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48. インサイダーゲーム

更新遅れてすみません!

久しぶりに難産でした……

「おはようございます。今日もよろしくお願いします!」


 翌朝。


 集合場所に着くと、馬に餌をあげているおじさんの姿があった。


「おぉ、おはようなぁ~。出発までまだ時間はあるけど、乗っててもいいからな~。」


 特にこれといってやりたいこともないので、言われた通り馬車に乗り込む。


 出発の時間まではまだ数十分あるが、馬車の中には既に先客がいた。


「おはよう、ハクレシアさん。自分が言うのもアレだけど早いですね。」


 本を読んでいた黒髪少女───ハクレシアさんに腰を下ろしながらそう声をかけると、本を閉じて上目遣いでこちらを見た。


「……おはよう。……あと敬語じゃなくていいよ、堅苦しいし、そっちの方が歳上だろうし。」


「歳で言えばそうかもですけど、冒険者ランクはハクレシアさんの方が高いじゃないですか。」


 俺はつい2日前にDランクに上がったばかりだが、昨日聞いた話ではハクレシアさんは半年ほど前にはCランクに上がっていたらしい。


 パッと見は高校生くらいに見えるが、その実力は本物だろう。


「……じゃあ冒険者の先輩からの命令ってことで。よろしく、クロト。」


(……最初の自己紹介の時には無口で人見知りな人だと思っていたけど、今日はやけに距離を詰めてくるな。───ハッ! まさかこれがレクの効果なのか!?)


