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58. 20階層ボス戦(10秒)

「今日はこの辺で終わろうか。」


「ん。」


 現在の時刻は19時。


 ダンジョン内は現実とは別の空間だが、このダンジョンは外の世界と連動しているため辺りは既に真っ暗になっていた。


「それにしても、まさか1日で18階まで来れるとは思わなかったよ。やっぱりCランク冒険者は強いね。」


 そう、俺達が今いるのは18階層。


 ボスを倒した後、1~9階層の時と同様に効率よく階層を更新していたら、気付けばこんなにも進んでいたのだ。


「……夜も明るかったら良かったのに。」


 まだ物足りなさそうなハクレシアの呟きに愛想笑いを浮かべる。


 今日一日を通して分かったことだが、ハクレシアはダンジョン攻略となると結構積極的になる。


 思い返すのはボス戦が終わった後。


 10階層までノンストップだったのでキリの良いところで休憩を、と思ったのだが、ハクレシアは「疲れてないから大丈夫」とだけ言ってその提案を拒否した。


 そして、その後もほとんど(・・・・)休憩を取らずに攻略を進め、結局18階(ここ)まで辿り着いてしまったのだ。


 実を言うと途中の休憩も俺から言い出したことなので、もしかしたらハクレシア1人だったら今日中に20階層まで到達していた可能性すらある。


 まさか自分の方がお荷物になるとは全く想像もしておらず、情けないやら悔しいやら色々な感情が混ざっていた。


「俺がもう少しハクレシアのペースに合わせられたら良かったんだけど……ごめん。」


「……いや、私も1人の時の感覚で進めちゃってたから気にしないで。……むしろ、クロトはDランクの割によくやってる方だと、思う。」


「そっか、ありがとう。」


 ……ハクレシアは悪意0で慰めてくれているんだろうけど、今の俺の精神状態ではそれを素直に受け取ることはできない。


 考えてみてほしい、自分よりも格下だと思っていた年下の女子に気遣われた時の感情を。


 休憩を申し出た時に言われた「そっか、クロトはDランクだもんね」という言葉と、何とも言えない憐みの目線を、きっと俺は忘れない。


(今に見てろ、ハクレシアの方から「休憩させてほしい」と言わせてみせるからな!)


 と、そんな風に謎の対抗意識を爆発させながら初日のダンジョン攻略は幕を閉じた。




 その夜、ハクレシアと別れた後に『ロックストンダンジョン』へ転移して鬼のレベリングをしたのは言うまでもない。






 翌日。


 ハクレシアたっての希望で、日が昇ってまだ間もない早朝からダンジョンに集合する。


 昨日の夜は遅くまでレベリングをしていたのだが、今世のこの体は非常に便利で、数時間の睡眠でも疲労は綺麗さっぱり消えていた。


 これまでは万全を期すために睡眠時間を7~8時間程取っていたが、これならもう少し無理をしても大丈夫かもしれない。


 そんなことを考えながら、俺達は空いているダンジョンロビーを通ってダンジョンの中に入った。


「ダンジョン攻略2日目頑張るぞー!」


「……おー。」






 2時間後、俺達は20階層に足を踏み入れた。


 11~20階はそれまでの草原から少しだけ環境が変化し、所々に小規模の林も出てくるようになった。


 20階層のボス───『ソルジャー・ゴブリン』とその配下のゴブリン達はそうした林のどこかしらに潜んで待ち構えている。


「どこにボスがいるか分からないけど、とりあえず支援魔法(バフ)をかけておくよ。《STRブースト》《AGIブースト》」


「……ありがと。」


 この魔法の効果時間はたったの3分。


 もし時間内に見つけられなければ再度かけ直す必要がある。


「……じゃ、行ってくる。」


「え?」


 俺が何か言い返すよりも早く、ハクレシアは姿を消してしまった。


 てっきり一緒に探すと思っていたのだが……よくよく考えればハクレシアが単独で探し回った方が効率がいいかもしれない。


「あ、効果時間が3分って伝え忘れたな……。ま、もし途中で切れたとしても何とかなる───」


 その時、遠くから笛の音が聞こえた。


 音は、2回。


「───って、もう終わったのかよ。杞憂で良かったけど、相変わらず強いな。」


 『ソルジャー・ゴブリン』は通常のゴブリンから、主にSTRとAGIが強化されたゴブリンだ。


 また、通常のゴブリンは様々な武器種を扱うのに対し、『ソルジャー・ゴブリン』の武器は『片手剣』で固定となっている。


 もし俺が戦うとなったら接近戦を強制され、負けはしないだろうけど多少なりとも苦戦はしたはず。


 そういう意味ではハクレシアとタイプが似ているからこそ、よりステータスの高い彼女の方が有利に立ち回れたのだろう。




 暫くして、ハクレシアの下に到着する。


 ……なんかここ最近、こういうシチュエーション多くない?


 いやまぁ、効率って意味ではこれが大正解だし間違ってないんだけど……プライドがね、うん。


 次のボスは俺がやりたいって言ってみるか……?


 と、そんなことを考えながら次の階層へ転移を行う。


 さて、ここからは出現する魔物の質も量も今までより強力になる。


 トントン拍子で進んできたから忘れそうになるが、これから挑む21階層はロックストンダンジョンに置き換えると深層と呼ばれるエリアだ。


 この『ガートラ大ダンジョン』は全100層のため30階までは浅層と呼ばれているが、その実出現する魔物のレベルはロックストンダンジョンと同程度。


 浅層でさえその強さなら中層や深層、果ては91階以降の最深層の魔物はどれほど強いのか?


(くぅ~。何が出てくるのか分かっていてもワクワクするなぁ! こんな新鮮な気持ちで挑めるなんて……この世界に来れて本当に良かった!)


 モチベがギュンギュン上がっていくのを感じながら、俺達は再び二手に分かれて探索を開始した。




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