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《10》強面皇帝と重傷説

 マクシミリアンは転移魔法で城に戻ろうとしていた。


 しかし、それを止めたのは愛馬メリルリンだった。



 『ねぇ、魔法はやめた方がいいんじゃないかしら。』



 「マリー、なぜだ?」



 マクシミリアンの魔力によって意識が奪われているその状態で、新たな魔力の影響で体調が悪化する可能性があると教えてくれた。


 マクシミリアンの魔法能力は特殊で、魔力持ちにとって魔力と体力を吸い取ってしまう。言わば、魔力欠乏症の状態に陥る。

 一方、魔力無しの者には魔力という異物を注がれ体力を極限まで奪ってしまう。言わば魔力酔いというやつだ。


 特に今回は(じか)にマクシミリアンの魔力を受けてしまった。

 その衝撃は凄まじく、魔力は枯渇し、どのぐらい体力が残っているのかさえわからない状態なのである。

 微量に残っている魔力を吸い取るようなことをすれば、最悪命を落とすかもしれない。



 ということで、馬車を使っての帰城に変更した。


 それでも、いち早く帝国一の医者に見せなければならないので、辺境伯の馬車をメリルリンに取り付けた。

 本来なら1日かかるところをメリルリンの脚だと数時間で到着できる。


 ルシアンは最上級の馬車を準備してくれた。

 中は重病人でも体に負担が掛からないように保たれていて、かなりのスピードが出たとしても揺れはなく快適である。

 御者をつけなくても知力の高いメリルリンであれば問題なく城まで連れてってくれる。

 そのため、マクシミリアンは横抱きにすると、優しく支えて馬車の中に乗り込んだ。



 いくら待っても馬車から降りてこない主人に対して、『嘘でしょ、あなたも乗るの?誰が御者をするのよ。全てをわたしに任せるなんてひどいわ!』なんて嫌みを言われたけど、側で状況を把握、確認していないと不安で仕方のない気持ちになる。だから乗るの一択。


 『ぼく、つかれてとべなーい。どうしようー』と言うポポはメリルリンの馬上に乗り一緒に城へ。御者はポポに任せよう。




 走り続けること三時間。ようやく城下に入った。



 人々は、猛スピードで走り去る奇妙な馬車に釘付けになった。

 巨大な黒軍馬の上に悠々と乗る巨大鳥……

 それらに引っ張られるように走る豪華すぎる馬車……

 平民はあんぐり口を開けている。

 帝国軍所属の騎士職にある男たちはその馬車の馬をみて気付いてしまった。

 城下の騎士や衛兵たちは徐々にその異変にざわつき始めていた。



 「あの馬は、メリルリン嬢ではないか!」

 「陛下の愛するお馬様だー!」

 「なぜ、、馬車……?陛下は?」

 「陛下はどちらにいらっしゃるんだ?!」

 「陛下がメリルリン嬢に騎乗されていないなんて……」

 「我が国の勝利だと言っていたじゃないか!」

 「……ま、まさか、、陛下は怪我をされたのか……」

 「だから、馬車で……帰られたと……」

 「重症……な、の、、か……うそだろ……」



 「「「へーいーかぁぁーーどうかご無事ていてくださいぃ!!!」」」



 勘違いが勘違いを呼び、瞬く間に国中の兵に““マクシミリアン皇帝陛下重症””と拡散されていく。



 『……あぁ〜あ。わたしは知~〜らない。ご主人様がわるいと思うわ』

 


 馬車の中は防音、防御魔法で外の様子は感じ取れない。

 勿論こちらからの伝達も遮られているから情報は皆無。

 状況を把握している唯一の存在ルシアンは、隣国リオジェラテリアに使者として赴いているため、多忙により伝達魔法はスイッチオフモード中。


 それは城で待機している宰相初め大臣、貴族にも伝わっていて……大変な騒ぎになっていた。



 「フローレン殿、、公爵ーー宰相殿!!お聞きになりましたか!陛下が負傷したとは本当なのですか?!」


 

 大臣たちが慌てた様子で宰相のフローレンのいる執務室に集まってきた。



 「陛下からの帰城の連絡と関係のない者を一名巻き込んでしまったからと医者の準備の指示を受けとりましたが、陛下の負傷は聞いておりません。しかし、いつもなら帰城の連絡を受けて、数分後には戻られるのですが、未だにお戻りになられず……幾度となく、こちらから陛下に呼びかけても現段階で返答が得られないのです。」



 宰相は集まった方々に丁寧に説明していく。



 「さすれば、、やはり陛下の御身に何かが起きている……ということになりますかな!?」 

 「我々に心配を懸けぬよう、関係のない者の負傷とおっしゃったのか?」

 「……宰相殿、陛下を乗せた馬車が間もなくこちらに到着するのであれば、全勢力をあげてお命をお救いせねばなりませんな!」



 宰相は、皆の言葉に落ち着きを取り戻した。



 陛下と連絡が取れなくて、、、重症であると情報が入り、、、冷静ではいられなかった。

 幼馴染みとして、友人として、最側近として、尊敬する一人の男として、、陛下がいなくなってしまう=死を意味する。側で過ごしてきた日々が頭の中を走馬灯のように駆け巡っていく。


 

 (そうだ!皆の言うように陛下をお助けすることのみ考えよう!私がしっかりしなければ!)



 宰相は事細かに指示を出していく。指示に従い各々が陛下を迎える準備に取り掛かった。


 医者の手配は整っている。

 魔力異常が起きている可能性がある。魔導治療師を手配しておこう。

 陛下をすぐに運べるように寝室は問題なく準備させた。

 あれやこれやと準備を整え、あとは陛下の到着を待つのみである。



 「「宰相殿、陛下が、マクシミリアン皇帝陛下の馬車が間もなく到着致します!お急ぎ城門までお越しくださいませ!!!」」

 


 宰相補佐官が慌てた様子で宰相執務室に入室してきた。普段ならば、ノックのない入室は叱責対象なのたが、今はそれどころではない。


 上着を乱暴に羽織ると足早に執務室を後にした。


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