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figlio figlia  作者: 花街ナズナ
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【付き添い】

突然部屋に現れたカゾットは、そのまましばらく三人の様子を見ていた。

自分の嫌味にも言葉ひとつ返さず、全員妙なバランスで食卓の周りに位置している状況を不思議に思ったのは確かだね。

で、面倒になって切り出したよ。

「おーい、まさかシャミッソーじゃあるまいし、もう三人とも口がきけなくなったのか。それとも何か。私と話す口は持ち合わせちゃいないってか?」

この言葉にはさすがにこれ以上の沈黙はまずいと思ったんだろうね。

アナトールはあわてて返事したよ。

「いや、違うんだ。なんてことじゃないんだが、ちょっと、フィリオがひとりで湯に入るのが怖いと言ってぐずるものだから、どうしたものかと……」

「……そんなもん、怖いに決まってるだろ」

まるでナイフみたいにざっくりさ。

アナトールの返事をね。

あんまりはっきり否定されちまったもんだからアナトールもどうしていいか分からなくなって、その場に立ったまま動けなくなっちまったけど、そんなのまったくお構いなしに、カゾットはフィリオとフィリアのとこまで歩いてくとテーブルに食べかけのリンゴをそっと置いて、まだフィリアの上着に引っ付いたフィリオの手を優しく撫でてこう言ったよ。

「心配いらないよ。私が風呂の外で見ててやる。それなら怖かないだろ?」

いやはや、見事と言うべきだね。

目元こそ見えなかったが、カゾットの優しい口調と、口元に浮かべた微笑みはフィリオの不安をほんのちょいの間でほとんど取り除いちまったよ。

フィリオはフィリアの上着を掴んでた手をそのままカゾットの手に握り直してさ。

ようやくフィリアはフィリオの拘束を免れ、フィリオはフィリオで恐怖から解放された。

前も言ったかもだが、ことこうした状況にはカゾットよりアナトールのが気は利くのさ。

「さて、そういうわけだ。私はフィリオに付き添っていくよ」

この申し出は、アナトールも無論、ありがたいと思ったね。

まあ言われてみれば、カゾットの代わりにアナトールがフィリオに付き添ってもよかったんだが、それをしちまうと提案者のカゾットの手前、角が立つからさ。

そこは流れのままに、カゾットの好意に甘えることにしたわけだよ。

「……ありがとうカゾット。では、先にまずフィリアの入る浴室を用意しよう。確認するがフィリア、君はひとりでも平気だね?」

フィリアは弟の失態に、少しばかり恥ずかしそうな顔してたけど、すぐに大きく首を縦に振って、アナトールに答えたよ。

で、あとは簡単。

最初にまずアナトールの開けたドアからフィリアが浴室に入り、それからカゾットの開けたドアでフィリオとカゾットが仲良く手ぇつないで浴室に入ってった。

三人を送り出して、ひとり残ったアナトールは無意識に大きくため息ついちまったね。

なんとも今日って日は、この館にいる人間すべてにとって、えらくくたびれる日だったってわけさ。

フィリオしかり、フィリアしかり、アナトールしかり、カゾットしかり。

ただ、シャミッソーについちゃあ、

何とも言えないがね。


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