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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【館の腹】

開け放たれたドアの先。

いつものように、また見たことも無い部屋が広がっていた。

ただね、いつもとはちょいと違う部分もある。

今までに見てきた部屋は、造りや中身の差こそあれ、少なくとも明るさという点では共通していたんだ。

それがさ、この部屋だけは違うんだよ。

真っ暗ってわけじゃあない。

とはいえ、明るいとはお世辞にも言えない。

そんな部屋の中はどうやら置物の部屋らしかった。

そう、少なくとも最初はそう思った。

動物や女性の彫像がそこかしこに置いてあってさ、しかもそのどれもが見事なんだよ。

さて、ここまで言ったら、もう分かるだろう?

ああ、フィリオとフィリアも気がついた。

その部屋は明らかに見覚えがあったんた。

当然さね。

つい今朝起きる前まで、いやってほど夢ん中で見てたんだからさ。

どこまで続いてるのかも分からない、だだっ広い石造りの部屋。

規則的に並んだ柱。

動物や女性の彫像が、その柱を取り囲むように配されてる。

そうして、しばらくして目が慣れてくると、フィリオとフィリアは同時に理解したよ。

置いてある彫像と思っていたものが、質感からして、彫像なんかじゃないってこと。

これが夢で見たのとおんなじ場所だってこと。

ただなんでそんな夢を見たのかについちゃあ、答えは出そうになかったけどね。

で、とりあえずは足取りも重く、部屋の奥へと進んでいったよ。

怖いのは山々だったが、確認したいっていう欲求もまた、それと同等に大きかったのさ。

柱のひとつに近づいてみると、やはりそれは夢で見たのとまるで同じ。

柱に寄り添うように立ったまま眠っているように見える裸の女性。

それを取り囲む見知らぬ獣の群れ。

細部に至るまで夢と寸分違わずさ。

だから思わず声が漏れた。

「これ……夢で見たのとそっくり……」

ふたり同時だよ。

そりゃびっくりしたね。

フィリオもフィリアも、お互いの声がぴったり重なって聞こえたんだから。

思わずお互いに顔を見合わせちまったよ。

確認の言葉はいらなかった。

ふたりとも、今言った言葉と、見合わせた相手の目だけで、事実は十分に理解したよ。

ふたりしてまったくおんなじ夢見てたってことをね。

と、

「フィリオ、フィリア、ふたりとも平気かい?」

急にアナトールの呼び声が聞こえたもんで、ふたりとも軽く体がこわばっちまった。

意識が完全に内側向いてたせいで、あとからドアを抜けてきたアナトールの呼び声はふたりの心臓には部屋の見た目以上に悪かったってわけだ。

「あ、は、はい。大丈夫です……」

フィリオはさすがに無理だったけど、フィリアはかろうじて返事ができた。

それを聞いて、アナトールはふたりに近づきながら、安心したように軽く何度かうなずいて見せたよ。

「それならよかった。ショックが大きすぎやしないかと、ずっと心配していたからね」

ほぼ目の前まで歩み寄ってきたアナトールはそう言って、軽いため息をひとつ吐いた。

まあ、ほんとの理由は、事前に夢で予行演習してたってのが効いてたりするんだが、そこはあえてふたりとも口にしなかったよ。

アナトールの単なる杞憂だったってことにしといたほうが、面倒が少なくて済む。

そんな考えがあったのかも知れないね。

だが、本番はここからさ。

部屋の見た目はあくまでただの見た目だ。

問題はこの部屋が何か。

柱の周りにある置物のようなものは何か。

そこが問題なんだ。

「……さあて、アナトール。今までさんざん渋ってきたお話の時間だ」

気づくと、カゾットがドアの脇で腕組んで立ってた。

どうも、カゾットは部屋の中へはあまり入りたくないらしい。

ドアの横にぴったり背中くっつけて、遠巻きに三人を見ながら繰り返したよ。

「聞かせてもらうぞアナトール。(変化)のすべて。私たちの末路。そして……私のこのふざけた(変化)についても。ひとつ残らず、すべてな……」

気のせいかね。この時のカゾットの声は、今までに聞いたどんな不機嫌な時の声よりも、恐ろしくぞっとさせる響きだったよ。


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