↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/16

ChapterⅣ

第1話 エルフは皆殺し


 魔国ジーン 市街地


 夕暮れに染まる市街地へ、二つの闇が進軍してきた。

 ロシアンマフィアのスカー。そして中国マフィアのジョンイル。

 スカーの目的はただ一つ。娘を奪還すること。そのため、異世界を繋ぐ力を持つ悠を従え、この魔国ジーンへと戦争を仕掛ける。

 一方のジョンイルは、この侵攻を好機と見て動いた。ロシア勢の陰に隠れ、魔国をそのまま乗っ取ろうと、五百人の武装幹部を率いてゲートをくぐった。


 乾いた砂の上に着地したイザが、楽しげに空を仰ぐ。


 「よっと」


 ドサッと足元に砂煙が立ち、彼は両手を広げて叫んだ。


 「ほほう! ここが異世界ってやつか! 空気は澄んでるし、空も青い。すんばらしい!」


 その声が響いたのは、エルフたちがひしめく商店街。奇妙な人間の姿に、あちこちでざわめきが起きる。


 「なんだあれ……」「人間?」「誰か早く兵士に──」


 視線を浴びながらも、イザはお構いなしに振り返る。


 「おい、斧出せ」


 言われた部下が無言で斧を差し出すと、彼はそれを受け取り、悠然と市場の奥――肉売り場へ歩き出した。


 「これは何の肉? ずいぶんと臭いけどな」


 腐臭が鼻をつく。イザが鼻をひくつかせながらそう言うと、近くにいたエルフの商人が嘲るように応じた。


 「それは……貴様ら人間の肉だよ」


 にやりと歪んだ笑み。その挑発に、イザの笑顔が更に深まった。


 「へぇ。とっても旨そうだ。……お前の肉のほうがな」


 斧が唸りを上げて振り下ろされた。


 血飛沫が空を裂き、エルフの頭蓋は砕け、崩れ落ちる。即死だった。

 次の瞬間、悲鳴が爆発する。



 商人たち、買い物客、子供、女――四方八方へ蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。イザは両腕を広げて笑いながら叫ぶ。


