第63話「店長、不幸のはじまり」
ポンが生きておった!
ニュース番組に「ちらっ」と映っておったのじゃ。
嬉しい…しかし喜んでばかりもおれんのじゃ!
ポンがのこのこ帰ってくれば、あれこれいらぬ事をしゃべるやも知れぬ。
そしたら今度はわらわが「お外でおやすみ」になってしまうっ!
さて、寝る時間じゃ。
隣にはシロがおるのじゃ。
「ポンちゃん生きていて、よかったでありますね」
「確かに……そうなのじゃが……」
「まだ、頭を抱えているでありますか?」
「シロ、おぬし、一連の事件が明らかになったら、いろいろまずいと思わんのかの?」
「はぁ……」
「ニュースではあの一帯はダムになるというではないか」
「治水のためであります……原因はコンちゃんのキツネの嫁入りではないですか?」
「しょうがないではないか! あの時はアレが一番良いと思ったのじゃ」
「普通に心臓マッサージでよかったでありますよ」
「あの『心臓モミモミ』の動きで悟られるやも知れんのでのう」
「あのポーズ、無くても術、発動できるであります」
「なんじゃとー! 今『できる』と言い切りおった!」
「どうでありますか?」
「まぁ、できるかの」
「でしょ……」
「何か策を練らんといかんのう」
「何もしないでよいのでは?」
「わらわ、ミコにやられるのは嫌じゃ、お外でおやすみも嫌なのじゃ」
「はぁ……」
「シロ、おぬし何を『のほほ~ん』としておるのじゃ、おぬしもミコに怒られるぞ! お外でおやすみじゃぞ」
「その事でありますが……」
「なんじゃ?」
「策をめぐらせばめぐらせるほど、悪くなる気がするであります」
「そうかのう……」
「ウソの上塗りしているうちにドツボ」
「むう……」
確かにシロの言う通りかもしらん。
しかし、わらわ、やっぱり怒られるのは嫌なのじゃ。
ミコの術は痛いし、ダンボールで寝るのは心がくじけるのじゃ。
「そうじゃ!」
「どうしたでありますか?」
「ウソをつき続ける……それがキツイのじゃ」
「……」
「わらわとシロが『ぽんた王国』に行ったのがバレないようにするには、関係者が口をつぐめばよかろう」
「で? どうするでありますか?」
「その一、ポンを狸汁」
「……」
「むう、ダメかの、その二はポンを崖から落とす……サスペンス劇場みたいじゃ」
「……」
「むー! では、ポンを殺すではどーかの」
「コンちゃん真面目にやってないでありますよ、全部ポンちゃん死んでしまうであります」
「ポンが黙っていてくれればのう~」
「おはよう……」
わらわ、朝は苦手じゃ。
やっとこさ起きてみたが、誰もおらんかの?
……つっ!
誰じゃわらを叩くのは!
振り向けばミコがおかんむりじゃ。
「これ、何故叩くのじゃ」
「当たり前でしょ!」
「む~」
「いつまで寝てるの!」
ミコ、わらわにチョップしながら、
「もうみんな出かけたわよ」
「もう、そんなに遅いのかの?」
「みんなごはん食べて行っちゃったのよ、レッドちゃんはシロちゃんと一緒に学校に行ってもらったわ」
「そうかの……わらわのごはんは?」
「早く食べてね、片付けられないから」
「わかったのじゃ……しかしシロは真面目よのう」
「何が?」
「昨夜は話込んだというのに、朝はしっかり起きたようじゃし」
「コンちゃんが遅すぎるのよ」
「よいではないか、わらわ雌キツネゆえ、気まぐれなのじゃ」
「レッドちゃんもいるんだから、しっかりしてよね」
「しっかり役はミコとシロに頼んだ」
「ポンちゃんに早く人の姿に戻ってほしいわ」
まぁ、あのタヌキはポンではないゆえ、無理かのう。
「むっ!」
今日の味噌汁はいつもと違うぞ!
というか……なんじゃこれは!
