第64話「店長フルボッコじゃ」
店長が呼んでおる、なんじゃ?
「みどりちゃん、ちょっと来て~」
うむ、みどりを呼びおるぞ。
わらわとシロ、顔面蒼白なのじゃ。
一連のイタズラ責任で「お外でおやすみ」は嫌なのじゃ。
むむ、暗くなったのに店のドアをノックしておる。
ふふ、まぁ、誰がノックしておるのかは、わかっておるのじゃがな。
「誰かしら」
「ミコ、わらわが出るのでよい」
「不審者かも……」
「この村にそんなヤツおるものか!」
「コンちゃんはこわくないの?」
「わらわは神じゃぞ神!」
「なら、おまかせするけど……」
「まぁ、わらわが負けるのはミコくらいじゃが……しかしびっくりはするやもしれぬ」
「なら、私も行く」
ミコ、急に深刻な顔になって、
「ポン太くん達、戻って来たんじゃない?」
「ポン太達であれば、もっと騒がしかろう」
「そうね……この声は!」
「ふふ、村長なのじゃ、村長」
「何で村長さん……まさかコンちゃん!」
「その通りじゃ、ポン太達の里親なのじゃ」
「里親って、置いてきただけよね」
「まぁ、のう」
ふむ、ノックがうるさいゆえ、さっさと行くかの。
「ミコ、ポンや店長はどうしておるのじゃ?」
「ポンちゃんと店長さん……修羅場というかお説教の真っ最中」
「まぁ、村長はわらわ達で話すとしよう」
店のドアに村長がしがみついておる。
うむ、熟女村長、なかなかな器量と思うのじゃが、怒るとこわいのう。
「村長、何事じゃ」
「コン……ちゃん、タヌキ一家を置いていったでしょ」
「そうじゃが、何か?」
「なんで私の家にっ!」
「あの爺さんタヌキ、そば屋の店員で雇ったのであろうが」
「そ、それはそうだけど……」
村長、わらわの後ろに回ってしっぽを見ながら、
「あの一家はタヌキで……」
「で?」
「コン……ちゃんや……ミコ……ちゃんと一緒にいる方がいいと思うのよ」
「訳を聞きたいが……それより気になっておるのが、村長がわらわやミコを呼ぶ時口ごもる事じゃ」
「え?」
「何故『コン……ちゃん』となるのじゃ」
村長、わらわとミコを見て唇を歪めおる。
「コン……ちゃんは……」
「ほれ、また『コン』『ちゃん』の間に『……』あるのじゃ、何故じゃ」
「怒らないでね……、コン……ちゃんはキツネの妖怪よね、しっぽあるし」
「わらわは神で妖怪ではないのじゃっ!」
「ミコ……ちゃんはやっぱり妖怪? 雪女とか?」
ミコが雪女か、たまにそんな時があるのう。
「だから『ちゃん』ってつけてよいものかって」
「むう、なるほどのう……今さら『コンさま』と言われても確かにくすぐったいのう」
「だから、ちょっと言いにくいのよ」
「もう長い付き合いなのじゃがら、スルっと言えるようになってもらわんと困るのう」
「コン……ちゃん、コン……ちゃん、コン…ちゃん、コン…ちゃん」
「まぁ、『…』が少々短くなったのでよい、これからも精進するのじゃ」
「そんな事よりタヌキ一家!」
「あれはそば屋の店員ゆえ、村長の家で預かるのが筋であろう、え? 違うかの!」
「しっぽがある者同士でこっちに住む方が!」
足音二人分やって来おる。
店長とポンじゃ。
「どうしたの……村長さん、いらっしゃい」
「!!」
わらわもミコも、村長もびっくりじゃ。
店長顔がボコボコなのじゃ。
ポンのヤツ、本当にフルボッコじゃのう。
「どうかしましたか?」
店長、口調は普通じゃが、顔は赤あざ・青あざカラフルなのじゃ。
見てるわらわ達、その顔のせいで会話の内容吹っ飛んでしもうた。
