第65話「禁句『信楽焼きのタヌキ』」
ポンは帰って来たが…ゴットファーザーはまだ出てきておらんらしい。
組織が壊滅…あやつが生きておれば復讐されるやもしれん。
しかしまぁ、わらわやミコがおれば「術」で大丈夫なのじゃ。
撃ちたがりのミニスカポリスにみだら巫女もおるしの。
それに、やはり最強のポン先輩がおるのじゃ。
さて、今日も仕事かのう。
「ミコ~!」
「コンちゃん、なに?」
「ポンはどうしたかの?」
「ポンちゃん……配達よ」
「むう、早く帰って来んかのう」
そうじゃ、ポンは帰ってきたのじゃ。
さっさとレジを守ればよいのじゃ。
さすればわらわはまた、TVを見る「ポヤ~ン」とした日々を過ごせるのじゃ。
「コラ!」
「痛いぞミコ、何故わらわにチョップなのじゃ!」
「まったくコンちゃんサボることばっかり考えてモウ」
「わらわはお稲荷さまゆえ、おるだけでいいのじゃ」
「ポンちゃんすぐに帰って来るから、それまでレジをするのよ!」
「え~!」
「何が『え~!』ですかモウ!」
「待たぬか、ミコ」
台所に戻ろうとするミコをしっかり捕まえるのじゃ。
「何、コンちゃん」
「ミコだって店番できるであろう」
「モウ……本当にサボる事ばっかりなんだから」
「ミコ、わらわがどういった性格か、よく知っておろうが、長い付き合いなのじゃ!」
ミコ、唇を歪めて考えておるぞ。
わらわをにらみながら、
「コンちゃんとかけて笑点の司会者ととく、その心は?」
「おお、ミコ、いきなりじゃの」
わらわと日曜長寿番組の司会者とな。
ふむ、何じゃろうな。
「これ、ミコ、答えを教えるのじゃ」
「気分でやってるの」
「おお、うまいのう……って、それはほめてないであろう」
「本当でしょ」
ムカつくヤツよのう。
しかしよくよく考えるとミコの言う通りやもしれぬ、いや、きっとミコの言う通りじゃろう。
「本当でしょ」
「うむ、確かにそのようなのじゃ」
「きょ……今日はあっさり非を認めるわね」
「わらわは獣で雌キツネなのじゃ、気分屋当然なのじゃ」
「モウ……本当、サボる事ばっかりね」
「観光バスが来るやも知れんのじゃ」
「……」
「ポンが帰って来るまで一緒にいるのじゃ」
「もう、しょうがないわね~」
「やったー! ついでじゃが……」
「何?」
「今夜はカレーがいいのじゃ」
「はいはい、カレー好きなんて変なお稲荷さま」
ミコ、レジのお金を確かめながら、
「でも、ポンちゃんが元通りになってよかったわ」
「?」
「店番、コンちゃんだけだと不安なのよね」
「ふん、わらわだって店番できるのじゃ」
「ポンちゃんの方が安心できるのよね」
「なんじゃとー!」
「コンちゃん攻撃系やよけいな術ばっかりじゃない」
「むー!」
なんとかしてミコを「ギャフン」と言わせたいものじゃのう。
何かよい作戦はないかのう。
と、爺さんタヌキとポン太・ポン吉じゃ。
「なんじゃ、あやつら村長の家に決まったではなかったかのう」
「あわわ……」
「ミコ、どうしたのじゃ?」
「コンちゃん、追い返してよ!」
「はぁ? 何故じゃ?」
ドアが開いてカラカラ鳴るのじゃ。
ミコ、引きつった笑いでおかしいのう。
「朝からどうしたのじゃ」
「おはようございます……」
ふむ、ポン太、わらわをじっと見つめておる。
ちょっと怒っておらんかの。
「何用じゃ?」
「……」
「何の用じゃと聞いておるのじゃ」
