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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【入浴】

浴室の造りはまさしくこの館ならではのものだったよ。

ドアを入ると、細長い脱衣所。

そこの横に大きくドアの無い風呂場への入り口。

壁があるっていっても、ほぼ中は丸見えさ。

徹底してるんだよ。この館のルールは。

ひとつの部屋にひとつのドア。

この原則に例外は無い。

フィリアは心底、思ったよ。

(自分がフィリオのような性格でなくてよかった)ってね。

変な話、フィリオは男だからカゾットの付き添いなんかもさほど気にしないだろう。

けど女の子はつらいね。

言えないことや見せたくないことなんて山のようにあるもんさ。

さて、

こいつは内緒だがフィリアはアナトールに浴室へ案内されたあと、即座に閉じられたドアを開けて真っ先に向かった場所がある。

まあ、勘のいいやつは分かるだろうがね。

トイレだよ。

なんたって丸一日以上も出すもの出してなかったんだ。

当たり前すぎて笑えないよ。

さっきアナトールから勝手にドアを開けるなと言われてほとんど間も置かずに約束破りしてることは感心しないが、まあこれは仕方ないことさ。

お前さんが男なのか女なのかは私には分からないけど、もしお前さんが女だったとしたら見ず知らずの男に「トイレに行きたいから案内してください」なんて言えるかい?

え?

フィリアはまだ十一の子供だろって?

まったく……お前さんはほんとにもの知らずだね。

いいかい?

人間ってのは年とともにプライドを切り捨てて成長していく生き物だ。

なぜかって?

必要ないからだよ。

生きるのにはね。

プライドで腹は膨れない。

邪魔なだけさ。

生きていくにはプライドなんて。

つまりさ、逆に言うなら人間が一番プライドが高い時期ってのは、自我に目覚めた子供のころって相場が決まってる。

お前さんも経験は無いかい?

下らない派閥意識で女と男が半目し合ったりなんてのを。

男の子が下手に女の子と遊ぼうもんなら、「オトコオンナ」なんて揶揄されて、しばらくは仲間外れ。

女の子も下手に男の子と仲良くしようもんなら、「好きなんじゃないの?」なんて難癖つけられて、しばらくはからかいの対象にされちまう。

下らないプライドの成せる業さね。

しかしさ、こいつを例に当てはめて考えると、実はちょいと面白いことも分かる。

暇なときに周りの大人を観察してみな。

往々にしてプライドの高い大人ってのは、心がガキのままでかくなっちまった連中だよ。

そういうやつはまず間違いなく人間としては最悪だ。

成長とともにちゃんとプライド切り捨ててこなかった証拠だよ。

こういう連中は十中八九、ろくな奴じゃあないから、お前さんたちも人と付き合う時にはその辺に気をつけな。

特に自慢好きの奴にまっとうなのはまずいない。

もし自分にも心当たりがあるとしたら、お前さん自身もよくよく注意するこったよ。


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