 「おいおい! 逃げんなって! どうせもう逃げ場なんか、ねぇんだからさ!」


 背後の武装兵たちが、即座に銃を構える。


 「撃て!」


 ウージーの連射音が、街の静寂を切り裂いた。


 飛び散る血、崩れる肉体、倒れる命。

 魔国ジーンの市場は、一瞬にして地獄と化した。


 そこへ、バールを片手に中年の男が現れた。腹が突き出たメタボ体型、額に脂汗を浮かべ、血の匂いに顔をしかめる。


 「……あーあー。こんなに血まみれになっちゃってよォ」


 中国マフィアの副頭領、ムニョ。ボス・パクの夫であり、実戦経験は乏しいが、今回の異世界制圧作戦の指揮を執る立場にある。彼の目は、惨劇の中心に立つイザを捉えていた。


 イザが笑いながら振り返る。


 「やっぱこれだよなぁ。これが楽しいんだわ、兄貴」


第2話 突入


 魔国ジーン 市街地外縁


 「ここが……魔国か」


 悠は足元に広がる不気味な大地を見下ろし、呟いた。

 青黒い空の下、見たこともない尖塔が並び、血の気を感じさせる空気が肌にまとわりつく。背後には、俺たちと共にゲートを越えてきた百名規模の重装兵たちが整列していた。


 だが、足を踏み入れてすぐ、歓迎の意志など一切ないことを思い知らされた。鋭い掛け声とともに、槍を構えた兵士たちが周囲を囲む。


 「動くな!」


 雑魚どもが何人いようが関係ねぇ。ザックが肩をすくめて、つまらなそうに言った。


 「じゃあ、さっそく戦闘開始だ」


 数名の兵が前に出て、AKを構える。次の瞬間―

 連射された銃弾が鎧を易々と貫き、敵兵たちは血飛沫を上げて倒れていった。


 「はぁ……。葉巻よこせ」


 そう言ったザックに、部下が無言で細い筒を差し出す。彼はジュッと火を点け、紫煙をくゆらせた。


 片腕を挙げて叫んだ。


 「おい、手錠外してくれよ。動きにくくてしょうがねぇんだよ」


 「我慢しろ。さあ、進むぞ」


 ザックの声とともに隊列が前へと進み始めた、次の瞬間――空が裂けた。


 「そぉらあああ!!」


 巨大な影が天から落下する。見上げる暇もなく、地面が砕け、轟音が周囲を飲み込んだ。地響きと同時に、地面が波打つように揺れる。


 「はぁ?」


 目を凝らせば、瓦礫の中に佇む屈強な巨人。両腕に岩を埋め込んだような怪物。その名を悠は知っていた。


 「見つけたぞ、久しいな、探偵」


 「……誰かと思えば、どこぞの海賊の裏切り者じゃねぇか」


 「クライス王からの命だ。お前を排除する。この世界に、これ以上人間を連れ込ませはしない」


 「クライスめ……。やっぱ味方じゃなかったってわけか」


 ザックが眉をひそめ、銃を構えた部下たちに命じた。


 「誰だか知らねぇが、撃て」


 銃弾が放たれるも、まるで通じない。怪物の皮膚は岩のように硬く、傷一つつかない。


 「貴様らに用はない。爆打!」


 怪物――ガーゴンが拳を振り下ろすと、地面が爆ぜ、爆風が周囲を飲み込んだ。ザックたちは吹き飛ばされ、次々と地面に叩きつけられ意識を失う。


 「くそっ……」


 悠は咳き込みながら立ち上がり、ポケットからリボルバーを抜いた。標的を捉え、引き金を引く――。


 「効かん!」


 ガシッと両肩を掴まれ、体が宙を舞った。次の瞬間、レンガ造りの家の壁を突き破り、俺の体は叩きつけられる。


 「うぐぁ……!」


 「終わりだ。手刀・強刃!」


 振り下ろされる手刀の光が視界を切り裂く。悠は、とっさに両手の手錠のチェーンを刃にぶつけた。


 カチンッ! 火花が散り、金属音が空を切る。

 チェーンが真っ二つに裂け、両手が自由になった。


 「……やってくれたな、化け物がぁ!」


 立ち上がり、拳を握りしめ、右ストレートをガーゴンの顔面へと叩き込む――が、奴は微動だにしない。


 「かゆいぞ、探偵」


 その冷笑に吐き気すら覚えた。だが、まだ手はある。


 「マフィアの銃、借りるぞ」


 足元に転がっていたAKを拾い上げ、トリガーを引いた。


 「効かんと言っているだろうが」


 ――その瞬間。


 一発の銃弾が、ガーゴンの右目に命中した。


 「ぐああああああ!! 目があああ!!!」


 巨体がよろけ、そのまま膝をつく。目元を押さえ、苦悶に満ちた声を上げながらのたうち回る。


