51. 間章:とある少女の回想・2
日付を1日間違えていました! すみません!
2話更新するかもと言いつつできずにすみません。
現在仕事の方が結構忙しく、できれば間章はパパッと終わらせたいのですが難しくなっております……。
とりあえず2話更新にできなかった分、今回の話を長くしてしっかり1話分の文字数にしました。
彼の第一印象は「コミュ力の高い青年」だった。
青みがかった銀髪に整った顔立ち。
容姿だけなら、イケメンと言っていい。
とはいえ、人の価値が見た目だけで決まらないことは身に染みて理解している。
特に、外面の良さしか取り柄のないあの3人とか。
……ともかく、彼の第一印象に関してはそんな感じだ。
コミュ力が高いと思ったのは、彼がレクリエーションを提案してきたから。
町を転々とする生活をしている関係上、馬車に乗る機会はそれなりに多いけど……そんな提案をする人はそうそういない。
他人に話しかけられるとしたらナンパくらい。
潔い人なら一度断ったら身を引くけど、これが往生際の悪い人だったら……今までで一番面倒だったのは、嫌気が差して途中下車したらその時借りていた家にまで付き纏われたことだろうか。
結局、衛兵に通報して連行してもらったけど……アレは本当に今思い出しても腹が立ってくる。
……っと、話が逸れちゃった。
それで話を戻すと、彼の提案したレクは正直あまり気が進まなかった。
トラブルになったあのPTを抜けた後、私はずっとソロで活動してきた。
そのため人と話す機会は少なかったし、話したとしても母か受付嬢さんとの事務的な会話くらい。
たまに武器や消耗品を買いに行くことはあるけど、それも最低限の会話で何とかなってしまう。
そんな訳で、有り体に言うなら、私はコミュニケーション力が極端に低い。
それも初対面の人が相手なら尚更だ。
とはいえ、私みたいなタイプは他の人から強くお願いされると断るのが難しい。
ナンパであれば逆に毅然として立ち向かえるんだけど、この誘いはそういう類のものではない。
結果として私は首を縦に振った。
一応補足しておくと、顔に釣られたのではなくて、ただ単に誘いに乗ってあげないと可哀想だと思ったから。
そう、決して顔に釣られた訳ではないのだ。
そんなこんなで『ワードウルフ』というレクをやることになった訳だけど、これが案外楽しかった。
最初の方は彼の質問に答えていくだけでいいから私でも参加できたし、後半は他の乗客の人とも多少なら話せるくらいにはなっていたので、仲間外れになるようなことはなかった。
普段なら本を読むか寝るくらいしかできないけど、今回は全く違う。
それこそ、少しの間とはいえ母のことが頭から離れてしまうほどだった。
彼の印象が打って変わったのはその日の夜のこと。
自己紹介の時に彼がDランク冒険者だと言っていたことを思い出し、彼のことをギルドで調べることにした。
『ガートラ大ダンジョン』攻略のために猫の手も借りたい現状、少しでも打ち解けられたた人というのはそれだけでPTに誘う価値がある。
もし仮に彼が戦えなかったとしても荷物持ちをしてもらえばいい。
というか寧ろ、私よりも弱い方が万が一があったとしても制圧できるため、気が楽かもしれない。
そう結論付けた私は、初日に泊まった『ルビャ』という町にある小規模のギルドへと向かった。
「───こ、これ……。」
「その反応になるのも無理はないさね。かく言う私も間違いじゃないのかと何回も確認したがね、何度見てもその通りだったよ。」
驚く私の反応を見た年配の受付嬢さんは、頷きながらそう言った。
冒険者ギルドには登録している冒険者の経歴を閲覧できるサービスがある。
これはPTを組む際のトラブルを減少させるために設けられたもので、名前さえ分かれば実績や今までに起こした問題などを確認することができる。
「登録から僅か1週間でのDランク到達。私も受付嬢になってかれこれ何十年と冒険者を見てきたけど、こんなに早いのは見たことがないね。」
感心したように言う受付嬢さんをよそに、私は頭を回転させる。
(私も結構早い方だったけど、それでも2週間以上はかかった。……これはもしかしたら女神様が私にくれたチャンスなのかも。)
最初の方のランクアップが早い人はそれだけ才能があると言われている。
ということはつまり、彼は私よりも……。
この降って湧いた奇跡をものにするべく、この日泊まる宿の一室で私はいくつかの作戦を立てた。
まず1つが、普通に仲良くなって誘う作戦。
馬車が王都に着くまではあと2日。
初日の今日であんなに会話ができるようになったのだから、これだけ日数があればいくら私が口下手だとしても自然な会話ができるようになっている可能性は高い。
爽やかイケメンに話しかけに行くというのは結構難しいけど……未来の私なら何とかできるかもしれない。
そして2つ目が、ハニートラップ作戦。
ハッキリ言ってこれは最終手段だ。
実質作戦が1つしかないというのはナシで。
今まで人と関わりを持とうとしたことが全くなく、これしか思い付かなかったのだから仕方ない。
こんな根暗な私に魅力があるのかは分からないけど……少なくともナンパをされる程度には容姿力(?)があるはず。
もし、そういうことがあっても母を助けるためなら耐えてみせる。
そんな風に覚悟を決めて、翌日、翌々日と過ごした。
その中で何度か言い出すチャンスはあったものの、そのどれもを不意にしてしまい、遂に馬車は王都へと到着した。
その後、なんやかんやあって彼をPTに誘うことができた。
中々言葉を言い出せない私を急かすことなく待ってくれたのには感謝しかない。
でも、それを聞いた後の第一声が「なんだそんなことね」だったのは少し納得できない。
そりゃあなたからしたら「そんなこと」でしょうけども!
「……ま、何はともあれソロで挑むよりかはいくらか楽にはなったかな。───待っててね、ママ。」
遠いネゴノーバの町で待つ母を思いながら私は目を閉じる。
─────この出会いが私の人生を大きく変えることになるとは、この時の私は知る由もないのだった。