 と、内心でそんなことを考えつつも、そんな風に言われては断ることができるはずもなく。


「はいはい、分かったよ。……こんな感じで良いかな?」


「ん。……ところでクロトの目的は大ダンジョン?」


 俺のタメ口にハクレシアは満足げに頷くと、続けて質問をしてきた。


「そうだね。───と言ってもDランクだし、そこそこの階層までしか行けないだろうけど。」


 本当は最奥のボスまで倒すつもりだが、流石に怪しまれそうなので自虐するように肩を竦める。


「……そう、てっきり最後まで行くつもりなのかと思ってた。」


「……いやぁ、アハハ。」


 思わず漏れそうになった声をギリギリで堪え、笑って誤魔化す。


「……やっぱり──言う──。」


「あれ、なんか言った?」


 ボソッと小声で何かを呟いていた気がするが、詳しく聞き取ることができずそう聞き返した。


「……あのさ、もし王都に着いたら───」


「───おーっす! 兄ちゃん、今日も何かして遊ぶんだよな?」


 ……何というタイミングの悪さだろうか。


 雰囲気的に何か大事なことを言われそうだったんだが、ゴウタさんの言葉で全て吹き飛んでしまった。


「ゴウタさん、おはようございます。……そうですね、いくつか考えてきたので昨日とは別のレクをしたいと思っています。」


「いいねぇ、いいねぇ。それなら楽しみにしてっからよ。」


 強面(こわもて)な顔を歪めてニヤリと笑うと、ゴウタさんは俺の隣に座って目を閉じた。


「それでさっきの話の続きだけど───」


 そう言いながら正面に向き直ると、ハクレシアはまるで何事もなかったかのように読書を再開していた。


 こちらを一瞥もしない様子を見て諦めの溜息を小さく吐き、出発まで俺も目を閉じるのだった。






「皆さんおはようございます! 今日は昨日とはまた違うレクを考えてきたのでそちらをやりたいと思います!」


 馬車が出発して間もなく、乗客全員の視線を受けてそう挨拶をする。


 馬車での移動時間はやはりこの世界の人からしても相当退屈だったようで、昨日のワードウルフはかなり盛り上がった。


 そのせいで今日のレクの期待値が高くなってしまっている気もするが……まぁいくつか考えてきたし、どれかしらは刺さってくれるはずだと信じたい。


「昨日やったワードウルフが好評だったので、同じような推理系のレクを考えてきました! その名も、『インサイダーゲーム』です!」


 インサイダーとは「内通者」という意味の英語で、このゲームでは非常に重要な役職だ。


 そんな『インサイダーゲーム』のルールはこんな感じだ。


 ・プレイヤーは3人ずつのチームAとBに別れ、Aが推理をする時はBは観察に回る。


 ・推理をするチームはGMの考えたお題を9個の質問(はい / いいえで答えられる質問のみ)の中で当てる。


 ・推理をするチームには1人だけお題を知っている「インサイダー」が紛れており、チームが答えに辿り着けるようにサポートする。


 ・推理チームがお題を当てることができたら、観察していたチームが誰が「インサイダー」だったかを推理する。


 ・「インサイダー」を当てることができれば観察チームの勝利で、お題を当てるかつ「インサイダー」がバレなければ推理チームの勝利。


「───と、ルールはこんな感じです。」


 昨日のワードウルフよりも複雑でメンバー同士の助け合いが必要になってくるが、昨日のレクで多少なりとも仲が良くなっていると思うので大丈夫だろう。


「なるほどな、なんとなくは分かったぜ。そしたらチーム分けは……俺、マルク、マリーがAチームでそっち3人がBチームってことでどうだ?」


 俺と同じ側の長椅子に座っている3人がAチーム、反対側の長椅子に座っている3人がBチームとなった。


 昨日と同じで俺はGMをすることになっている。


 まずはAチームが推理側だ。


 3人に紙を配り、それぞれが隣に見えないように確認する。


 インサイダーの人の紙にだけお題が書かれているが、誰がインサイダーになったのかは俺も分からない。


「2人とも確認できたか? まずは俺から質問していくぜ。それは物か?」


「はい。」


「んじゃ次は俺な。それは熱い?」


「いいえ。」


「最後はウチね。それは手で持てる大きさ?」


「はい。」


 これで1周が終わりだ。


 ここまでをまとめると、「熱くなく」「手で持てるサイズ」の「物」だな。


「おっと、もう1周したのか。……んー、それは武器か?」


「いいえ。」


「武器ではないってことは……日常で使うものだったりするんじゃね?」


「はい。」


「お、マルくんやるぅ。それは私が使ったことあるヤツ?」


「……はい。」


 さて、2周目が終わったな。


 ここまでをまとめると、「熱くなく」「手で持てるサイズ」の「物」で、「武器ではない」「マリーさんも使ったことのある」「日常で使うもの」だ。


「おいおい、もうラストかよ。全然絞り込めてねぇぞ。……それは魔道具か?」


「いいえ。」


「確かにこれは分からねぇな……。それじゃあここは思い切って、この馬車の中にあるものか?」


「はい!」


「え、マルくんすっご! この馬車の中にあるものだから……あ、クロっちが今持ってるやつとか?」


「はい!」


 今俺が持っているのは右手にペンと、左手に紙。


 さぁ、ここまでくればもう答えは2分の1だ。


「最後は3人で話し合って決めて大丈夫ですよ。とはいえ、もう答えはほぼ出ていると思いますけど。」


「まぁ、ペンか紙の2択だからな。2人はどっちだと思う?」


「手で持てるサイズって話だしペンじゃないっすかね。マリーは?」


「ウチもマルくんと同じでペンだと思うなぁ。」


「よし。それなら……兄ちゃんよ、お題はペンで合ってるか?」


「はい、正解です。」


「おっしゃ!」


「よっし!」


「やった!」


 まさかあの状況からここまで一気に辿り着くとは。


 三者三様の喜びを見せるが、しかしこのゲームはここからが本番だ。


「さて、それではゲームを見ていたBチームの皆さんは、誰がインサイダーだと思うか話し合って決めてください。」


「そうじゃの、ここは消去法でゴウタはないと思うのだが2人はどうじゃ?」


「……同感。」


「そうねぇ、本当に何も知らなそうだったしゴウタさんではないと思うわね。」


「となれば、マルクとマリーの2択じゃな。ワシは最後思い切った質問をしたマルクを怪しんでいるが……。」


「……私もマルクが怪しいと思う。これで違ったら、あっぱれ。」


「そうねぇ、やっぱりマルク君が怪しいと思っちゃうわねぇ。」


「Bチームの予想はマルクさんでよろしいですか?」


「うむ。」


「ん。」


「いいわよ。」


「ではマルクさん、配られた紙を見せてください!」


「俺はインサイダー……でした! くっそー!」


 マルクさんが見せた紙には『ペン』の文字がはっきりと書いてある。


 やはりBチームの皆が言っていたように、勝負を分けたのは最後のあの質問だろうな。


 答えを当てられないとそもそもの土俵にすら上がれないため、インサイダーとしては何としても答えに導きたいところだが……まぁそれまでであまりにも絞り込めていなかったからなぁ。


 どうしてもあの質問は無理が出てきてしまうな。


「ま、ここでBチームのインサイダーを当てれば良いって話だからな。絶対に見つけ出してやるぜ!」


「それでは次はBチームの皆さんに紙をお配りしますね───」


 俺はゲームを楽しんで貰えたことに安堵しつつ、次のお題を配っていく。


 そんなこんなで馬車移動2日目もレクをして過ごすのだった。


大変お待たせしました!

次話からは本編というか、ダンジョン攻略の方に戻ります!(多分)

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