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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【すがる者、すがられる者】

悲鳴というやつのいい意味の効果はひとつ。

それを聞いた人間が即座に緊急事態を把握できる点だ。

案の定、フィリアの悲鳴は呼び声以上の効果を発揮して、アナトールとカゾットを部屋へ招くことになったよ。

「どうした!!」

大きな声上げてアナトールがドアから入ってくると、フィリアはまずそれがアナトールだってことをしっかり確認してから、体ごとぶつかるみたいに抱きついた。

先日のカゾットにやらかした失敗をしないようにね。

まったく、この状態でよくまあそこまで気が回るよ。

普通に感心するね。

で、少し間を開けてから今度はカゾットも到着した。

「何事だ。この朝っぱらからでかい声出して」

フィリアに抱きつかれたアナトールの後ろで音も無くパタリとドアが閉まると同時に、またそれが開く。

そしてカゾット登場さ。

カゾットはフィリアに抱きつかれたアナトールを確認すると、とりあえず何があったのかを知るために周りを見て回ったよ。

無論、まずベッドの中で泣いてるフィリオが目に入ったが、どうも様子がおかしい。

自己中心的な奴は人のことなぞ気にもしないから、こういう場合の勘働きはまったくもって鈍いもんだが、カゾットは少なくともそういう連中ではないことは確かさ。

人の感情に敏感な人間に悪い奴はいない。

逆もまたしかり。

人間観察の基本だよ。

さて、カゾットが気になったのはフィリオのおびえ方だ。

こっちへ走り寄って抱きつかれるのも困るが、どうもフィリオは自分を見ておびえているように感じる。

理由はカゾットには分からないがね。

だがその事実だけは確かなんだよ。

自分を見ておびえてる。

これにはカゾットも少しばかり落ち込んだね。

別に自分の行為を棚に上げるわけじゃないが、どういう形にせよ人に嫌われて気分のいい人間なんていやしない。

それはカゾットでも変わらない。

それだけのことさ。

「……どうも理由はよく分からんが、フィリオにも嫌われたらしいな。ま、いいさ。もともと私は仲間外れは慣れてる。別にどうってことは……」

カゾットがえらく寂しげにそう言った途端だね。

最後まで言い終わらぬうちに、ベッドから猫みたいにフィリオは飛び出すと、カゾットに抱きついた。

「おおっと、とっ!」

ここもまた妙な気遣いの面白さだよ。

フィリオはつい今しがた見た夢の件があって、カゾットに対して一時的に大きな恐怖心を抱いてたが、それよりもカゾットの寂しそうな雰囲気がいたたまれなかったのさ。

感情がより強い感情を制する。

理性で制するのとは違う面白さがあるね。

恐怖を恋しさが覆い隠す。

なんとも微笑ましいじゃないか。

加えて、カゾットのちょっとした懸念。

胸元に飛び込まれるかもって心配についちゃあ、フィリオの身長の低さが功を奏した。

フィリオの頭はせいぜいカゾットのみぞおちに届く程度しか無かったからね。

元から単なる杞憂だったわけさ。

でもそこはそれ。

抱きつかれたら今度はまたほかの問題発生だ。

フィリオときたら、もう大泣きだよ。

さっきのフィリアの悲鳴が小さく感じるぐらいさ。

アナトールに抱きついただけである程度落ち着いたフィリアとは対照的に、フィリオはしばらく泣き止む様子が見えなかったよ。

「こいつは……どうやら、今朝は私も着替えをする必要が出たみたいだね……」

コートをぐしゃぐしゃに濡らされながら、ため息ついて言った台詞だがね。不思議とカゾットの顔は優しそうに笑ってたよ。


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