「先日はどうもありがとうございました」
「??」
「コン姉のおかげで、村長さんの家に住めるようになりました」
「おお、その事か、気にするでない」
ポン太・ポン吉、わらわの袖を引っ張っておる。
客もおらんので店の隅へ移動じゃ。
ミコと爺さんタヌキがにらみあって火花をちらしておるが、まぁ二人の問題ゆえ、ほっとくかのう。
「なんじゃ、服を引っ張るでない」
「コン姉、あんまりです!」
「ポン太、いきなり何を言うのじゃ」
「うう……せっかく一緒にいられると思ったのに」
「?」
「コン姉、ボクらを村長の家に……」
おお、良いタイミングでシロも戻ってきた。
なんぞ刑事も一緒なのじゃ。
ポン吉はシロに走ったのう。
「みなさんどうしたでありますか?」
「ふむ、ポン太達が挨拶に来たのじゃ」
「それはそれは……」
うむ、しかしポン太・ポン吉、怒った目をしておる。
『コンちゃん、二人怒っているであります』
『里子に出したゆえ、怒っておるのじゃ』
「ポン吉、この家はもういっぱいで、これ以上住めないでありますよ」
「ウソだ~」
むう、まずいタイミングでみどりがおるのじゃ。
「あの子はどうして?」
ほーれ、きたぞ。
シロ、困っておる。
『コンちゃん何とか言って欲しいであります』
「まかせるのじゃ……ポン太はわらわが好きか?」
ふふ、顔を真っ赤にしてうなずいておるぞ。
「ポン吉はシロが好きなのであろう?」
「オレ、シロ姉好きだぜ!」
ふむ、元気がよいのう。
「ここで一緒に暮らせば、家族のようなものじゃ」
二人、ポカンとしてわらわを見ておる。
「家族なら結婚できんがいいかのう」
「!!」
「結婚できんが、いいかのう」
ポン太、肩を震わせながら、
「ボク、いつかきっと!」
「いつかきっと!」で固まってモジモジしておる。
「オレ、我慢する」
ポン吉、真顔で言うと何度もうなずきおるのう。
『コンちゃん、そんな事言っていいでありますか?』
『何が言いたいのじゃ』
『本官、店長さんと結婚したいであります』
シロめ、しれっと言いよる。
『大人になってプロポーズに来たら「タヌキと結婚できない」とか言えばいいのじゃ』
『結婚する気がないのに、そんな事言っては結婚詐欺にならないでありますか?』
『こーゆーのは大人のウソなのじゃ、詐欺にはならん』
『はぁ……』
『駆け引きなのじゃ』
しかし、刑事は何でおるのじゃ。
「これ、今日は何用じゃ」
「さっきシロとばったり出会ったわけですが」
「?」
「写真の男は現れたかと思い……」
「いや、見ておらぬが」
「ポンちゃんは戻っていますよね」
「うむ、ポンは戻っておる、今は学校に配達じゃ」
「そうですか……」
刑事、深刻な顔をしておる。
「いや……ヤツの死体があがってないのは言いましたよね」
「ゴットファーザーが生きていたら、ポンや爺さんタヌキに仕返しするとでも?」
「ですね……ここにいる全員が対象かもしれません」
「はぁ? 何故じゃ!」
「逮捕した連中、ここのダム工事妨害も詳しかったので……」
むう、わらわが術でどーこーしたのは伏せておかんといかんが……わらわ、普段はしっぽ丸出しゆえ、村人にはお稲荷さまバレバレじゃ。
なんと言っても尊敬のまなざしで見られるのは気分がよいでのう。
「あなたがやったのですか?」
「女の秘密なのじゃ」
「やったんですね……」
