69. クロトは 防具を 手に入れた!
日曜日が連休の中日だと影薄くないですか?
……はい、更新遅くなってしまってすみません……。
ゴウタさんの後をついていくこと暫く。
「ここだ。」
そう言って立ち止まったゴウタさんに続いて俺も足を止め、店を見る。
「『サーラ防具店』……。」
当然と言えば当然だが、知らない店である。
「ここがゴウタさんの言う”良い店”なんですか?」
「まぁ、良い店というか……嫁の店なんだがな。」
照れ隠しをするように頬をかくゴウタさん。
「サーラ、いるかー?」
店に入るゴウタさんに続いて俺も店の中に入る。
店内には防具を着せられたマネキンが立ち並び、所狭しと武器が置かれていたゴウタさんの店とは反対に、よく整頓されていた。
「はいはい今行きますよ……ってアンタかい。珍しいじゃないか、この時間に来るなんて。店の方はいいのかい?」
そう言って現れたのは、小柄で体格のがっしりとした女性。
肌は日焼けをしたように焦げていて、柔和な笑みを浮かべていた。
(へぇ、地人族か。リアルだとより小柄に感じるな。)
地人族は、分かりやすく言えばドワーフのような種族だ。
ファンタジーではお馴染みの種族だが、この世界での彼らも例に漏れず手先が器用な人が多い。
「あぁ、店の方は大丈夫だ。それよりも紹介したい奴がいてな。」
そこでゴウタさんは俺の方に目線を向けた。
「どうもこんにちは、クロトです。」
「はいこんにちは。……それにしてもアンタが紹介してくるなんてね。」
「まぁ色々あってよ。なんでも、あの『ガートラ大ダンジョン』に皮鎧で行ってるらしくてな。」
「ほぉ、それはまた……。お兄さん、もしよかったら今使ってる防具を見せてもらってもいいかい?」
「分かりました。……どうぞ。」
俺は言われた通り普段使っている皮鎧を取り出して、サーラさんに渡す。
「……見た目は何の変哲もないただの皮鎧だね。それじゃちょっと調べさせてもらうよ───『鑑定』」
するとサーラさんは頭にかけていたメガネを装着し、スキルを発動した。
「───! こ、これは……!」
「どうした? 実は強かったとかか?」
「いいえ、その逆ね。……お兄さん、本当にこんなのでダンジョンに行ってるのかい?」
「えーっと……はい。」
……うん、分かっていたけど凄く気まずい。
サーラさんの「お前マジか」っていう視線がこれでもかと体に突き刺さっているのをひしひしと感じる。
「……そんなにか?」
「アンタも見てみれば分かるよ。」
サーラさんからメガネを受け取ったゴウタさんが同じように「鑑定」と唱える。
「……おいおい、おいおいおい。」
鑑定結果を見たであろうゴウタさんが、ゆっくりとメガネを下ろす。
「……|ステータスの補正がない《・・・・・・・・・・・》装備なんて初めて見たぞ。」
そう、今まで俺が使っていた皮鎧───通称「鎧モドキ」には、本来どんな装備にもあるはずのステータスの補正がない。
『トリワル』において、防具と普通の服の違いはこのステータスの補正があるかないかで判断する。
言わずもがな、補正があるのが防具で、ないのが普通の服である。
では、この鎧モドキが普通の服なのかと言うと、それも少し違う。
確かに分類上は普通の服だが、見た目が鎧なだけあって多少の防刃・防弾効果がある。
故にこそ、「鎧モドキ」という名前が付けられているという訳だ。
閑話休題。
そんな、鎧なのか服なのか良く分からないモノを見た2人は、憐みの目で俺を見る。
「……もしかしたらこのお兄さん、騙されたんじゃないのかい?」
「……あぁ、そういうことか。そういえばDランクって言ってたし、あながち間違ってもないかもな。」
……あの、コソコソ話すのやめてもらってもいいですかね。
(声が小さくてよく聞こえないけど、その目で見られながら話す内容って絶対ろくなものじゃないでしょ。せめて本人がいないところでやるとかさ……。)
と、店内を見るフリをしながら若干傷付いていると、優しい笑顔で2人が近づいてきた。
「鎧……鎧? ありがとう、返すわねぇ。」
サーラさんから返された鎧を受け取ると、彼女は言葉を続ける。
「それで、夫から聞いたんだけどお兄さんダンジョン頑張ってるんだってねぇ。応援の意味も込めて、どれか好きな防具を1つプレゼントさせてくれないかい?」
「え、そんな……良いんですか!?」
「えぇ、もちろん。それが今使ってる鎧の代わりになればいいんだけど。」
……あれ、もしかしてだけどあの鎧を見せたことで同情されてる?
(いやまぁ、せっかく無料でくれるって言ってくれてるしありがたく貰うんだけど……なんか騙してる気がして申し訳ないな。)
せめてそこまで高くないものにしようと決め、俺は店内を見回す。
「……あれ、このお店って布を使った防具が多いんですね。」
「そうそう、私がそういうの得意でね。魔物の素材を使ってるから、どれも品質は保証するよ。」
10分後。
「それじゃあ、これをください。」
一通りの商品を見終わった俺は、1体のマネキンの前で指を指す。
そのマネキンは、上半身には灰色のフード付きマントに同色のチュニック、下半身は黒色の厚皮のズボンを履いていた。
動きやすさを重視した服装で、DEFとAGI《敏捷》に補正がかかると書かれている。
「これは全身でセットだから3割引きにしかできないけど……それでもいいかい?」
「はい、大丈夫です。」
「そうかい。それじゃあ会計はこっちだよ。」
そうして俺は会計をし、2人に何度もお礼を言って店を出た。
「いや~、思いがけなく安く買えて本当に良かった。もしまた何か必要になったらここに来ようかな。」
何はともあれ、これで少しはハクレシアにも顔を向けられるようにはなっただろうか。
「さて、明日に備えて必要な準備はこれだけじゃないからな。どんどん片付けていこう!」
そう意気込んだ俺は、日が暮れるまで王都のあちこちを回って必要なものを買い揃えるのだった。