 「どんだけ強靭な肉体でも……目玉だけは別みてぇだなぁ」


 間髪入れず、悠は左目にも引き金を引いた。


 銃声が響く。

 ガーゴンの体が硬直し、その場に崩れ落ちた。


 静寂が、瓦礫の街に戻ってきた。


第3話 惨勝


 魔国ジーン タワー五十階・王室


 漆黒の玉座の前、ジーン王は怒声を上げていた。


 「何をしておる! 兵士をもっと動員せんか!!」


 窓の外には、街中で繰り広げられる火災と血煙。中国マフィアとロシアンマフィアによる無差別虐殺が王都を包んでいた。兵士たちは混乱し、統率など崩壊している。


 そんな中、背後の扉が静かに開いた。高笑いのような声が、王の耳に届いた。


 「ふふ、困ってるようね、国王さん」


 ジーンは振り向きざまに絶叫した。


 「貴様は……ヴェンデッタか!?」


 真紅のローブをまとった女魔術師が、無表情で右腕を振り上げる。


 「――最奥呪法、《スピア》」


 空間が歪んだかと思えば、鋭い黒い槍が虚空から形成され、轟音と共にジーンへと放たれた。


 「なっ……!」


 王は咄嗟に身を翻し、空中に飛び上がってそれを回避。槍は王座を貫き、石壁へめり込んで炸裂した。


 「裏切る気か、貴様ッ! 喰らえ、爆発魔法!」


 慌てて放たれた魔法は、力なく輝く小さな火球だった。ヴェンデッタはそれを見下ろすように呟いた。


 「呪法、《ミラージュ》」


 前方に立ち現れた巨大な魔法陣が盾のように浮かび上がり、火球を受け止める。そして、反射――。


 「まさか……!? うおおおおっ!!」


 火球は逆流し、王の胸元で炸裂した。轟音と閃光。爆煙の中で、ジーンの身体は宙に舞い、地に叩きつけられた。すでに息はない。玉座の王は、黒焦げの塊と化した。


 その様子を柱の陰から見ていた一人の男が、そっと姿を現す。


 「やったのか……ヴェンデッタ」


 彼――メントと呼ばれる男は、床に横たわる焼け爛れた死体を見下ろしながら言った。


 「私はただ、この死体が欲しかっただけよ」


 ヴェンデッタは冷たい声でそう告げると、そっと死体に触れた。


 「……そんなもので良ければ差し上げよう。今日からは私が、この崩壊寸前の魔国の王だ」


 メントがそう宣言すると、ヴェンデッタは肩をすくめただけだった。


 「好きにすればいいわ。……じゃあ、幸運を祈る」


 言い残し、彼女は虚空へと溶けるように姿を消した。


 


 その頃――王城から遠く離れた市街の一角にある、朽ちたバー。その扉が**バタン!**と爆音と共に蹴破られた。


 斧を片手に現れたのは、狂気を纏う男・イザ。目の前の店員が声を発する間もなく、その斧が振り下ろされ、頭蓋を真っ二つに裂いた。


 「酒があるんだろ? だったら、おれらにも出してくれよ!!」


 客たちが悲鳴を上げる中、イザはもう片手に持っていたウージーを振り回し、バン! バン! と立て続けに数名の頭部を吹き飛ばした。


 「みんな、蜂の巣になりなさい♪」


 甲高い声が響き、続けざまにトンプソンを構えたパクが、カウンターの奥に逃げようとしていたエルフの市民たちを容赦なく撃ち抜いていく。


 「葉巻を」


 指を鳴らすと、背後から少女のような顔立ちの部下――ニムが近づき、黙って葉巻に火を灯した。


 ジュッ、と火が走り、パクはふぅっと紫煙を吐き出した。


 「この先に収容所があるわ。人間の捕虜たちがいる。警備も厳しいでしょうけど……みんな、死なないようについてきてね」


 イザが笑いながら叫んだ。


 「さあ武器を構えろ! 行くぞ、お前らァ!!」


第4話 捕虜


 荒廃した路地を、イザたちマフィアの一団が血と硝煙の匂いを引き連れて進んでいた。道中では、怯える民間人や応戦するエルフ兵たちが彼らの行く手を阻もうとしたが、いずれも返り血を浴びて倒れ、道端に転がるばかりだった。


 「鎧なんてよ……ショットガンでぶち抜けるんだ、意味ねぇよな」

 イザが肩に担いだ銃口から立ち上る煙を一瞥し、唾を吐いた。


 二ムが淡々と答える。

 「でも、あれが奴らにとっては最後の護身グッズらしいよ」


 「もう少しで目的地だよ。全員、気を引き締めて」

 パクが静かに告げた時、西収容所の門が視界に入った。


 


