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追放された最弱の【幻・土】魔法使い、前世のアニオタ知識で『神作画』を完全再現して無双する〜五感すら騙すエフェクトで、敵が勝手に自滅する。今更ブラック実家に戻れと言われてももう遅い〜  作者: のりチーズ
第一章:幻と土で無双する

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第11話:いきなり襲われたら反応できない作戦


「……はい?」


ヨマがそのあまりにも素晴らしいネーミングセンスに呆然と声を漏らした。


「……それ、本当に言ってるの?」


「本気も本気だ。いいか? 作戦内容は……」


「大丈夫。作戦名がすでに説明しきってたから」


「そうか?」


こういう緊迫した状況で作戦内容を伝えるの、頭脳派キャラみたいでめちゃくちゃ憧れてたので少し残念だ。まあ今は長い時間をかけて説明している暇はないので助かった。


「そんじゃ。3、2、1でいくぞ」

「うん、分かった」


ヨマが姿勢を低くし、静かに魔力を練り上げる気配が伝わってくる。

その物静かな顔に宿る真剣な光を視界の端に収めながら、俺は前方の敵をじっと見据えた。


(いいぞいいぞ、そのまま俺たちに背を向けたままでいてくれよ……)


お面の二人組が、俺たちの潜む茂みに完全に背を向けながら、ガサゴソと乱暴に草むらを掻き分けている。完全に無防備。まさに最高の奇襲シチュエーションだ。


「3」


俺は、隣のヨマにギリギリ聞こえるほどの囁き声で、最初のカウントを刻んだ。

と同時に、脳内のアニオタ妄想力を一気にトップギアまで沸騰させる。


「2」

奇襲の場合、使うのは実体がない幻創魔法より、物理的な質量を持つ土魔法のほうがいいだろう。

イメージするのは、あいつらが1ミリも予想できない足元の死角から飛び出し、一撃で気絶させる、抜群の硬度と超重量を誇る鋼鉄の如き土のハンマーだ。


「――1」


【土魔法:創造クラフト】


瞬間、それまで草むらを掻き分ける音しか響いていなかったタルタロス大森林に、ズゥン……と、重低音の地響きが鳴り響いた。


「……ん? おい、なんかおかしく――」


そいつが周囲の魔力の急変に気づき、セリフを言い切るよりも最速。

そいつの真後ろの地面が爆発するように弾け飛び、凄まじい風切り音を伴って、質量の塊である巨大な土のハンマーが、神作画のような迫力で振り落とされる。


「おい、後ろだ!」


だが、もう一人の相方が、後ろから迫っている危機の正体を鋭く叫んでしまった。


「――え?」


しかし、叫びを聞いたそいつが、その攻撃を避けられるはずなどなかった。

そいつが首を後ろへ振り向く、そのわずか数秒よりも圧倒的に早く、背後から無慈悲な一撃が脳頭へ振り下ろされたのだ。


ドガァァァンッ!!


「ぐぁ……っ!」


鈍い唸り声を鳴らしたあと、そいつは受け止めた質量に耐えきれず頭から地面へと沈み、ピクリとも動かなくなった。


「チッ……! 誰だ!」


仲間を瞬殺されたもう一人の相手は、ここでようやくこちら側の存在に気づいたらしい。

慌てて身構え、周囲を警戒する。


――だが、今更気づいたところでもう遅い。


「残念だったね」


「なに?」


男が声の方へ視線を動かした瞬間、茂みから弾丸のように飛び出したヨマが、自らの手から1本の縄を撃ち出した。


シュルルルルッ!


と、鋭い風を鳴らしたその縄は、男が魔法を放つ隙さえ与えず、一瞬にして相手の全身をがんじがらめに締め上げ、その場に縫い付けるようにして身動きを完全に止めてみせた。

よし、もう出ても大丈夫だな。

そう判断した俺たちは、不敵なポーカーフェイスの鉄面を完璧に維持したまま、捕らえたそいつの前に姿を現した。


「くそ……! 貴様らは一体……」


全身を縄で完全に拘束されたお面の男が、地面に這いつくばりながら、驚愕と怒りの混じった声で呪詛を吐き散らす。

そいつを見下しながら、俺は言った。


「見て分かんねえか? 魔法騎士だよ。お前らを退治しに来たんだ」


「なに……? 見られていたのか……!? しかし、俺たちがそんなヘマをするはずが――」


「おいおい、負け犬の遠吠えにしては少し締まりがないんじゃないか?」


俺はフッと口元を吊り上げ、前世のアニメで何百回と観てきた『敵の情報を吐かせる冷徹な黒幕ムーブ』へと移行した。

地面にのされてピクリとも動かない男を見ながらこう言った。


「質問に答えろ。じゃなきゃ、お前もこいつと同じでしばらく眠ることになるぞ?」


「無駄話をする時間は僕たちにはないからね。手短に答えてくれると助かるよ」


「く……っ!」


男は心底悔しそうに奥歯をギリリと噛み締めたあと、俺たちの放つ威圧感に気圧されたように、諦めて声を絞り出した。


「何が、聞きたい……」


「さっきお前らの口から出た『スロース』っていうやつ……いかにも怪しそうだな。そいつは今どこにいて、何を企んでやがる」


「……フッ、残念だったな。俺みたいな格下の団員には、スロース様の情報は愚か、拝謁することすら許されていない。お前らの望むような情報は、俺は持ってはいねえよ」


(なんだ、こいつら格下だったのかよ。道理でこんなに弱いわけだわ)


