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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【探索】

アナトールの部屋へドアを繋げる作業も、これまたちょいと苦労させられた。

やはり当人がいるのに、その当人がいない部屋をイメージするってのは難儀なもんさ。

しかも失敗するとかなりまずいことになりかねないからね。

うっかり、アナトールとカゾット、そしてフィリオのいる部屋を開けちまったら、一体どうやって誤魔化したものだか思いつかないよ。

まあ、(気になったからちょっと様子を見に来た)程度で軽く誤魔化せるだろうが、それはあくまで一回限りだ。

二回目はもう言い訳のバリエーションが無い。

そうさね。

考えようによっちゃ、一回までは失敗できると考えれば、プレッシャーは減るようにも思えるが、それもまた受け止め方によりけりさ。

一回は失敗できる。

一回しか失敗できない。

条件は同じなのに、受け止め方でこうも精神的な負担が違う。

特に、強がってるとはいえかなり精神的に堪えてきてるフィリアとしてはどうしても後者の受け止め方になりがちなわけだよ。

おかげで随分と時間がかかっちまった。

頭の中のイメージを固定するってのは、実はえらく難しいもんなんだよ。

人間ってのは、一瞬一瞬の間に、いろいろなものを頭に浮かべる。

なんならお前さんもちょっと試してごらん。

ひとつのものをずっとイメージし続けるのがどれほど困難か、すぐに分かるよ。

ひとつのことだけ頭に浮かべてるようでその実、ふとそのイメージの隙間に他のイメージが紛れ込む。

こういう性質を理解しているからこそ、アナトールはフィリオとフィリアにドアを開けさせたがらなかったとも言えるね。

ちょいと間違えただけで、行き先とは全然違うとんでもないところにドアが繋がっちまう可能性がある。

そういう事故を恐れてるってのは間違いなくあったろうさ。

その後、もしパニックなんぞ起こしちまったら、下手すると館の中で永遠に迷子になっちまうかも知れないからね。

気にしすぎと思えても、アナトールなりに筋の通った心配ってわけだよ。

だが、今は頼れない。

頼りようがないさ。

だから自力でどうにかドアを繋げたよ。

アナトールの部屋に。

たどり着いたときは冗談抜きにその場へ軽く座り込んじまった。

緊張感の成せる業さね。

まあともかく、フィリアはアナトールの部屋へやってきた。

あとの作業は、これまでの部屋と比べるとちょっと慎重にならざるを得なかったよ。

理由自体は単純。

正確ではないが感覚的に、もうすぐ朝が来る気がした。

そこが問題さ。

アナトールの部屋を荒らして目的のものを探すのは簡単だが、それがアナトールに知れたら、かなりややこしいことになる。

証拠こそ無いが、直感的にアナトールがシャミッソーの日記を隠し持ってるだろうってのは確信に近いものがあった。

が、もしそれが見つからなかった場合、アナトールの自分に対する感情は相当面倒なものになるだろうってことは確かだ。

ただでさえすでに館の中の人間関係は崩壊してるってのに、そこに加えてアナトールとの関係を大きく悪化させるのは得策とは言えない。

少なくとも今の時点では。

この先、いくつか求めている情報が手に入った上でなら、関係が完全に壊れても構わないが、現段階ではまだアナトールとの関係は最低限、維持しておくのがベストだと考えた。

なにせまだ先がまったく見えないからね。

急ぐ必要は痛感してるが、それでもある程度時間がかかるのは覚悟しておく必要がある。

結果、慎重な行動に努めたよ。

置いてある物の位置や形が変わるような探索は控え、ベッドは下を覗き込む程度。

机は上に置いてある物を触れずに見るだけにし、引き出しを開けても中身は触れず、これも見るだけにとどめた。

部屋の造りがシャミッソーやカゾットの部屋とほぼ同じで、しかも置いてある家具も同じようなものだけだったから、探索そのものは楽だったね。

ベッドは触れずに見渡した限りでは、特に何も無かったが、机のほうは逆に拍子抜けするほど簡単に目的のものが見つかった。

引き出しを開けると、どうやら替えのものらしき色メガネと本が一冊。

本は裏返しだったからこれが果たしてシャミッソーの日記かどうかは分からなかったが、なんにせよ何かが書かれた本が机に入ってる。

この事実が重要なのさ。

で、今日のところはここまでにしておいた。

確認作業はできた。

下準備はこれから。

そろそろ朝が来る。

フィリアはそう感じ、朝食の用意された部屋をイメージすると、そこで一通りのものを見繕って盆に載せ、アナトールとカゾット、フィリオのいる部屋へ向かうことにした。

想像でしかなかったが、ほぼ間違いなく、ふたりともまだ起きてる。

朝食を届け、まずは様子見といこう。

急がば回れ。

フィリアはせっつく自分自身の心を押し殺しながら、三人のいる部屋へと向かったよ。


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