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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【行き着く先】

館に残された人間の末路が悲惨だろうことは、正直この時点でも十分伝わってた。

なにせシャミッソーについて語るアナトールの態度だけで、どうにも胸苦しくなるくらいだったからね。

だが、細かい事実もまた重要だ。

そのへんに関して、どうやらアナトールが固い口を開けたっていう点だけは幸運なのかもしれない。

「(館の腹)は、いやな言い方になるが我々のように館に残された者が最後にたどり着くいわば墓場だ。長い(変化)の時を経て、(時期)に達し、そこを目指す。その時にはすでに自分自身の意思は無い。ただそこへ向かい、終わりを迎える」

開き直ったアナトールの話し振りときたら、なんだか気持ち悪いほどだったよ。

今までの語りたがらずな態度はどこへやらだ。

まあ、考えようによっちゃあアナトールも吐き出したかったのかもしれない。

本心では。

秘密ってのはそれが大きければ大きいほど口から出したくなる。

こいつは人間の性だよ。

だからだろうね。

次に言ったアナトールの台詞は、とても今までのアナトールなら考えられなかった。

タガが外れるっていうのはこういうのを言うもんなんだろうさ。

「さあ、ほかに細かく聞きたいことがあれば何でも言ってくれ。知っていることなら何でも話そう。好きに質問してくれ」

さて、この申し出自体はとてもありがたいことなんだがね。

実のところ、急に言われるとかえって困ったりするところもある。

無論、質問は山ほどあるよ。

フィリオもフィリアも、長年ここにいたカゾットでさえも。

ただ、質問の絶対数はカゾットが一番少ないことは確かだろうね。

そしてそれがある種の余裕にもなる。

一体、なにから質問していいやら、ふたりして考え込んじまってるフィリオとフィリアの様子を見て、カゾットは笑いながらこう言ったよ。

「こりゃあ、質問を紙かなんかに箇条書きしたほうが手っ取り早いんじゃないのか?」

笑って言っちゃあいるが、実際なかなかいいアイディアだと思うね。

現実の話、質問の答えからさらにまた複数の質問が生じることもままある。

そのあたりを考えると、カゾットの提案はなんとも合理的だ。

でも、さ。

そんな合理的な提案した当人からいきなりひとつ目の質問が飛んでくるとは、アナトールもさすがに思わなかったろうね。

考えがまとまらなくって、だんまりになっちまったふたりに対する配慮からかは分からないが、カゾットはえらく軽い口調で言い始めたよ。

「じゃあまずは小手調べといこうかね。質問大会の前菜。もしくは食前酒かな?」

と、変わらず笑顔だったカゾットの顔に、心なしか、少し影が差したように見えた。

「……アナトール。メガネを外せ」

いきなり直球。

これには今まで考え込んでたフィリオとフィリアも思わず振り返ったね。

「なるほど……確かに、順当な質問だ」

多少、躊躇するかと思ったが、アナトールは素直に質問に応じた。

ああ、まるで当たり前のことみたいにね。

メガネの端に手をかけて一言、

「フィリオ、フィリア。くれぐれも怖がらず、冷静に見ておくれ。これがこの館における(変化)……その一部だ」

言い終えるかどうかで、アナトールはメガネを横滑りに取り外したよ。

目は閉じてた。

それがゆっくり開く。

悲鳴は上がらなかった。

というより、

上げられなかった、だね。

フィリオもフィリアも硬直しちまって、声上げる余裕なんざとても無かったよ。

覚悟してればなんでも耐えられると思ったら世の中、大間違いさ。

今まで真っ黒な色メガネで、まったく見ることのできなかったアナトールの目。

そいつは少なくとも人間の目じゃあ無かった。

橙色の瞳に縦長の瞳孔。

一言で表せって?

そうさね……まあ、簡単に言っちまえばそいつは、

(獣の目)だ。


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