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65. 40階層ボス戦

 ミストさんへの納品を終えた翌日。


 本日のダンジョン攻略は40階層のボス───『ジャイアント・ベアー』との戦いから始まる。


「体長は3メートルくらい。攻撃方法は突進や噛みつき、あとは二本足で立って腕を使った攻撃をしてくることもあるから気を付けて。」


「……分かった。」


「次に立ち回りに関してだけど、ハクレシアが前に出てボスと近距離で戦って、後ろから俺が魔法で援護するって形でいいかな?」


「……了解、それでいいよ。」


「よし、それじゃあ行こうか。」


 ボス戦前に簡単に作戦会議を行い、魔法陣(セーフティーエリア)の外に出る。


 これまで3回のボス戦ではお互いに1人で戦っていたが、中層以降はそう甘くはない。


 まぁやってやれないことはないと思うが、それだと時間がかかりすぎるし、何よりPTを組んでる意味がない。


 しかし、懸念点もある。


 それは、お互いにPTを組んで戦った経験がないということだ。


 いや、厳密に言うとハクレシアは昔はPTを組んでいたみたいだし、俺もゲーム内では野良・フレンド・NPC問わず数えきれないくらいPTを組んでいるので、全くの初挑戦という訳ではない。


 が、ハクレシアはここ数年はずっとソロでやっているらしいし、俺だってこの世界に来て生身でやるのは初めてだ。


 当然、不安がないと言えば嘘になる。


 一応、ここまでの道中では二手に分かれず一緒に戦っていたのだが、息が合わなかったりミスをすることがお互いにちょくちょくあった。


 因みに、この世界はゲーム同様、ダンジョン内での同士討ち───いわゆるフレンドリーファイアは起こらない仕様になっている。


 まぁ中には例外的にダメージを与えられるモノもあるのだが……それは今は置いておこう。


 それに、仮にダメージはなくとも爆風などの間接的な影響は受けてしまう。


 そのため、前衛は後衛との射線に注意して立ち回らないといけないし、後衛は前衛の動きを予測して攻撃をしないといけないことに変わりはない。


 また、それに加えてこのダンジョンでは地形にも気を配る必要がある。


 草原から始まって徐々に木の割合が増えていたフィールドは、この中層に入ってから完全に森の中になってしまった。


 まだそこまで木の密度は高くないものの、油断していると足元を掬われかねない。




 と、そんなことを考えていると、前を歩いていたハクレシアが足を止めた。


「……いる。」


「おっけー。それじゃあ作戦通り、暫くはハクレシア一人で相手を頼むよ。」


「……了解。」


 こうするのは、ハクレシアがヘイトを集める系のスキルを持っていないからだ。


 まぁ、ソロでは絶対に使うことがないスキルなので当然と言えば当然である。


 ハクレシアに一通りのバフを掛け、送り出す。


「よろしく頼むよ。」


「……ん。」


 木の陰から勢いよくハクレシアが飛び出し、それに気付いた熊(ジャイアント・ベアー)が唸り声を発する。


 さて、ここから暫くは観戦タイムだ。


 いくらハクレシアが強いと言っても、中層のボスは今までのボスとは格が違う。


 これまでは一瞬で倒せていたが、ここからはボスのHPがかなり増えていくのでそんなことには絶対にならない……はず。


「俺が戦闘に入るのはバフが切れる3分後くらいからかな。MP回復してからの方が絶対に良いし。」


 そんなことを呟きながら木の陰から顔を少し出し、戦いの様子を見る。


 ハクレシアの戦闘スタイルはこれまでにも何回か見た通り、短剣を両手に持った双剣士スタイル。


 対する熊は二足立ちになってパンチや叩きつけ、引っかき攻撃などを繰り出している。


「現状ではハクレシア有利って感じだな。」


 ハクレシアは熊にSTRで負けているものの、避けたり上手いこと受け流したりして一方的に攻撃を通している。


「『ステップスラッシュ』で引っかきを避けて背中に『5連斬』、振り向きざまの横引っかきを『リーブスラッシュ』で斬撃をその場に残しながら後ろに回避。『フェイントステップ』でタイミングをズラして『アクセルエッジ』で踏み込みつつAS(攻撃速度)にバフを掛けてからの『4連斬』───おぉ、『クロスエッジ』まで欲張って退避と。」

 

 いやー、立ち回りに安定感があるね。


 流石はソロでCランク冒険者をやっているだけのことはある。


「……これ、時間はかかるかもだけど俺いらなくない?」


 熊の方もHPが減っていくと違う行動を取るようになって多少難易度は上がるけど、この感じを見るにそこまで苦戦しないで倒しそうだ。


「こう見るとやっぱ頭一つか二つくらい抜けて強い気がするなぁ。……まぁ、この世界の平均を知らないんだけどさ。───これが普通ってことはない……よな?」


 この世界がゲームと全く同じでないことは分かっているが、この世界の一般人の強さのレベルは全くの未知数だ。


「こんなことなら他の人と適当にPT組んでおくべきだったか? いやでもそうするとスライムゼリーとかに支障が出てただろうし……。」


 いつかはスライムゼリーの入手法を世に広めるとしても、今のところは企業秘密で利益を独占させてほしい。


「それに、これだけ強いならどうして俺をPTに誘ったのかも謎なんだよな。時間はかかるだろうけど、わざわざトラウマを我慢して人と組むこともなかっただろうに。」


 これまでに何度も疑問に思ったことだが、やはり答えは出ないままだ。


「っと、そんなことを言ってたらもうそろそろ3分か。バフを掛け直して───」


 一通りのバフを付与し、MPを回復した後に自分にも同様のバフを掛けていく。


「───よっし、それじゃあ俺も行きますか!」




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