47. ワードウルフ
「今更ですが皆さんこんにちは! せっかくこうして出会えたのも何かの縁。良ければレクリエーションをしませんか?」
緊張気味にそう問いかけると、全員の視線が俺に集まった。
そして気まずい沈黙。
実際には数秒かもしれないが、体感的には数分、数十分にも感じられた。
「おう兄ちゃん、何をやるってんだ?」
そんな中で助け舟を出してくれたのは隣に座っていたイカついおじさん。
「そうですね、紙とペンを使った遊びなんですけど……『ワードウルフ』というのをやろうかなと。」
「『ワードウルフ』? 初めて聞く遊びだがどういうルールなんだ?」
「まずは皆さんにお題の書かれた紙をお配りします。配られたら周りの人に見られないように内容を確認してもらうんですが、この時1人だけ違うお題の書かれた紙が渡されます。数分間の会話をして、違うお題を渡された人……ウルフを見つけることができたら多数派の勝利、というようなルールです。」
「……なるほど? それで、買った人には何か褒美があるのか?」
「───っ、それの用意はしてないっすね……。」
「アッハッハ! 冗談だよ、冗談。……ぶっちゃけあんまりルールがピンときてねぇがまぁやってれば分かるだろ。せっかく兄ちゃんが提案してくれたんだし暇潰しにやってみようぜ。」
イカついおじさんがそう呼びかけると、反応は様々だったが最終的には乗客全員が参加することになった。
(マージで焦った……けどありがとうおじさん!)
と、内心で感謝を述べつつお題の書いた紙を全員に渡していく。
ゲームの仕様上誰か1人は参加できなくなる訳だが、今回は初回ということもあって俺がGMをしながら全員に質問を振っていく形にした。
「……あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。俺はクロトって言います。冒険者をやってて今はDランクです。」
名前が分からないと色々不便なことに気が付き、今更ながら簡単に自己紹介を済ませる。
「そういやまだだったな。俺の名前は『ゴウタ』ってんだ。王都で武器職人をやってっからもし入用だったら寄ってってくれや。」
イカついおじさんこと、『ゴウタ』さんが自然と自己紹介をし、反時計回りに自己紹介をする流れができる。
「……『ハクレシア』。冒険者やってる。ランクは……C。」
続いて名乗ったのは前に座っていた黒髪短髪の少女。
見たところ俺よりも2つ3つは歳下で高校生くらいだと思うが……この歳でCランクとは恐れ入った。
同じ感想を抱いたのか、隣にいるゴウタさんの「ほぉ」という呟きが聞こえた。
「じゃ、次は私かしらね。主婦をやってる『カナ』と言います。」
カナさんは一言でいうならマダムだろうか?
4、50代くらいのおば……お姉さんだ。
「『キール』じゃ。昔は冒険者をやっとったが今は引退してこうしてのんびりとした余生を過ごして居るところじゃ。」
キールさんは6,70代くらいのおじいちゃんだ。
糸目で好々爺とした笑みを浮かべているが、もしも開眼したら現役時代を思わせるような鋭い目つきになるだろうことは想像に難くない。
「ちわーっす、『マルク』でーす。普段は騎士やってるけど今日はオフなんで『マリー』の騎士やってまーす、なんつって。」
「キャー、守られちゃってるー! あ、『マリー』でーす。」
……見てるこっちがいたたまれなくなってくるこの2人組は俺の左隣に座っており、ネゴノーバの町を出たときからずっとイチャイチャしていたバカップルだ。
てっきりレクに参加しないでずっと2人の世界にいると思っていたので、この2人も参加してくれるのは意外だった。
「全員の自己紹介が終わったところで、早速ゲームを始めていきましょうか。マルクさんとマリーさんも自分のお題を見せないように注意してくださいね。」
全員の顔を見回し、顔が上がってるのを確認して再度口を開く。
「それではこれから皆さんに質問をしていきますが、答え合わせをするまではお題を口にしないように気を付けてください。もしも会話をしていく中で怪しいと思った人がいたらその人に直接質問をしても構いません。……ではまずゴウタさん、お題のものは道具ですか?」
「あぁ、そうだな。」