「これ、わらわのしっぽに触るでない、神のしっぽであるぞ」
「神の力でどーとでもなるなら、危険はなさそうですね」
「うむ、そうなのじゃ、そして詮索せんのがよいのう」
「しかし、ここで張り込ませてもらいます」
「?」
「神の力でヤツを捕まえてもらえば、労せずヤツを捕まえる事ができるわけですから」
「まぁ、邪魔にならねば……」
お、奥から店長じゃ。
「朝からにぎやかだけど……」
店長、笑っておるのは口調でわかるが……
皆、ドン引きじゃ。
見慣れたわらわやシロ、ミコも言葉なしじゃ。
ポンにやられた顔、ひどい事になっておる。
客商売ゆえ、しばらくは表に出ん方がよかろう。
「俺、村長さんの所に……」
店長が店を出ようとした時じゃ。
ゴットファーザー登場じゃ。
ドアが開いて、店長捕まってしもうた。
「よくも邪魔してくれたな……覚悟はできてるな」
「!!」
全員がゴットファーザーに視線釘付けじゃ。
店長、拳銃を突き付けられて……引きつっておるんじゃろうが、顔がボコボコで表情わからんのう。
「タヌキ爺! 覚悟はいいな!」
ゴットファーザー、まずは爺さんタヌキをにらむぞ。
「ポリ公の姉ちゃん、動くんじゃねえ!」
シロ、うなずいたぞ。
ゴットファーザーがにらむのに、銀玉鉄砲床に置きよる。
「キツネの姉ちゃん、なかなかの美人だな、俺の女になるか?」
「嫌じゃ」
「ふふ、まぁいい、刑事の爺さんも動くな」
ゴットファーザー、キョロキョロしてから、
「ここの店長を出せ!」
皆脱力じゃ。
ゴットファーザー、レジに立っているミコに、
「店長出せ、店長!」
「店長さんはその人です」
「何っ!」
ゴットファーザー、店長を見てビックリしておる。
「調べでは、こんな顔じゃなかったぞゴラ!」
と、わらわと、皆の視線が窓の外じゃ。
配達帰りのポンがバスケットをブンブン回しながら帰って来るのが見えるぞ。
ドアが開くとカラカラとベルの音。
「ただいま~、配達完了っ!」
うむ、元気があってよろしい。
ポン、ミーツ、ゴットファーザー、ウィズ、テンチョー。
「あーっ!」
ポン、びっくりしておる。
まぁ、普通の反応じゃな。
ゴットファーザー、微笑んで、
「そば屋のタヌキ……」
その時じゃ、わらわは感じたのじゃ。
いや、きっとミコも、シロも、長老もポン太もポン吉も、みどりも刑事も感じたはずじゃ。
そして、一番こわがっておるのは店長じゃ。
気付いておらんのはゴットファーザーくらいじゃろう。
ポンの背中にブラックホールが渦を巻いておるのじゃ。
ああ、ポン、打ち出の小槌を握ってダッシュ!
「い・ま・な・ん・て・いっ・たーっ!」
「うおっ! どわっ!」
「なんでわたしが焼き物タヌキなんですかモウ!」
ポン、何か勘違いしておらんかの?
誰も「信楽焼きのタヌキ」などと言っておらん。
「そば屋のタヌキ」と言うたのじゃ。
「ややややめっ! 死ぬっ!」
「よっくも、あんなのと間違えたなーっ!」
ポン、ゴットファーザーをめった打ちしておる。
ゴットファーザーの顔、どんどん店長と同じようになっていくのじゃ。
「コンちゃん、止めた方がよくないでありますか?」
「うむ、シロ、心配にはおよばん」
「?」
打ち出の小槌、折れてしまったのじゃ。
しかしポンのラッシュ、止まらんの。
おお、得物が壊れたのにようやく気付いたぞ。
終わる……終わらん!
