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《15》強面皇帝と帝国宰相2

 


 「はぁぁぁーーー……」



 部屋から遠ざかっていく母親の皇后を確認すると、整えてもらった燕尾服を荒々しく脱ぎ捨てた。

 マークはいつもの通り黒い軍服に袖を通し、大剣を腰に携えると乱暴にガシガシと髪を乱し瞳を隠した。

 


 行きたくない。帰りたい。嫌だ嫌だと駄々をこねるマークを宥めながら、、、

 なんとか会場の登場扉まで連れて来た。


 皇子専任護衛を任されていた近衛第二隊長レックスと副隊長のルシアン、そして、宰相補佐兼皇子秘書官の私も一緒に入場しなければバックレるとマークは脅す。

 仕方が無く四人で入場を果たす。



 会場は『シーーン』と静まり返り皆が息を飲む。この場には相応しくない帯剣の擦れる音は、マークが歩数を進める度にガチャ、ガチャリと会場内に鳴り響いていた。


 皇后は怒りでなのか真っ赤な顔で頬を膨らませて、不満の眼差しを向けている。

 そう言えば……剣は絶対に持ち込まないようにと口を酸っぱくして仰っていたような……

 マークの剣は普通の騎士のニ倍、いや三倍あるだろうか。その帯剣姿は周囲の人からしたら威圧感で恐ろしいらしい。格好良さの方が勝つはずなんだが……

 


 先頭を歩くマークが「臭い、臭くて鼻が曲がる、帰りたい、なんで俺が……女は嫌いだ。面倒くさい。魔物相手の方がまだマシだ」などとボソボソ文句を呟いていた。


 きらびやかに飾る令嬢たちから、様々なきつ~い香水の匂いが混ざりあって、風に流れて私たちのいる上段にまで漂っている。

 戦場にいるときよりも表情が強ばり不快感を全面に出てしまっている。それは全身から漏れているようだった。



 「マーク顔怖いよ、柔らか~く、柔らか~く」とレックスが言う。


 「やはり前髪を上げたほうが良かったか?」と私は呟く。


 「そこがマークのカッコいいとこだろ?男らしくて!」とルシアンが笑う。


 

 マークは私たちのやり取りに呆れたように溜息を吐いた。

 私は広場にいる者たちに目を向けた。


 そこにはハッキリと二つに分かれた反応があった。



 一方は、憧れ、慕っている男性陣の暖かい眼差し。

 もし自分の娘や姉妹が見そめられたら……

 義息、義兄弟になってしまうかもしれないという未来の喜びを夢見て高揚している。



 もう一方は、恐怖で怯え、厳つい体と醸し出す威圧感に耐えられず膝をつき、尻餅をつく。

 その場から動けなくなる女性陣の震える体と青白い顔。



 そして、、、皇子の登場を恭しく待ち望んでいたご令嬢方が、次々と気絶していく異様な現象が起こってしまった。付き添いの母親らも同じく……。



 お妃候補選抜舞踏会は開始から十分もしないうちにお開きになってしまったのだ……残念、無念。

 皇后さまの哀しげな表情は今でも忘れられない。



 それからというもの、皇子に関する奇妙な噂が拡がっていった。




 『その風貌は鬼神のようで、魔王のようで、人ならざる孤高の王。』


 『眼光鋭く目を合わせると石化する。魔力で塵化させ跡形もなく昇天させる戦争強。』


 『恋人、愛人、お妃さまの地位は魅力的だか、皇子殿下の愛は欲しくない。だって、恐ろしすぎて近寄ったら最後心臓が破壊されて死んでしまうから……』


 『ご尊顔を拝んではならない。声を聞いてはならない。お話してはならない。自分の身を守るためにも……近づいてはならない。』




 などとマクシミリアン接近警報が女性たちの間で瞬く間に拡がって今に至る。

 皇帝陛下になった今でも。変わらず。




 だから、そんなマークには女の影は一切なかった、、のに……!?


 女には興味すらなかったはず、、なのに……!?


 女に触れるなんて未知の領域だった、、はず……だよな……?!!


 そんなマークが女性を大切そうに抱き抱え、朗らかに表情を緩めて愛おしそうに見つめる瞳は甘い……だなんて。。。嘘だろ。


 何度も目を越すって見ても蕩ける瞳と口元の緩みは変わらない。

 信じられない!あれがマクシミリアン?!私の親友のマークなのか?!信じられーーん!!?


 周りの皆も何度見しているのだろうか。その場にいた皆は驚きを隠せず唖然とするしかなかった。


 レックスだけは主の初めて来た春に、喜びを露わにして涙ぐみながら破顔し笑みが溢れていた。



 《「…‥マーク!遂に……今日は徹夜で祝杯だ〜!!バンザーイ!!!」》と囁きが聞こえてきたのだった。



 その言葉を聞いて平静を取り戻した。



 《そうだよな。お祝いだよな!最高級の酒を準備だ!!》公爵邸の秘宝酒と呼ばれる酒で乾杯だ!と頭の中は喜びでいっぱいになっていた。



 歩き出したマークの後ろでレックスと喜びの握手をガッチリ重ね合わせ頷きあった。


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