 ――魔国ジーン、西収容所。


 その門前には、すでに武装したエルフ兵三十名が待ち構えていた。

 「中国マフィアに警告する! 今すぐ投降しろ!」

 顔を紅潮させ、猟銃を構える兵士たち。その眼差しは恐怖と焦燥に満ちていた。


 「どうする、パク」

 ムニョが低く囁いた。


 「ふふん、まぁ見てて」

 パクは肩に担いでいたRPGをゆっくりと構え、弾を装填した。


 「……冗談だろ、まさか……くそ! 全員、爆発魔法の準備をっ!」


 その叫びは、轟音にかき消された。

 「発射」


 ロケット弾が空気を裂き、兵士たちの群れに吸い込まれるように突き刺さった。次の瞬間、轟音と閃光。

 爆発と共に彼らの身体は空中に舞い、肉片と骨と臓腑が地面に降り注いだ。


 


 「さあ牢屋を開けていくぞ、ついてこい!」

 イザが斧を掲げて叫び、マフィアのメンバーたちが施設内に突入。次々に収容室の扉をこじ開け、捕らえられていた人間たちを解放していった。


 「た、助かったの……?」

 解放された韓国人の女性が呆然と呟いた。周囲では泣き叫ぶ声、戸惑う声が入り混じる。


 「全員、聞いてくれ!」

 イザの怒号がそれをかき消した。


 「俺たちは中国マフィア・ジョンイルだ。お前たちを助けに来た!」


 彼の声には怒りと情熱がこもっていた。


 「お前たちは、この地に連れて来られるまでに、酷い仕打ちを受けたはずだ! だったら仕返ししようぜ! 魔国? 異世界? そんなもんごと乗っ取ってやるんだ!」


 ざわめきが広がった。戸惑っていた捕虜たちの中に、やがて火がともる。


 「幸運なことに、この国には武器があちこちに転がってる。この猟銃で奴らの首を飛ばしてやろうじゃねぇか!」


 男の一人――ロシア出身の捕虜が、震える声で応じた。

 「そ、そうだ……奴らを殺して……家族の元へ帰るんだ!」


 「その意気だ!」

 イザは吼えるように続けた。

 「国籍なんて関係ない! 俺たちは“人間”として団結するんだ! 奴らを根絶やしにしてやる!」


 捕虜たち三十名から怒声にも似た歓声が上がった。興奮と覚悟が混じり合い、空気は一変する。


 イザはその勢いのまま、武器庫からライフルや弾薬を分配し、解放された人々に手渡していった。


 「次は北だ! 捕虜をもっと解放するぞ、ついて来い!」


 狂気と希望を混ぜ合わせたような行進が、再び始まった。彼らの標的は、北、南、そして東――すべての収容所に囚われた人間たち。マフィアの旗のもとに、人間の反撃が始まろうとしていた。


