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41. 攻略ペースを上げるには……

第2章のタイトルを「ランクアップと出会い」に変更しました。

 23層に到達した翌日。


 この日は27層まで攻略階層を更新した。


 その途中、25階層からは新しい魔物が出現するようになった。


 その名も『ゴーレム:スロワー』。


 ゴーレムの亜種ともいえるこいつは、野球ボールこと『リトロック』を投げつけてくる魔物だ。


 単体でもそこそこの速さだった『リトロック』が更に速く飛んでくるので、シンプルな割に意外と厄介な敵だ。


 加えて、この辺りの階層になると複数エンカウントがデフォルトになってくるため、浮いてる剣やら槍やらの攻撃を捌きながら対処しないといけなくなる。


 リトロック()自体の耐久力は変わらないので魔法1発で倒せるのがまだ救いではあるが、鬱陶しいことに変わりはない。


 結果、思うように階層更新ができずモヤモヤしたままこの日のダンジョン攻略は終了した。




 そして今日。


 どうすれば攻略ペースが上がるだろうかと考えた末、「新しい魔法を覚える」という至極単純な結論に辿り着いた。


 現在のレベルは33。


 100レベルが上限のため、単純計算でちょうど3分の1に差し掛かったところだ。


 まぁ、必要な経験値量は数倍、数十倍どころの話ではないのだが……。


 それはそうと、どうして今までこんな簡単なことに気が付かなかったのか、正直自分でも不思議に思っている。


 敵が強くなったら都度装備を更新し、自身を強化していくというのがRPGの常識であり正道だ。


 であるにも関わらずそれをしなかったのは、そもそも最低威力の『ウォーターボール』で火力が足りていたというのもあるが、一番は俺の中の貧乏性な部分が無意識にMPポーションを贅沢に使うことを拒否していたからだろう。


 頭では沢山使えると思っていても、なんとなく手が出しづらいという意識があった。


「何はともあれ、これでいくらか倒しやすくなったはずだし早速ダンジョン行きますか! 《転移》!」






「27階層に《転移》!」


 朝の日課であるスライムゼリー集めを終わらせ、本命のダンジョン攻略へと移る。


「お、いるいる。」


 27階層に到着して間もなく、通路の先に魔物の集団を発見する。


 浮いている魔物が2体と、その後ろに右腕が肥大化したゴーレムが3体。


 浮いているのは深層でお馴染みの『リビングウェポン』で、その後ろの魔物が『ゴーレム:スロワー』だ。


「今回の武器は……モーニングスターとハルバードか。いいねいいね、新魔法のお披露目にピッタリだ。」


 モーニングスターは持ち手の先に鎖で繋がれた無数の棘の付いた球体のある武器で、ハルバードは斧と槍が合体した形状の武器だ。


 武器種が多い関係上、剣のリビングウェポンが出現する確率が最も高いのだが、(たま)にこういった珍しい武器が出てくることもある。


 記念すべき初陣が特別感のある戦闘になることに感動しつつ、魔法の準備を始める。


 今回新しく覚えた魔法は2つ。


「《ウォーターアロー》」


 弓を構えるポーズで魔法名を唱えると、実体のある水の弓矢が手の中に生成される。


 そのまま目いっぱい弓を引き絞り、手前にいるモーニングスターのコアに狙いを付ける。


「ふっ!」


 物理現象を超越したファンタジー魔法を放つと、水矢は赤い宝石のようなコアに吸い込まれるように一直線に飛んでいく。


「よしっ!」


 20メートル以上離れた位置からの狙撃は、無防備な「モーニングスター」のコアを穿ち、光へと返した。


 唐突の奇襲で味方がやられた魔物たちは慌ただしく動き出し、()の存在を確認すると一斉に距離を詰めてきた。


「ちっ、もう1発は無理か。」


 《ウォーターアロー》は威力は高いものの発射するまでにラグがあり、しっかりと狙いを付ける必要がある。


「……これは要練習だな。」


 慣れればノールックなんて芸当も可能だが、現実世界での感覚に慣れていない現状では無理をするのは禁物だ。


 接敵するまでの僅かな間に思考を切り替え、次なる魔法を準備する。


「《水伏爆(みずふばく)》」


 右手を敵の方に向けて魔法を発動する……が、何も起こらない。


 もしこの場面を見ている人がいれば、きっと魔法の発動に失敗したと思うだろう。


 だが、この魔法はこれでいい。


 真っ先に飛んできた「ハルバード」が間合いに入ろうかというその瞬間。


 ドゴンという爆発音が轟き、幅5メートル、高さ3メートルの通路を埋め尽くさんばかりの爆発が起こる。


 飛び散る水しぶき全てにダメージ判定があり、その爆発の中心にあったハルバードは跡形もなく消えてしまった。


「よっし! 大成功!」


 先程の『ウォーターアロー』と違い、実はこの『水伏爆』という魔法は俺が創り出した魔法だ。


 目に見えない程小さな爆弾のタネ(・・)を発射し、それが何かにぶつかるか任意のタイミングで起爆させることで爆発を起こすという、奇襲性と火力に優れた魔法だ。


 しかし喜ぶのも束の間、霧が晴れるとそこには腕を振りかぶっていかにも「今から投げますよ」と言わんばかりのゴーレム達がいた。


「水伏爆───はやめといて、《ウォーターボール》!」


 3体のゴーレムから同時に投げられる『リトロック』に対し、最初は『水伏爆』での迎撃を試みるも、球速を考慮すると起爆する位置によっては爆発に巻き込まれないためキャンセルし、代わりに『ウォーターボール』を放つ。


 射線上に置く(・・)ように放たれた水球は2つの球を飲み込み、1つは盾で防いで事なきを得る。


「《ウォーターボール》で倒してからの……《水伏爆》!」


 弾かれて壁にぶつかったリトロックを確殺し、ゴーレムたちの中心にタネ(・・)を飛ばす。


 そして、中央のゴーレムに触れた瞬間大爆発を起こし、ゴーレム達も仲良く光になって消えていった。


「うーん、今までの努力は何だったのかってくらいあっさり終わったな……。よーし、この調子でドンドン進めていきますか!」






 この後、怒涛の勢いで攻略を進めた俺は、到達階層を29階層に更新した。


 いよいよダンジョンのクリアが目前に迫り、ウズウズしながら帰路につくのだった。


勘の良い読者の方ならもしかしたら察しているかもしれないですが、

「水伏爆」のモチーフは某合体戦士の技です。

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