フランスパンで攻撃再開じゃ。
「コンちゃん止めてっ!」
「み、ミコが止めればよいではないかっ!」
「店長さん死んじゃう」
うむ……店長とばっちりじゃのう。
しかし迂闊に「ストップ」を言うと火に油の気もする。
わらわもとばっちりは嫌なのじゃ。
こーゆー時は……そうじゃの。
「ポン!」
「な~に~コ~ン~ちゃ~ん~」
おお、呪いを、祟りを感じるぞ、おそろしや。
「フィニッシュじゃ!」
「飛んでけっ!」
豪快なスイング。
ゴットファーザー、天井を、屋根を突き破って場外ホームランなのじゃ。
朝なのに一番星キラリ。
店長はボロ雑巾みたいになって崩れ落ちておる。
ふむ、皆、茫然としておるのじゃ。
刑事には言わねばのう。
「これ、ゴットファーザー飛んで行ったぞ、文字通り『ホシ』になってしもうたのじゃ」
おお、刑事飛び出して行きおった。
ゴットファーザーを捕まえられるといいのう。
「ポン、手加減せぬか、店長死ぬぞ」
「きゃー! 店長さんどーしたんですか!」
ポン、おぬしがやったのじゃ、おぬしが!
長老やポン太・ポン吉、ポカンとしておる。
「ポン太、ポン吉よ、まだココに住みたいかの?」
おお、涙目で首を横に振っておる。
ポン太、わらわにしがみついて大泣きじゃ。
ポン吉もシロに抱かれて背中を震わせておる。
「これ、長老、おぬし、いかにおそろしいものをさらっていったか、わかっておったのか!」
長老、目を丸くして首を横に振っておる。
むう、ポン、おそろしや!
さすが主役なのじゃ!
コン「ふう、わらわのターン、終わったのじゃ」
ポン「コンちゃんおつかれさま~」
コン「うむ、ポンよ、店番を頑張るのじゃ」
ポン「本当にそれだけのためにわたしを助けに来たんですね……」
コン「本当にそう思うのかの?」
ポン「じゃ、なんでわたしに隠れてたんですか~」
コン「おぬし、ぽんた王国で楽しそうにしておったではないか」
ポン「しょうがなかったんですよ!」
コン「本当にそうかのう」
シロ「しかし本官は今回、楽しかったであります」
ポン「あ、シロちゃん、活躍してたもんね」
シロ「本官も主役をさせてもらえそうであります」
ポン「なんですってー!」
コン「なぬっ!」
シロ「ポンちゃん不在でOKでありました」
ポン「うう……」
シロ「コンちゃん本来なにもしないであります」
コン「シロ、言うの……しかしの」
シロ「なんでありますか、コンちゃん」
コン「わらわの先輩はポンだけなのじゃ」
ポン「きゃー、コンちゃん、さすが見る目があるっ!」
シロ「コンちゃんを味方につけねば本官のシリーズは無理でありますね」
コン『これ、シロ』
シロ『おお! テレパシーであります!』
コン『おぬしのシリーズはしばし待つのじゃ』
シロ『協力してくれるでありますか!』
コン『ほっといてもそのうち……なのじゃ』
シロ『了解であります』
コン『それにじゃ……ポンは大切にせねばならん』
シロ『先輩は敬うでありますか?』
コン『神輿は軽い方がよいのじゃ』
シロ『それでありますか……』
シロ「あ、ポンちゃん眠ったでありますよ」
コン「うむ、いろいろあって疲れたのであろう……こやつの苦難は続くのじゃ」
シロ「一体なにがあるでありますか?」
コン「苦難とはみどりの事じゃ」
シロ「ツンツン娘でありますね」
コン「そうなのじゃ、こやつがこれから活躍なのじゃ」
シロ「仔タヌキでありますよ?」
コン「こやつには……おでこの広い眼鏡……委員長顔設定だけではないのじゃ!」
シロ「ポンちゃん危機でありますか?」
コン「最近のヒロインは低年齢化が進んでおるでの」
シロ「でも……」
コン「なんじゃ、シロ」
シロ「ポンちゃん、いざとなると……」
シロ「すごい戦闘能力を発揮するであります」
コン「たしかにのう……ポンを敵に回すのは、確かに危険なのじゃ」