第5話 奴隷化


 目が覚めると、強風の音が耳を打つ。風の音が強すぎて、周囲の状況がなかなか掴めない。目を開けて、周りを見渡すと、どうやら悠は南収容所の牢屋にいるらしい。


 目の前にいるのはザックだが、彼もまだ暴れている。隣の牢屋からは、ザックの怒鳴り声が響いてくる。


「出せ!おい!」


 その声が響く中、どこか遠くで兵士たちの笑い声が聞こえてきた。しかしその笑い声もすぐに静まり、サイレンが鳴り響く。


 警告音が続き、兵士たちは慌てて警備に戻っていく。


 耳を澄ませて、外の音に集中した。爆発音や銃声が絶え間なく鳴り響き、どうやら何者かと兵士たちが戦闘を繰り広げているようだ。


 突然、音が止んだ。しばらく静寂が続き、そして何人かの影がこちらに近づいてくる。血まみれの捕虜たちが、悠たちの目の前に現れた。


「よぉ、こんちわ。」


 その声に驚いて振り返ると、現れたのは一人の男だった。彼は穏やかな笑みを浮かべていて、すぐに俺を見て言った。


「おい、外してやれよ。」


 隣の捕虜がチェーンカッターで俺の鎖を外してくれる。


「いやぁ、あんたの噂は聞いてる。世界を繋げる能力者ね。」


 その言葉に悠は少し驚いた。世界を繋げる能力者と言われることがあったが、こんな場所で聞くとは思ってもみなかった。


「そんな能力、俺が欲しいくらいだよ。」


 男は続けた。「申し遅れた、俺らはジョンイル、中国から来た。イザって者だ。」


 警戒を強めながら質問した。「何が目的だ?」


 イザは目を細め、軽く笑った。「この世界を転覆させるのさ。人間の手でな。」


 その瞬間、バン!と銃声が響き、俺は一瞬で状況を察した。兵士たちがこちらに向かって侵攻してくる。


「全員そこを動くな!投降すれば命は保証する!」


 イザは少し肩をすくめた。「話はあとだな、じゃあ共闘といこう。いいな?探偵さん。」


 突然、近くで一人の捕虜が叫んで逃げ出した。「うわああああ!もういやだあああ!家に帰してくれええええ!」


「おい!逃げちゃダメでしょ!」と、二ムが叫びながらその捕虜の背中を撃ち抜いた。


 一気に状況が混乱し、イザがその場を制するように言葉を放つ。「お前ら、武器を持てや。戦争だァ!」


 その一言で、戦闘が始まった。


第6話 共闘


 イザの掛け声とともに、仲間たちが一斉に銃を発射した。エルフの兵士たちは次々と倒れていき、銃声が響き渡る。銃の圧政が支配する戦場の中、彼らの死が、まるで無機質なように感じられた。


「きもっちいいなぁあああ!」と、イザが叫びながら兵士の剣を拾い上げ、その刃を兵士たちに向かって振り下ろす。ザクッ、ザクッと、赤い鎧を貫いて血しぶきが飛び散った。


「オイ!ハンマーよこせ!!」と、イザが叫んだ。捕虜の一人が大きな鉄槌を渡すと、イザはそれを受け取り、倒れた兵士に向かって振りかざす。


「や、やめろ...頼む...」兵士は震えながら命乞いをするが、イザは冷徹に言い放った。


「聞こえねぇよカスがぁ!」


 ズドン、ズドン! 何度も、何度も、兵士の頭部を潰す音が響き渡る。激しくて、容赦のないその音が、戦場の恐ろしさを物語っていた。


「なんて奴だよ…」俺は唖然としてその光景を見ていた。こんな残虐な行動、これは本当にマフィアの仕業なのか? 俺の胸には、言葉にできないような嫌悪感が湧き上がった。


 その時、突如として空間がひとひらと変わり、転移してきた人物がいた。顔を見た瞬間、すぐにそれが誰だかわかった。


「火炎魔法ブレア!」


 メント?が口にすると、彼の周囲に炎が膨れ上がり、まるで魔法の波動のように捕虜たちの元に炎が燃え広がった。


捕虜たちの悲鳴が響く。炎が彼らを包み込み、その恐怖が一気に広がった。


「クソ...!裏切った医者か!」悠は声を荒げた。メント?、あの時助けてくれた医者が、今度は明確に敵として目の前に立ちはだかっている。


 メント?は冷静に、まるで以前のような余裕のある態度で言った。「久しぶりだな、探偵。まだ連れがいるんだ。もう少しで来るぞ。」


 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、空から轟音が響き、天から何かが降ってきた。


「は?」悠は思わず声を漏らした。


 空から降ってきたのは、巨大な肉体を持つ怪物だった。全身は鎧のように筋肉に覆われ、その顔面にはニヤリとした笑顔が浮かんでいる。どこか不気味なその姿に、俺の体が一瞬硬直した。


