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「逃げるが勝ち!」でGO!

「ほほっ」


 アイヌの人が着る草皮衣(てたらぺ)のような着物をまとい、角髪(みずら)と言う独特な髪型をする、弥生時代の巫女(みこ)のような装いをした卑弥呼という名の子供が不敵に笑った。

 現れた子供に、彼が紬実佳から離れ、立ち上がって顔に包帯を巻き直しながら子供に()く。


「君。なんでここに」


 サンシャインにムーンライト、そして紬実佳が捜していた彼だが、同じく子供も下埴生を離れた彼を捜していた。

 しかし、子供にはコスモスの面々にはない彼を追うための手がかりがあった。それは彼が所持する黒いスマートフォンである。これは彼が沙門に属したときに子供が渡した物で、彼の居場所を子供に知らせた。

 子供はスマホからの通知を頼りに彼を追跡した。それでみなとみらくるに現れたのである。


「それは余のセリフじゃ。其方(そなた)、こんな所で何をしておる?」

「なにって」

「言えるわけなかろうな。其方は飼い主たる余の指示を無視した。きつい仕置きが必要じゃの」


 勝手に下埴生を離れた彼を責める子供の一方、


「あの、子供は」

「……くっ」


 ムーンライトとサンシャインの二人が、子供の登場に苦い顔をした。

 二年前を顧みる二人。エクリプスという名の闇の者を説得していたところ、突如として現れた子供が黄道の精霊を召喚し、二人は全く敵わなかった。

 二年前はトゥインクルがその身に秘めし力を覚醒して子供を追い払ったのだが、その子供に唯一対抗できるトゥインクルこと紬実佳はいま変身を解いている。彼に凍らされた体もまだ完全には回復してなく、そんな苦しい状態の二人に、


「来るがよい、我が同志よ」


 目を向けた子供が右手を挙げると、黒い装いで身を固めて黒の仮面をかぶった沙門三人が、二人は空から、もう一人は子供の後ろから姿を現した。

 後ろから現れた沙門の一人が子供に(ひざまず)き、これに子供が下知する。


「あそこにいる女二匹を殺せ」

「承知しました」

「油断は禁物ぞ。あの二匹、確かメテオとエクリプスがやられた女じゃ」

「あの、二人が……。あの二人は我らの中でも中々の実力者でした。お言葉ですが、我ら三人で始末できるでしょうか」

「案ずるな。既に他の同志も呼び寄せておる。数で(ほふ)るのじゃ、報酬ははずもうぞ」

「ハッ。いくぞお前ら。相手は手練れだ、心してかかれ」


 跪く一人が立ち上がり、他の二人に呼びかける。子供がサンシャインとムーンライトの殺害を命じた。

 沙門三人がサンシャインとムーンライトを囲んだところで、


「備えあれば憂いなしじゃな。さあ、どうしつけてやろうかの」


 子供が彼に振り返る。

 備えあれば憂いなし、と言った子供。彼の捜索に自ら足を運んだ子供だが、同志を呼び寄せていた。前に子供は彼の前で差し歯を落とす失態をさらしたが、この歯を差すことになった原因を恐れており、以来用心をして一人での()(かつ)な外出を控えている。

 子供は一見では怒りを感じられないが、人を食ったような態度が見受けられない。そんないつもとは違う雰囲気の子供に、警戒する彼の後ろでは、


「サンシャイン、ムーンライト。そんな……」


 紬実佳が沙門三人に囲まれたサンシャインとムーンライトを気に懸けるが、


「庚渡さん。君は動いちゃダメだ」


 彼が紬実佳を止める。


「でも」

「コスモスは、一度力を失うと戦えないんだろ?」

「う、うん」

「なら、動いちゃダメだ。何かできる訳でもないだろ? ……安心して。あの二人はともかく、君だけは僕が何とかするよ。この命を引き換えにしてでも」


 コスモスは変身を解くと、しばらくは再変身できないのだが、彼は一度力を失ったコスモスが再び力を得ることができない旨を子供から聞いている。これを彼は変に解釈して紬実佳が今は変身できない身であることを訊き、合っているために紬実佳がうなずいた。

 彼は張り切っている、好きな子を守るという意義に。つまり紬実佳のために命を燃やし尽くす気でいる。なお、敵対していたサンシャインとムーンライトに関しては見捨てるつもりでいる。

 盾にならんとする彼を紬実佳が憂う一方、子供が彼に問う。


「其方、そこの女はなんじゃ?」


 彼は答えず、この黙秘する彼を子供が問い詰める。


「なに余の知らぬ女と乳繰り合っておる。ぬしは余やアステリアよりも、そんな下女が好みなのか?」


 子供は紬実佳がトゥインクルとは気付いていなかった。コスモスの子は変身前と変身後で顔は変わっていないが、他人には顔が変身前後で結びつかない魔法に似たプロテクトがかかっており、このプロテクトを破るにはそれ用の力の行使か、変身する瞬間、あるいは解いた瞬間を見ないと前後が結び付くことはない。

 彼が反論に駆られる。好きな子の前で変なことを言うな、と。だが今は、


「好みかどうかは想像に任せるけど、この子、逃していいかな?」


 反論したい気持ちを抑えて紬実佳の身の安全を優先する。


「ほえ?」

「この子、コスモスとか沙門とか関係ない普通の子なんだ。どうしてかこの時が止まった空間の中で動けてるんだけど、戦いに巻き込まれてかわいそうだし、逃がしてあげたいんだ」


 紬実佳のために出まかせを言う彼。しかし、あまりにも苦しい。子供はそもそも闇の者とコスモスとの戦いを見続けている立場だ。闇の者は子供が力を授けているため、おのずと消去される。


「何を言うとるのじゃおぬしは。時が止まった空間で動ける女など、コスモスしか考えられぬ」


 子供が彼のハッタリなど難なく看破し、紬実佳をコスモスと見抜く。


「コスモスじゃないって。本当なんだ」

「黙れ。たとえコスモスではないにしても気に食わんのじゃ」

「なんだよ? 気に食わんって」

「余はそのような下女気に食わん。もっと良い女を選べ、余のような、のぉ」

「君は子供じゃないか。……仕方ない、庚渡さん」

「えっ?」


 彼が紬実佳の肩と両膝の裏に手を回した。

 そして、彼が持ち上げ、紬実佳をお姫様抱っこする。


「えええっ!?」


 突然彼から抱き上げられたことで紬実佳が心から動転し、


「逃げよう!」


 そんな紬実佳を連れて彼が逃亡を図った。


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