《11》強面皇帝と近衛騎士団総隊長1
『『マクシミリアン皇帝陛下』』
その名前を聞いただけでぞくぞくする。
我らが敬愛する最強の武人でありゴールデンロック大帝国の皇帝陛下である。
男として生まれたからには“ 強く 気高く 逞しく ”をモットーに実直で正義感の塊のような優しいあの方のような男でありたい。
◇◆◇◆◇
私はゴールデンロック大帝国、近衛騎士団所属 総隊長レックス・バーナード。バーナード公爵家の当主である。歳は30。
マクシミリアン皇帝を敬愛する会・会員番号NO.1。
会の会長職を任されている。
因みにNO.2の副会長はこの国の宰相フローレン公爵。
NO.3は同じく副会長のルシアン辺境伯。
我々四人は幼馴染といった深〜い関係なのである。
王都の男という男は会員だ。
地方の男も最近会員になりたいと本部の私のところに問い合わせがあとを絶たない。会員数は増加中である。
会員だと一目でわかるように会員限定の会員証を作った。胸元に光るエンブレムブローチが会員の証である。
「成功と繁栄」をもたらし最強の厄除けといわれる黒翡翠を土台に、「天の神が宿る石」として危険や邪悪なエネルギーから持ち主を守り勇気と希望、幸福をもたらす石といわれるターコイズの空色の石を使用したもの。
本日も会員同士の秘密のやりとり……エンブレムブローチに自身の拳をあてて無言の挨拶があちらこちらで交わされている。
陛下の色を身に付けられる喜びを噛み締めて、““我が陛下の安寧を!””と誓い合ってそれぞれの持ち場へ向かっていく。
マクシミリアン愛が溢れに溢れ、もう既に溺れている。
そんな私は常時陛下の後ろに立つ権利を賜っている。我が家が代々、皇帝陛下を護る騎士の家系であることに感謝しかない。
『ご先祖様ありがとう!!』
一日中側で過ごせる喜びを与えていただいているのだ。
そう、まさに天職だ!!
盾でありながら陛下の方がお強いのだが、何かの時には身を挺してお護りするのだと決めている。
我が命はマクシミリアン皇帝のもの。
本日も陛下の護衛を完璧に勤しむ。
朝議が終了し、先日の大雨で被害を受けた町の視察について話し合いをしている最中にそれは起こった。
突然ドンドンと重厚な扉をノックする音が鳴り、警戒を強める。
こちらの返答を待たずに「てーぃ、てぃこっ……て、帝国の太陽にさっ、、幸あらんことをぉーーう……」と吃りながら伝達部次長のテヘラン伯爵(43)が、ぺこりと軽~い挨拶をして入室してきた。
テヘラン伯爵は最近、父親から爵位を引き継いだばかりの中年の小太りな男である。
魔導師として地方の研究所で魔力研究に長年職を置いていた人物だ。新たな伝達魔法の式を生み出し活用させた人でもあり、国にとって必要不可欠な存在だ。
次期大臣のポストを約束された秀でた才能を持っている。変わり者と称されていて人付き合いは余り得意ではない。
(我らのマクシミリアン皇帝になんたる無礼!深く頭を下げ、ハキハキと、これ絶対!!ちゃんと挨拶しやがれ!!)と額に青筋を立てて睨みを効かせる。
「……ひっっ。」と恐怖に身を震わせたテヘラン伯爵は気弱な男。
「レックス、、顔が恐いぞ……。テヘランが怯えているじゃないか。挨拶なんてどうでもいいだろ?慌てて入室するほど急ぎの要件であると察してやれ。」
(はぁぁぁ~。優しいなぁ。マークさまの叱責☆いただきました~!あざーす!!伯爵のおかげだ。今の行動全てを許そう、ありがとう!!)
「はっ。失礼いたしました。」緩む口元がバレないように眉間のシワを濃くし返事をした。
テヘラン伯爵は「私また何かしたのかも」不安そうに下を向いていた。溢れだす大汗を拭くようにとハンカチを渡し気遣ってくれたのは、他でもない皇帝だった。
マクシミリアン皇帝は責めることも嗜めることもしない。
そればかりか、眼光鋭い恐怖の総隊長から守ってくれる優しさ。城務めになってから、陛下の人となりが素晴らしいと感じ、何かと声を掛けて気遣ってくれる人柄の温かいこと。
テヘラン伯爵はキラキラ瞳を輝かせて、まるで恋する乙女のようだ。““マクシミリアン陛下をお慕いしています!””そんなオーラが溢れている。
(ほぅ……また一人、陛下愛に目覚めし者を発見。伯爵も心を奪われたか。そりゃそうだろう。マークは最高の男だからな。美しい陛下の空色の瞳で見つめられたら堕ちる。惚れるしかないだろう。
ふむ……テヘラン伯爵は会に入会していなかったな。あとで入会手続きの案内を送るか。会長独断で入会の許可をだそう!あの頭脳はマークの為に未来永劫使っていただこうか!)
また一人マクシミリアン陛下教信者を得てしまったと、斜め横に立つフローレンと満足気に頷きあった。
テヘラン伯爵は辺境伯領から援軍の要請を受けたことを伝えた。
隣国のリオジェラテリアが不穏な動きをしていると報告を受けたのは三日前のこと。
念のため、戦争準備の指示が出され、それに備えた準備をしていたのだが……
前触れのなく隣国は国境付近に五万の兵を配置し、更に王太子を除く四人の王子が指揮をとっているとのことだ。あちらの本気度が伝わってくる。
私の知っているリオジェラテリア王国は、戦いを好まない穏やかな王国であると認識している。
なのに……何故?何が起こっている??
いくら考えても、その理由がわからない。
マークの表情は強張っていて、何かを考えている。
今から辺境伯領の国境に援軍を送ったとしても、休みなく走って一日は掛かる。相手の五万の兵に対応できる数を送るとなると、出発まで半日。
ルシアンの騎士団はかなり強い。しかし時期が悪い。
一週間前からに騎士団の大半が魔物退治に出払っていて戦える人数は千ほど。この人数の差は明らかで、無敗の辺境伯騎士団であっても厳しい戦いになる、全滅も考えられる。
チラリと陛下をみれば、急に席から立ちあがりフローレンに「任せろ」と一言放って部屋から退出していった。
護衛として慌てて追いかけるが、陛下の足の長さには追い付けない……愛馬のいる厩舎に入ったのを確認し、ふぅ、追い付いた~と一息つくと同時に、愛馬と共に転移魔法を繰り出しあっという間に厩舎から姿を消してしまった。