「店長、ここはわらわとミコで話すゆえ、引っ込んでよいのじゃ」
ホラーな顔を見ておると、神のわらわでも「ゾッ」としてくるのじゃ。
「さあ、店長さん続きです、正直に言わないとボコボコなんですよ」
ポン、店長を引っ張って行ってしもうた。
「さて、村長、何の話じゃったかの?」
「い、いや、もういいわ」
「何を遠慮しておるのじゃ」
「いや……もう、今のを見ちゃったら……」
「?」
「いや……ボコボコだったから……」
「ああ、店長、ポンにやられておったのう」
「明日のパン、大丈夫かしら?」
「まぁ、店長、ポンがおらん廃人の時もパンを作っておったでの、体が覚えておるからよいのじゃ」
「それならいいけど……」
「しかしタヌキ一家をどうして引き取るのかの?」
「いや、本当はここで……って思っていたのよ」
「!!」
「ここ、すごく危険なのね、初めて知ったわ」
「ちょっ……村長、危険とはどーゆー事じゃ!」
「だってボコボコ……」
「あれはポンがやったのじゃ!」
「だって神楽の時だって……」
あの時も原因はポンだったのじゃ。
「ダム壊したの、コン…ちゃんよね?」
「む……」
まぁ、あのタヌキ一家は村長宅におさまったから、そういった噂は我慢するとしよう。
「コンちゃん、シロちゃん、ちょっといい?」
ふむ、店長が呼んでおる。
ようやくポンから解放されたようじゃが、顔面ボコボコじゃ。
「店長、ひどくやられたのう」
「店長さん、薬塗るでありますか」
おお、シロ、気がきくのう。
薬を塗られながら店長、ムスッとした顔をしておる。
「して、何用じゃ?」
「コンちゃん、シロちゃん、何か言う事ない?」
「?」
「みどりちゃん、ちょっと来て~」
「!」
店長の声にみどりが、あの仔タヌキが来おった。
店長、みどりを膝に乗せると、
「コンちゃんとシロちゃん、知ってるね?」
「うん、この二人に神社に連れて行かれて……」
わらわとシロ、顔面蒼白じゃ。
シロ、銃を構えておる。
店長、渋い顔をして、
「みどりちゃん、もういいよ」
「わたし、人間にされてびっくりして!」
「うん、いいから、ちょっと黙って」
「このキツネが!」
店長、みどりの頭を撫でおる。
みどり、落ち着いたのか黙ってしもうた。
「ねぇ、コンちゃんとシロちゃん、知ってたんだよね」
むう、シロは愛想笑いでごまかす気のようじゃ。
まぁ、わらわがしゃべる、説明するとするかの。
「わらわとシロ、ニオイで違うと思っておったのじゃ」
「言ってくれればよかったのに……」
「レッドがポンと思っておったでのう」
「しかし、だからって!」
「?」
「キスさせたりお腹グリグリさせたな!」
「!」
「あの時は知ってたんだよな!」
うわ、店長「マジ怒り」の目じゃ。
こーゆー時は言った者勝ちなのじゃ。
「あれはシロの策なのじゃ」
おお、店長の視線、シロに移動。
シロの銃口、わらわに向いておる。
『シロ、わらわに銃口を向けるかの』
『裏切り者に死を……であります』
『ゴット・シールドで効かぬ』
シロ、真顔で店長を見て、
「店長さん、毎日みどりとデートしていたであります」
「!」
「本官が冗談を言う前からでありますよ」
「!!」
シロ、みどりに手を伸ばしよる。
みどりの首には首輪と鈴がある。
レッドと同じよのう。
「みどりは毎日店長さんと首輪デートでありました」
「!!!」
「ポンちゃんに言いますよ?」
「あれは知らなかったから!」
『ふはは、シロ、店長をもてあそぶの、うまいのう』
『本官もお外でおやすみは嫌であります』
『しかしよく考えたらすごいのかの……』