 メント?はその怪物を指差しながら言った。「紹介しよう。かつて勇者ルーシェたちが撃破し損ねた魔王グラウンドだ。」


 魔王の唸り声が響く。「グルルルル...」


 その巨大な魔王は、猛獣のように唸り声を上げながら、俺たちに迫ってきた。


第7話 返り血の窮地


 魔王は唸り声を上げながら、俺たちに迫ってきた。あの姿、どこかグレイ宇宙人のような気味悪さを感じる。


 イザは苛立ちを隠せない様子で周りの仲間に指示を飛ばしていた。「どしたよ、何やってんだ撃てよお前ら!」


 その声に焦りが滲んでいるように感じた。まるで状況が自分の想像を超えているかのようだ。


「あれが魔王なのか?」思わず声を漏らす。魔王というには、あまりにも異質な姿だった。


 メント?が小さく呟いた。「さぁ頼んだぞ…」とだけ言い残し、どこかに転移していった。


 その後、何もかもが一気に破壊的な展開へと向かった。


 部下の一人がバールで魔王に切りかかるが、あっさりと折れてしまい、次の瞬間、魔王はその部下の顔面をバコンと殴りつけた。


「へ?」部下の目が驚愕に見開かれた瞬間、そのまま血しぶきを上げて命を落とした。


「グゲゲギャギョ」魔王は手を合わせ、呪文を唱え始める。その姿がさらに異様で、俺は何かを感じ取った。


「何だあいつは...」兵士たちがざわつき、何かに気づいたのか低い声で話し始めた。


「奴の存在は平兵士にも伝わってねぇのか...」俺はその時、魔王が唱えていた呪文を思い出しながら、息を呑んだ。


 その瞬間、魔王の周囲が青い炎で燃え上がり、周囲の空気が一変した。「青い炎!?あの学園長が使ってたやつか!」頭の中で急速に情報がつながる。


「クソ、リンク!」リンクを使って、悠はなんとか元の世界に避難することに成功した。しかし、収容所ではその瞬間、豪炎が舞い上がり、マフィアも兵士も構わず焼き尽くしていた。