豆腐と油揚げ、たっぷりなのじゃ。
「今日の味噌汁は、えらい豪勢じゃのう~」
「ああ、具たくさんだから」
「誰ぞ誕生日かの?」
「今朝、コンちゃんの祠を掃除してたらおばあちゃんと会ってね」
「ふむ」
「コンちゃんのおかげで、お豆腐屋さんに跡取りができたらしいのよ、それでたくさん頂いたの」
「わらわ、よくわからんのじゃが……」
「この間、遠足があったでしょ」
「うむ」
「その遠足で跡取りさんを見つけたそうよ」
「むう……ようわからんが、そんな事を言っておったのかのう」
「おばあちゃん、コンちゃんが遠足先を見つけてくれたからって言ってたわ」
「まぁ、場所を教えたのは確かにわらわかのう」
ミコ、わらわの正面に座ってお茶を飲みながら、
「でも、コンちゃんよく知ってたわね」
ブッ!
いきなり何を言い出すのじゃ。
ミコ、遠足のチラシを見ながら、
「ぽんた王国……ねぇ」
「わらわ、神ゆえ、一瞬で検索なのじゃ」
「ふーん」
ミコ、ちらしをじっと見ておる。
村長お手製の遠足チラシじゃが……
「なんだかココ、知ってるような気がするのよね」
「ミコも山におったから知っておっても不思議あるめい」
「私は人柱でほとんど動いてなかったから……知らないはずなんだけど」
「さて、今日もおわりであります」
「やった~、あとは風呂と晩酌なのじゃ~」
「コンちゃん、五時から女であります」
「よいではないか~」
さて、ドアに閉店の札を下げて……
「し、シロっ!」
「どうしたでありますか?」
「あれを見るのじゃ」
「?」
そう、店の前の道路に店長がしゃがみ込んでおるのじゃ。
倒れておるのを抱き起こして……
「あれはポンではないかの!」
「ああ、ポンちゃん帰って来たでありますね」
「マズくないかの?」
「……まだ言ってるでありますか? まさかポンちゃんを亡き者にしようとか思ってないですよね?」
「むう……わらわ、あきらめたのじゃ」
「?」
「シロの言っていたようにウソをつき続けるのはやめじゃ」
「よかったであります」
「よけいな事を言い出しそうな時は『必殺心臓マッサージ』で口止めするのじゃ」
「コンちゃん……」
「店の前で見せつけられては、出迎えんといかんじゃろう、行くとするかの」
「……で、ありますね」
おお、店長、ポンをお姫さま抱っこしておる。
まぁ、今日はしかたないかの、我慢するか。
「うむ? 車が来たのう」
「コンちゃん、あれはポン吉達では?」
「むむ、確かにぽんた王国の連中じゃ」
「コンちゃん、あきらめるしかないであります」
「ふむ、何を言い出すのじゃ」
「本官、コンちゃんのように術は使えませんが、使えたとしても……」
「?」
「本官、口封じのためにポン吉達を殺せないでありますよ」
「むう……そうじゃのう……」
ああ、ポン太と目が合うてしもうた。
二人とも車を飛び出して走って来おる。
「コン姉!」
おお、飛びついてきおった。
ポン太、すごい嬉しそうじゃの。
「コン姉、おひさしぶりです!」
「うむ、ポン太よ、やってきたかの」
「はい、コン姉に会えるのを楽しみにしてました」
「ふふ、そうかのう」
まぁ、わらわの美貌であればしかたないかの。
「ちょ……ちょっとコンちゃん」
「なんじゃポン、よく帰ってきたのう」
「コンちゃん、ポン太達知ってるんですか?」
「うむ、遠足の下見はわらわ達だったからのう」
「いつ来たんですか!」
「よいではないか」
「一体いつの間に……」
「おぬしがさらわれてすぐに探しに行ったのじゃ」
「え……探しに来てくれたんですか!」
「当たり前じゃ、仲間、先輩じゃ」
「コンちゃん!」
おお、ポンめ、目を潤ませておる。
ふふふ、「持ち上げ」てから「叩き落とす」のが「お約束」なのじゃ。
「ポンがおらんと、わらわが仕事をせんといかんのでな」
ほーら、がっかり顔になった。
