68. 自分を客観視するのって大事だよね
遅れました、すみません!
最深層への挑戦を明日に控え、今日は久しぶりのオフである。
王都に来てからの2週間弱、ダンジョン漬けの毎日だった。
この世界の人からしてみれば、ずっと働きづめみたいなものだろうか?
ゲームの延長線に感じている俺からしてみれば、働いているという感覚は全くないんだけども。
それに、ハクレシアからも特に休みたいとは言われなかったからな……。
とはいえ、戦闘では常に負担をかけてしまっているし、最深層に備えて装備を新調したかったので、今日は休みにしようと俺から提案した。
メインウェポンが魔法なので武器は必要ないが、問題は防具だ。
「現状、普通の服の上から初期装備の皮鎧を着ているだけっていう、あまりにも舐め腐った格好だからな。……あれ、もしかしてそのせいでハクレシアに気を遣わせてたり?」
……こういう時は逆の立場で考えてみよう。
俺よりも低いランクの魔法使いが仲間にいたとする。
そいつは初期装備のままで、魔法の威力は申し分ないが他のステータスはそこまで高くない。
さて、そんな奴が「無理してない? もうちょっと楽しても良いんだよ?」と言ってきたら俺はどうするだろうか。
「……うん、とりあえず一発殴りたくなったな。」
誰のために前張ってると思ってんだ、っていうね。
「俺的には問題ないと思ってても、大事なのは相手がどう思うかだもんな。……よし、その観点でも防具を探してみるか。」
見た目の印象の大切さにようやく気付いた俺は手早く支度を済ませて宿を出た。
それから時間は経ち、現在時刻は13時を過ぎたくらい。
俺は左手に久しぶりの肉串を持ちながら、大通りを歩いていた。
「流石王都なだけあって、店の数も多いし品揃えも豊富だな。」
デザイン性と機能性を兼ね備えたものも多く、見ているだけでもかなり楽しい。
「……まぁ、見ているだけしかできないとも言えるんだけど。」
その原因は、言うまでもなく先日のアレ。
あの後納品日が1回あったものの、そのお金の大半は消費の増えたポーションと生活費に消えてしまったので手元にはあまり残っていない。
「予算は5万D。これくらいあれば十分だと思ってたけど……ちょっと王都価格を舐めてたな……。」
既に5、6軒は見て回っているが、良いと思える物は大抵高い。
「部分部分で寄せ集めれば予算内に収めることもできなくはないけど……そうすると見た目がね……。」
俺1人であればまだいいが、今はPTを組んでいる。
女子の前でダサい格好はしたくないのが男子心というもの。
良いのが見つからなければやむを得ないが、それはあくまでも最終手段だ。
「安くて良いものを売ってる店がどこかにあればなぁ……あれ、この道見覚えがあるような……?」
考え事をして歩いていたせいか、気が付けば大通りを抜けて脇道に入っていた。
「……あ、思い出した。この先にゴウタさんの店があるんだ。」
ゴウタさんは、王都に来るときの馬車で乗り合わせたイカついおじさんで、この王都で武器屋を営んでいる。
王都に着いたその日に店に行ったが、結局それっきりになってしまっていた。
「せっかくここまで来たんだし挨拶しに行くか。もしかしたら良い店を教えてくれるかもしれないし。」
と、そんな下心も抱きつつゴウタさんの店に向かう。
「こんにちは~。ゴウタさんお久しぶりです!」
様々な武器が所狭しと並ぶ店内に入ると、店の奥に見知った人影を見つけ声をかける。
「おぉ、いつぞやの兄ちゃんか。暫く見ねぇから忘れられたのかと思ってたぜ。」
「すみません、ダンジョンの方にずっと籠りきりだったもので。」
「アッハッハ! 謝るほどのことじゃねぇさ! ずっとこの仕事をやってるとそういう奴は慣れっこだからよ。」
「……。」
明るい口調でゴウタさんは言うが、まだその感覚に慣れてない俺は思わず黙ってしまう。
「で、今日は何を探してるんだ? 前来たときはたしか……短剣だったか?」
「はい、そうですね。……ちょっと言いにくいんですけど、今日の目的は武器じゃなくて……その、手頃な価格の防具がないかなーと見て回ってまして。」
申し訳なさそうに俺が言うと、ゴウタさんは顎に手を当てて少し考え込んだ。
「……そういえば、前馬車に乗ってた時は服の上に皮鎧を着けてたよな。今は何を使ってるんだ?」
意外と記憶力良いんだなと若干失礼なことを考えつつ、俺は口を開く。
「えーっと……そのままです。」
「ん? そのまま? そのままってのは馬車の時から変わらずにってことか?」
「……はい、そうです。」
「……一応聞くが、兄ちゃんはあの『ガートラ大ダンジョン』に入ってるんだよな?」
「……はい。」
店内に気まずい沈黙が流れ、俺は思わず目を反らした。
「……はぁ。俺もそこそこ長いこと生きてきたが、これほど命知らずって言葉が似合うやつは初めて見たぜ。」
ゴウタさんは大きな溜息を一つ吐いて、呆れたような目で俺を見る。
(やっぱり、普通に考えたらそういう反応になるよな。俺だってそうなる自信がある。)
それからゴウタさんは少し考えたのち、手招きをしながら店の外に出た。
「あの、ゴウタさん……? 店の方は良いんですか?」
突然の行動に戸惑いつつそう声をかけると、ゴウタさんが振り返る。
「店の方は問題ねぇ。良い店を紹介してやるからちょっとついてこい。」
予定していたよりも長くなってしまったので2話に分割しました。




