59. 姫プは嫌だ
今回短めです。
───ピピィー!
「お、見つかったか。それじゃ、《ファイヤーアロー》」
「ウキ……」
火矢を放ち、最後の一体だった『レッサー・モンキー』にトドメを刺す。
辺りを見回して散乱している素材を回収し、笛の鳴った方向へと駆ける。
今いる21階層からは背の高い木も見られるようになり、フィールドのあちこちに小規模の森が形成されている。
そのため、今までやっていたような空中歩行での探索から、木の上を伝って探すスタイルへとチェンジしている。
地面を歩くよりはエンカウント率が下がるとはいえ、今のように戦闘を余儀なくされるので、一階層にかかる時間が増えてしまうのは少し痛い。
まぁ、この辺りの魔物なら俺のレベル相応なので経験値的にはそこそこ美味しく、レベリングを兼ねているのだと考えればそこまで悪い気はしない。
約15分後、道中にエンカウントした『レッサー・モンキー』、『レッサー・ウルフ』、『レッサー・ボア』を十数体倒し、俺はようやくハクレシアの下へと到着した。
「……ちょっと、遅くない?」
すると、ハクレシアは開口一番にそう言ってきた。
……まぁ、最初に笛鳴らしてから15分以上経ってるんだからそりゃそうなるわな。
「それはごめん。でも、俺AGI遅いからさ。道中で魔物と遭遇すると逃げ切れないんだよね。」
申し訳ないとは思いつつ、あらかじめ用意していた言い訳を口にする。
「む……それなら仕方ない、か。」
そう言うハクレシアは口では俺の言い分に理解を示しているものの、半信半疑といった様子で俺を見ていた。
実際のところ、ハクレシアの読みは当たっている。
『ロックストンゴーレム』と戦った時に使用した、AGIを上昇させる2種類のバフを使えばここら辺の魔物は余裕で撒ける。
それ以外にも、緊急時に備えて新しく覚えた魔法もあるので、それらを使えばここまで合流に時間がかかることはなかっただろう。
にも関わらずそうしなかったのは、単純にレベリングをしたかったからだ。
ここまでの2回のボス戦でハクレシアのレベルが想像以上に高い可能性が浮上し、このままではおんぶにだっこでの攻略となってしまう。
それは何と言うか、プライド的に許容できない。
そんな訳で、攻略速度を落としすぎない範囲でコソコソとレベリングをすることに決めたのだった。
閑話休題。
それからも俺たちは階層更新を続け、日が暮れ始める頃には30階層へと到着した。
「今日はここで終わりかな。」
「……そう、ね。じゃ、いつものように支援魔法を───」
「───ちょっと待って。それなんだけど、今度は俺が戦ってもいいかな?」
これまで同様に戦おうとしていたハクレシアに待ったをかけ、そう申し出る。
「今まではずっとハクレシアだけに戦わせちゃってたからさ、今度は俺にやらせてほしいなって思うんだけど……どうかな?」
両手を合わせてお願いすると、ハクレシアは少し考えた後に口を開いた。
「……まぁ、今日はこれで終わりだし、いいよ。1人で戦いたいの?」
「ありがとう! 別に1人で戦いたいって訳じゃ……いや、まぁそんなところかな。」
本当は任せっきりなのが嫌なだけだが、それは言わなくてもいいだろう。
さて、ここのボスの名前は『ビッグ・モンキー』。
こいつは『レッサー・モンキー』をそのまま大きくしたようなやつで、『レッサー・モンキー』同様に長い手足を使って木の間を素早く移動しながらヒットアンドアウェイの動きをしてくるのが特徴だ。
また、子分の『レッサー・モンキー』数体と一緒にスポーンするため、連携攻撃にも注意する必要がある。
俺はゲームでの『ビッグ・モンキー』を思い出しながら、INTとAGIにバフをかける。
大丈夫、俺の今のステータスならバフ込みで対等以上に戦える相手だ。
見られている手前、手の内を全て曝け出す訳にはいかないが……まぁ何とかなるだろう。
「それじゃ、行ってくる!」
そう言うや否や、俺は森の中へと駆けだした。
レイダース、神ゲーとさせてください。