ポンをいじると楽しいのう。
「そ、それですか……それならなんで早く助けて……」
「ポン太やポン吉と仲良くやっておるようじゃったからの」
「……」
「ぽんた王国の女王さまに収まるというなら、それもしょうがないと思ったのじゃ」
これ、ポン太、甘えるではない。
この眼鏡仔タヌキななかなか可愛いが……
こやつのためにダンボールの刑と思うと……
まぁ、ここは大人として、神として、分別ある態度で潔く罰を……
「卑弥呼さまーっ!」
おお、なんじゃ、爺さんタヌキがミコに向かって一直線なのじゃ。
おお、ミコも引っ込んでカギまでかけおった。
ミコと爺さんタヌキ、ドアを挟んで押したり引いたりなのじゃ。
夕飯は微妙な空気じゃ。
「ボク、コン姉と一緒に食事出来て嬉しいです!」
うむ、ポン太はニコニコしておる。
「オレ、シロ姉と一緒で最高!」
ポン吉も笑顔じゃ。
「しかたないから、いてやってるんだから!」
むう、みどりはツンツンしておるが、どことなく嬉しいようじゃの。
「りょうてに、めがね!」
レッド、ポン太とみどりに挟まれて軽いパニックじゃ。
「久しぶりにお姉さまとごはん、嬉しい」
たまおも微妙なオーラを放っておる。
「また、こうして卑弥呼さまと食事が出来て嬉しいかぎりです」
長老も嬉しいようじゃの。
問題はまず店長じゃ……ポンにやられてボコボコなのじゃ。
ポンは……みどりの爆弾発言にまだ「カッ」としておる。
『のう、シロ、どうしたものよのう……』
『店長さんフルボッコでありました、おそろしい』
『あの「イタズラ」は「お腹グリグリ」ではないかの?』
『……で、ありますね』
『「キス」は……ままかのう』
『……で、ありますね』
『「お風呂」もわらわ達の言葉ではないかの?』
『……で、ありますね』
面白がって店長をからかったが、これからがこわいのじゃ。
そして気まずいオーラを放っておるのがミコじゃ。
こやつ、長老と何かあったようじゃが、一体何があったのかのう?
「はぁ? 昔、ミコが術をかけたのかの!」
「そうよ、人柱やってて動けなかった時にね」
ミコ、洗い物をやりながら語りおる。
「まさか、ここで出会うとは」
「よかったではないか、昔の……」
「もう、今はここの暮らしがあるの!」
「ふむ……」
「コンちゃん、何かいい手はないかしら?」
「一緒に住めば……」
「コンちゃん、いいの?」
はて、何か困るかのう。
「わらわは別に困らん」
「私、あの三人がいたら、ここ、追い出されるわ」
「むう、ポンがシロやレッド、たまおを連れて来た時もめたでのう」
ふむ、そうか!
ミコは責任を取ってココを出て行かんといかんのじゃ。
「うむ、さらばミコ」
「ごはん、誰が作ってるのかしら?」
「!!」
そうじゃ、ミコはここに必要不可欠じゃ。
「いっそあの三人を亡き者に……」
ミコめ、さっきのわらわと同じ事を言いよる。
問題の三人は……大の字になって寝ておるのう。
お腹いっぱいで眠っておるのか、ミコが一服盛ったのかは知らんが……
「ミコ、わらわが問題解決したら、『貸し』じゃぞ」
「?」
ふふ、ダンボールを準備してじゃ、ポン太、ポン吉、長老を入れて……
『ミコ、みどりはどうしたものかの?』
『みどりちゃんはいいわ』
『?』
『店長さんとみどりちゃんの問題だし』
『ふむ……』
『ポン太くんとみどりちゃん、いっぺんにいなくなったらレッドちゃん泣きそうだし……』
なるほど……ではダンボールをガムテープで封印。
「コンちゃん、まさか……」
「心優しい里親にプレゼントなのじゃ」
ふふ、そう、心優しい里親がちゃんとおるのじゃ。
むむ、暗くなったのに店のドアをノックしておる。
ふふ、まぁ、誰がノックしておるのかは、わかっておるのじゃがな。
「誰かしら」
「ミコ、わらわが出るのでよい」
「不審者かも……」