『?』
『首輪でお散歩、どーゆープレイじゃ』
『これを聞いたらポンちゃん烈火のごとく怒るであります』
『店長死ぬやもしれんのう』
店長、唇を震わせながら、
「なんでもいい、コンちゃんとシロちゃん、お外でおや……」
「えー!」
「……」
「お外でおやすみは嫌なのじゃ!」
「本官もであります!」
「そ、そうだね、ポンちゃん取り込み忘れて今回の事件だし……」
「やったー!」
「よかったであります」
って、店長、わらわ達をにらんでおる。
「今、すげー喜んでたよね……」
うわ、喜ぶタイミング、間違ったのう。
ふむ、ここは今後一緒に暮らす事を考えて、
『これ、みどりとやら……』
『うわ、頭に声!!』
『わらわは神ゆえテレパシー自在じゃ』
『神……』
『わらわと店長、どっちち付いた方がよいかわかるであろう』
『わわわワタシにどうしろって言うのよ!』
『店長にしがみついて……』
ふふ、みどり、作戦を聞いてうなずいておる。
おお、店長に抱きついていきなりキスしおった。
「わたし、嫌だったけど、店長に無理やり!」
うむ、すごい演技じゃ。
「店長がイタズラした! イタズラした! イタズラした! クスン!」
「いや! あれは! その!」
む!
襖の向うに怒りのオーラを感じるぞ。
「では、二人で仲良くな」
わらわ、シロの手を引いて撤退じゃ。
うわ、襖が開いて般若面のポンが立っておる。
「店長さん、またその娘と!」
おお、修羅場じゃ。
『コンちゃん、見ないでいいでありますか?』
『見たいが……シロ、おぬし「とばっちり」食らわぬ自信あるかの?』
シロ、ブンブンと首を横に振っておる。
わらわだってそうなのじゃ。
リミッター解除のポンはおそろしいのじゃ。
「こんばんは~」
ふむ、夜分また客かの、今日は忙しいのう。
「誰じゃ、もう営業時間ではないのじゃ」
「こんばんは」
「なんじゃ、刑事ではないかの」
「お土産持参で来ました」
「それを早く言うのじゃ」
わらわ、刑事を店に通すのじゃ。
「はい、さつまあげ」
「おお、気がきくのう、お茶でも出すゆえ座るのじゃ」
「いえ……さっき村長さんの家に顔を出したら『ぽんた王国』の顔が」
「うむ、爺さんタヌキはそば屋に雇われたらしいのでのう」
「ポンちゃん……いますよね?」
「うむ、村長に聞いたのかの」
「おそろしい……つぶやいていましたが……」
「今、怒っておるゆえ、会わぬ方がよい」
「ポンちゃんは生きていたわけで」
「ふむ、で、なんじゃ」
「写真の男は現れましたか?」
「うむ……わらわは気付かんが」
「ヤツの死体、見つかっていません」
「死体がない……おぬしはあのゴットファーザーがまだ生きておるというのかのう」
「可能性があるという事です」
「結構な鉄砲水だったゆえ、死んでおるのではないかのう」
「まぁ、死んでいるなら……遺体発見に至らないのは残念ですが……」
「……」
「生きている時が問題です」
「仕返しに来るというのかの?」
「ヤツの組織は例の一件で壊滅状態」
「生きておれば……怒るところかのう」
刑事、手をヒラヒラさせながらドアを開けると、
「私もしばらくは村にいます……用心してください」
「ふむ、わかった」
「そして……できたら逮捕したいのです」
刑事、ニヤニヤしておる。
「おぬし、それが本音かの」
「それが仕事ですので」
むう、ともかく用心するとするかのう。
さて、今日も仕事かのう。
「ミコ~!」
「コンちゃん、なに?」
「ポンはどうしたかの?」
「ポンちゃん……配達よ」




