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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【迷い人】

ひとまずふたりが……というより、フィリオが落ち着いたところで、アナトールは簡潔に何があったかをフィリアに聞いた。

まあ夢についちゃあ、あとでちょいと面白いことになるからここでは話すのは遠慮しとくとして、問題は麻袋さ。

アナトールもカゾットも、フィリオとフィリアに気がいってて、まったく気が付かなかったが、少し注意して見ればすぐそこにそれはあったよ。

ドアを開けた時に床へ落ちた麻袋。

これを見た時のアナトールの反応ときたら、フィリオとフィリアとはまた違った意味ですごい反応だったね。

全身から絶望感漂わせてさ、今にも床に膝つきそうになっちまってたよ。

「おいアナトール、勝手に落ち込んでないで、さっさとそいつの説明をふたりにしろ」

ひどく落ち込んでるのが分かってて、カゾットはそれでもアナトールに冷たく命令した。

「……カゾット。悪いが、それはあとですべてまとめて話す……」

「ふざけるな」

冷然としてアナトールの言葉を突っぱねる。

明らかに聞く耳無しって態度さ。

「もうお前の(また今度)はうんざりなんだよ。疑問が出たらその場ですぐに解決しろ。その勿体つけた態度にこっちは飽き飽きしてるってのを、いい加減で分かれってんだ!」

怒鳴りそうなのを無理に押し殺した声張り上げてカゾットがそう言うと、アナトールもついに観念したかね。

麻袋を拾い上げると、ふーっと長いため息ひとつついて口を開いた。

「……説明自体は簡単だ。シャミッソーがここへ来た。それだけのことだよ」

言い終わった瞬間だ。

ドンッてでかい音と一緒に、わずかに床が揺れた。

カゾットが力いっぱい床を蹴りつけた音さ。

これが何を意味してるかは、アナトールじゃなくても分かるだろ?

そう、本人でなくても分かるんだ。

だったら本人に分からないってことは無いさね。

困ったもんだよ。

アナトールの往生際の悪さときたら。

で、さすがにもうあきらめたんだろう。

今度は細かく話を始めたよ。

「恐らくだが……シャミッソーは今、無意識に館中を徘徊……違うな、徘徊というのは目的地も無く歩き続けることだ。シャミッソーは違う。ちゃんと目的の場所はある。問題はそこへ行くための知性もすでに失われているってことだ……」

ようやくまともに話し始めたアナトールの様子を見て、カゾットはフィリオとフィリアにベッドへ腰かけるように促した。

話が少し長引くだろうと考えての配慮さ。

「昨日少し話したと思うが、シャミッソーはすでに(変化)の最後に近づいてる。館の中を歩き回っているのも、その最後を迎えるための行動だ。目的の場所へと向かい、たどり着いたなら、そこで(変化)は終わる。止まるんじゃないぞ? 終わるんだ。何もかもがそこで終わる。シャミッソーという存在そのものが完全に終わるんだ……」

絶望感にさいなまれてる人間の話を聞くはあまり楽しいもんじゃない。

アナトールは実質、シャミッソーに対して父親のような感情を抱いていただけにその精神的な苦痛は大きいだろうよ。

が、カゾットの言い分のほうがまっとうなのも確かだ。

聞かずに過ごす選択肢もあるかもしれない。

知らずに過ごす選択肢もあるかもしれない。

しかしそれはよほど無神経でもない限り、耐えられないと思うんだが、どうだろうね。

最後は自分がどうなるのかも知らず、漫然と(変化)とやらを受け入れ、日々を過ごす。

とても正常な人間に耐えられることとは思えないよ。

だからこそ、するんだよ。

質問をね。

「あの……」

遠慮がちにまず一言。

フィリアが言葉を発した。

「シャミッソーさんは、一体どこに向かってるんですか?」

端的な質問。

ゆえに効果は絶大。

ある意味で話の核心だからね。

布越しに睨んでるカゾットを見ながらアナトールはまた重い口を開いたよ。小さいがはっきりとした言葉で。

「(館の腹)だ」

それが合図さ。

また長話の始まりだよ。

今度は特に長いからね。

お前さんも少しばかり覚悟しといておくれ。


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