス好みの見目の麗しい自分の孫をあてがった。

 その姿は若かりし頃のカルロスのご正妃フレシア太皇太后に生き写しであった。

 フレシアの容姿に惹かれて婚姻したカルロスは初恋を再燃させた。


 レイアは使っていた上等な部屋を追い出され、その部屋を新しい側妃に与えた。

 自分以外に入れ込んでいるカルロスの姿を目の当たりにして怒りに震えた。

 それも口煩い大嫌いなフレシア太皇太后に似た娘に奪われたことに底知れぬ殺意が芽生える。


 アントニオは指名を受けたのにも関わらず継承の儀は先伸ばしにされていた。アントニオが皇太子になることはないと皆が承知のことである。

 レイアはカルロスに忘れられた残念な側妃と皆に囁かれている。自称筆頭皇太子候補とその惨めな母と笑いの種だった。


 新たな男児が産まれれば、カルロスはその子を指名するかもしれない。マクシミリアンを皇帝にという声が未だに多い。特に国民の支持は絶大で、レイアを追い詰めていく。


 これ以上ライバルとなる皇家の子供が産まれないようにレイアは夜伽を受ける側室らに子流し薬盛って子供ができないなように謀った。


 更にレイアは皇家の血を受け継ぐカルロスの子供達にも暗殺の手を伸ばした。男爵と兄を使って……


 アントニオには異母兄姉たちが沢山いる。

 他の異母兄姉はヨハネス(異母兄)が皇帝になった際に皇位継承権を放棄し臣下に下っていた。

 しかし、いつまたカルロスの気まぐれで皇位継承権の放棄を撤回しお気に入りの異母兄姉を皇太子に……と宣言するかもしれない。

 もしくは、愛娘を女帝にと突拍子のないことを言い出すかもしれない。

 そのような戯言をほざく前にと、アントニオの異母兄姉を次々と毒を盛り殺していった。マクシミリアンを可愛がってくれた穏やかで優しい叔父や叔母。マークと歳の近かく兄姉のような大好きな叔父と叔母。生き残った者はいなかった。


 確実にレイアの息子を皇帝の座に付かせるためにとアントニオの義兄弟を殺し、次なるは、継承権のあるマクシミリアンと皇帝、産まれたばかりの幼いマクシミリアンの実弟にも暗殺の手を伸ばし実行に移した。


 これ以上放置出来なくなったマクシミリアンは、先頭に立って祖父を太々上皇の地位から引きずり下ろす為に反旗を翻した。


 元凶となったカルロスは孫のマクシミリアンの手により葬られた。


 マクシミリアン率いる文武軍と教皇率いる神殿が手を組んだ結果、ゴールデンロック大帝国に平和な世が訪れた。



 その後、関わりのあったカルロス派の貴族は幽閉又は流刑。ボルジア侯爵家は爵位没収の後、生涯罪人として監禁された。


 レイアを除く側室らは平民となり国外追放。その実家も然り。

 レイアの実家はお取り潰しとなり、皇族暗殺を謀ったレイアと両親、兄は最も罪の重い斬首刑となった。親戚縁者は国外追放と処分が決まった。


 まだ幼いアントニオは辺境伯領で平民として生涯監視付きの生活を強いられている。自分の出生は知らされず、養父母となった家で幸せに細々と暮らしている。

 アントニオを皇帝にと声を挙げる者を危惧して、流行病を患い幼い生涯を終えて亡くなったと発表した。


 そして、フレイア太皇太后は国の為に全身全霊をかけ務めていたが、実弟、夫の不始末、夫の愚行を見て見ぬ振りをした自身の罪を受け止め、辺境の地にある教会に自ら生涯幽閉されることを望んだ。

 現在は修道女として帝国民の幸せを祈り、日々行き場の失った者を支える奉仕活動に勤しんでいる。



 別城(後宮)のあった場所は更地にした。

 現在その場所には美しく壮大な庭園が広がっている。



 この出来事がありマクシミリアンは母親と祖母以外の女には嫌悪するようになり、女性嫌いの今に至る。

 

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