少しの落胆と失望を抱えながらも、俺はすぐに次の質問へと脳内を切り替えることにした。


「じゃあ、お前らは何の目的があって、こんな不気味な場所をうろついてんだ?」


俺が冷徹な鉄面を崩さないまま問い詰めると、男はお面の下でギロリと目を血走らせた。


「……何の目的、だと? ハハ、俺なんかが知るものか。俺たちはただ、上からこのリニシア周辺を探索して、何があったか本隊に伝えろと命令されただけだ」


「つまり、詳しいことは何も知らないってことだな……?」


「ああ。そのとおりだ」


そいつは苛立ちを隠せない様子ながらも、恐怖からか、持っている情報を洗いざらい淡々と吐いてくれた。


……なるほどな。


つまりスロースってのは、アニメによくいる「序盤では名前だけが明かされて不穏な影を落とすタイプの強ボス」ってことか。


(いいねいいね。こういうの、めちゃくちゃテンション上がるぞ!)


まさに前世の画面の向こうで観てきたアニメの特大イベントに直面して、俺の脳内のアニオタ細胞の興奮度は最高潮に達していた。


「ねえ。ねえってば、フェクト」


脳内で絶賛大はしゃぎ(ニヤニヤ)していると、不意にヨマにガシガシと肩を揺さぶられた。


「……ん? どうした?」


「どうしたって……。さっきから言ってるでしょ。この2人をどうするかって」


「え? あ、ああ! もちろん真剣に聞いていたに決まってるだろ?」


「ふーん」


絶対に見透かされているようなジト目を向けながらも、ヨマは話を続けた。


「僕のおすすめとしては、やっぱり2人とも捕虜として拘束して、騎士団本部に持ってくのが一番だと思うけど……」


「馬鹿言うなよ。俺たちは徒歩でここまで来てるんだぞ? 運ぶにはこいつらは大きすぎるし、第一、まだ敵がいないとも限らないんだ。こいつらを連れたままだと、次の奇襲に対応できなくなるかもしれないだろ?」


そう、まだ大罪団の奴らが周囲に潜んでいないとも言い切れない。ここで油断するのは三流のすることだ。


「……そうだよね。……やっぱり、こうするしかないか」


「ん? こうするって何を――」


俺がそのセリフを言い終わるよりも一瞬早く、ヨマは冷酷な

行動に移った。

ヨマは、まだ意識があってベラベラと喋っていた方の腹を、一切の躊躇なく本気で殴りつけたのだ。


ドカッ!!


「ぐぉ……っ!」


鈍い唸り声を残して、そいつの意識が完全に途切れてガクリと首を垂れる。

まさかの超アグレッシブな光景に、俺は思わず唖然とした。すると、ヨマはなんでもないかのように涼しい顔で言い放った。


「とりあえず、こいつらの身動きを止めておこうか。それで、騎士団本部に帰ったあと、また回収に来ればいいよ」


「えっと……まあ……今はそれが得策かもな」


内心で引きながらも、とりあえずヨマの案に乗ることにし、俺たちは手際よくこいつらをそこら辺の巨木の頑丈な幹に縛り付けた。


「よし、そんじゃあこいつらを討伐したことを報告に――」


行こう、とそう口にしようとした、まさに次の瞬間だった。


ザバアァァァン!!


ここから少し離れた原生林の奥深くから、陽の光を切り裂くように、天を突くほどの特大の水しぶきが激しく噴ち上がった。


「ん? なんだろう、あれ?」


「水しぶき? 一体何が……」


……待てよ?


確かヒートとエレーナが使える基本属性の魔法は炎魔法だ。

つまり、あれはレイル先輩とルナの班が放ったものに違いない。

そして、わざわざ上空に向けてあんな派手な魔法の弾を放つシチュエーションなど、理由は一つしかあり得ない。


『もし助けが必要になったら、どんな方法でもいいからすぐに知らせるんだ。』


レイル先輩のあの言葉が、脳裏を鮮烈によぎる。


……助けを必要とするということは、あっちの班で「なにか」が起きたということだ。


「ヨマ、急ぐぞ。水しぶきの方向だ」


「え? あ、うん!」


すぐさま踵を返し、俺たちは水しぶきの上がった方角へと全力で地を蹴った。


巨木の間を爆速で駆け出す俺の胸の中で、アニオタとしてのフラグ察知能力が、ビンビンと最高に熱い警報を鳴らし始めていた。


(キタキタキタ!!! 他の班が絶体絶命のピンチに陥ったまさにその瞬間、別行動をしていた主人公が戦場に乱入する、超王道のヒーローイベントじゃないか!!!)


前世の画面の向こうで数々の「主人公がギリギリで間に合う神展開」を履修してきた俺だからこそ、このコンマ一秒の遅れすら許されない緊迫感に最高にゾクゾクしていた。


(待ってろよ! ヒーローってのは、いつだって遅れて登場するってやつだ!)


心の中で最高にワクワクした思いを滾らせながら、俺たちはタルタロス大森林を、爆速で駆け抜け続けた。

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