「皆さんはどうでしょう、道具で合っていますか?」
すると、全員が首を縦に振って頷く。
「では次にハクレシアさん、あなたはこの道具を使ったことがありますか?」
「……ある。」
「他の方はどうですか?」
そう聞くと、今度はゴウタさん、キールさん、マルクさんのみが頷き、カナさんとマリーさんは首を横に振った。
「カナさんとマリーさんは使ったことがないみたいですが、これに関して何か怪しいと思った方はいませんか?」
「まぁこの2人はそうだろうし、現状怪しい奴はいねぇな。」
ゴウタさんがそう呟き、何人かがそれに相槌を打つ。
「分かりました。今度はカナさん、使ったことがないとのことですが使おうと思ったことはありますか?」
「いいえ全く。こんな物騒なもの、私にはとても使えないわ。」
首を横に振り、強く否定するカナさん。
特に発言したそうな人がいないので次の人に移る。
「ではキールさん。カナさんは物騒なものと言っていましたが、キールさんがこの道具を使った理由は何故ですか?」
「……それしか能がなかったからじゃな。現役時代はこれでよく仲間のピンチを救ったものじゃ。」
キールさんがそう言うと、何人かが頭を傾げて悩み始めた。
「おっと、今のキールさんの発言を受けて反応が分かれていますね。もし何か言いたいことがあれば自由に質問して大丈夫ですからね。」
そう言ってもう一度全員の顔を見回していくと、ゴウタさんが口を開いた。
「兄ちゃんよ、全員に質問する前で悪いが俺はもう誰がウルフか分かっちまったよ。」
「お、本当ですか。決め手はやはりキールさんの発言ですかね?」
「それとカナの発言だな。『物騒なもの』って表現が疑問だったんだが、爺さんの『ピンチを救った』って言葉で確信に変わったぜ。他の奴も俺と同じで仲間のことを守るアレだよな?」
(あちゃー、そこまで踏み込んじゃったか。これはもう決まったかな。)
そう思いつつ他の人の顔を見ていくと、キールさんの発言で首を傾げていたマルクさんやマリーさんも含めて全員が確信に変わった顔をしていた。
「……なるほどの、こうやって罠を仕掛けていけばいいということじゃな。」
「……何言ってんだ爺さん?」
「残念じゃが恐らく今回のウルフはカナさんではなくおぬしじゃぞ。」
キールさんがそういうと、ゴウタさんを除いた全員が頷いて賛同した。
「では多数派の意見はゴウタさんがウルフ、ということでよろしいですか?」
「は、おい、何でだよ。」
状況を飲み込めていないゴウタさんを置いて、全員が肯定を示した。
「ではゴウタさん、あなたのお題は何でしたか?」
「……『盾』だ。他の奴もそうじゃねぇのか?」
お題の書かれた紙を見せながら言う。
「では他の方のお題は何でしたか?」
そう尋ねると、5人は一斉に紙をゴウタさんに見せる。
書かれていたのは……『剣』。
「……は? おい、なんでだよ。爺さんは仲間を守ったって言ったじゃねぇかよ。嘘だったってのか?」
「ほっほ、嘘はついておらんよ。剣で仲間のピンチに割って入って救ったんじゃからな。」
答え合わせをするようにキールさんがそう言うと、ようやく合点がいったゴウタさんがそこで己の過ちに気付く。
「あークソ、そういうことかよ。俺が守るものとか余計なことを言わなければ良かったのか。」
頭を掻きながらゴウタさんは心底悔しそうに呟く。
「……どうでしょう、こういうゲームなんですけど面白かったですか?」
絶賛大後悔中のゴウタさんへ恐る恐る声をかけると、ガシッと両肩を掴まれた。
「兄ちゃん、早く次のお題を出してくれ! 次は絶対に負けねぇ!」
あまりの圧に思わず顔を背けると、他の人も同じようにワクワクした目をしていた。
「分かりました! 2回戦目のお題は───」
そんなこんなで試合を重ねていき、皆が慣れてきてからは俺も参加したりした。
当初の目的である暇潰しは完璧に達成でき、レクを行う中で乗客同士の仲も深まっていったのだった。
名前は基本適当なので「異世界感なくね?」という質問はなしでお願いします……。
自回も同じようなレク回を挟んだのち、本編を再開したいと思います。
書いてる側からしたら息抜きになっていいんですが読む側からしたらどうなんだろう、と少し不安です()