兵士たちの悲鳴が上がり、焼け焦げた肉の匂いが辺りを包んだ。


「熱い!熱い!やめろおお!」部下たちの叫びが響く中、かつてのボスでさえも、青い炎に焼かれ消えていった。


「いやあああああああ!!!」声が上がり、パクがその炎に巻き込まれていく。


 イザはその光景に目を見開いて混乱していた。「あぁクソが」


「とりあえず走って離れるぞ!」ムニョが叫び、三人はできるだけ炎から距離を取って必死に走った。


 一定の距離を取ったところで、イザはウージーを取り出し、魔王に銃口を向けた。「全員死ねぇ!」


 全弾を魔王に撃ち込んだが、魔王はびくともせず、まるで傷ひとつ負わなかった。


「クソ、今ので全部弾使い切った」イザが悔しそうに呟く。その顔には絶望が浮かんでいた。


 だが、魔王はそれに気づくと、ドシドシと足音を響かせながらこちらに迫ってきた。


「オイ...逃げなきゃまずい...」ムニョが焦った声を上げたが、その言葉が終わる前に、魔王の拳がムニョの顔面を貫通した。


「グばはぁ!!!」ムニョの体はそのまま地面に崩れ落ち、大量の血が周りに広がった。


「こっちくんなぁ!」二ムがハンドガンで撃ちながら叫ぶが、魔王はその手を無視して、顔を握り潰した。


「兄貴...二ム...」イザはその光景をただ見つめ、沈黙のまま呟いた。


「頼むよ、助けてくれよ」イザが魔王に懇願するが、魔王は気味の悪い笑い声を上げた。「えへえ?」


 その時、悠は一気に決断を下す。「こっちだクソ野郎!」魔王がこちらを向いた瞬間、猟銃を構え撃ったが、魔王にはまるで効いていない。


「一旦引く!こっちだ走れ!」悠はイザの肩を掴んで、全速力で走り出した。


 魔王はその後ろを、怒りに満ちた表情で追いかけてくる。「ぐげげ...」その唸り声が耳をつんざくように響いた。


 追いつかれる...その瞬間、空から一筋の光が降ってきた。


 魔王の前に降り立ったのは、カイラだった。


「貴様が...母を殺した...!」カイラが魔王を睨みつけ、声を震わせながら言った。


 魔王はその言葉を聞いて、逆に不敵に笑いながら応じた。その瞬間、最強の戦力同士のリベンジマッチが始まろうとしていた。


第8話 序幕~王の誕生


 ティード海賊団による東京侵攻から、二日が経過した。


 焦土と化した学園の中庭で、カイラや生き残った生徒たちは静かに卒業式を迎えていた。それはあまりにも早すぎる卒業であり、戦いの爪痕が色濃く残る儀式でもあった。


 翌日、午前十一時。アルタイル城、王宮。


 威厳に満ちた玉座に腰掛けるクライス王。その前に、緊張の面持ちで立つ四人の若者たち。かつての学生だった彼らは、今や新たなる使命を背負おうとしていた。


「これより新軍隊“デジャヴ”の入団式を執り行う」

 サナの澄んだ声が、玉座の間に響いた。「新たな騎士よ、前へ」


「はい!今行きます!」元気よく声を上げたのはエリーだった。道着姿のポニーテールの少女が一歩前に出ると、彼女に続いて、ギャバット・バーン、そしてクロスボウを背負ったぐるぐる眼鏡の男――ハンドル・クラッパーが跪いた。


 クライスが厳かに告げる。「大魔術学校で好成績を収めた武道家エリー・カット、狙撃手ハンドル・クラッパー、ギャバット・バーンは、我が新軍隊の幹部としてここに任命する」


「押忍!」と力強く声を上げたエリーに、隣のハンドルは思わず苦笑した。


 エリー・カットは、打撃技を得意とする近接戦のエキスパートだ。その強さは学園内でも群を抜いており、彼女に真っ向勝負で勝てる者はいなかった。


 一方、ハンドルは臆病で温厚な性格だ。学業成績こそ並以下だったが、両親が猟師だったこともあり、狙撃の腕は天賦の才とも呼べるほどの正確さを誇っていた。


 その後方で、カイラがぽつりと呟いた。「……こんなことしてる場合かよ」


 だが式典は、止まることなく進んでいった。


 一時間後。


 王位継承の儀が始まり、大扉が開かれると、ガルル王子が静かに登壇した。彼は玉座の前に跪き、父であるクライスと目を合わせる。


「王のマントを、そなたに授ける」


 クライスはゆっくりと自らの青いマントを脱ぎ、それをガルルに手渡した。王子はそれを丁寧に受け取り、胸に抱いた。


 こうして、アルタイル王国の新たなる王が、正式に誕生した。


 さらに一時間が経過した頃――


「早速だが、任務だ」


 声の調子はいつものクライスだったが、その眼差しはどこか決意に満ちていた。


「我が国は、魔国ジーンへの侵攻を正式に開始する」


 一瞬、室内の空気が凍った。


「魔国の連中は狂っている。エルフだろうが人間だろうが殺し、誘拐し、拉致し、拷問する。そういう連中だ。近隣のハッタン王国、ボルケーノ王国にもすでに被害は出ている。我々はこれを野放しにするわけにはいかない。敵勢力の排除と、完全なる無力化を――君たちにはそれを託したい」


 カイラが前に出て、問う。「敵の兵力は?」


「貧困国家だ。我々の兵力の方が上だろう」とクライスは即答した。


 そして一拍置いて、静かに付け加えた。「私はもう王ではない。これからは“ただのクライス”だ。そんな私が命令するなど気が引ける……だが、私もこの戦いに参加する」


 思わずエリーが声を上げた。「ちょ、ちょっと待ってください! クライスが行かなくても――!」


 クライスはその言葉を遮るように静かに言った。「私は、罪を重ねすぎた。人間に対しても、この世界のエルフたちに対してもだ。だからこそ、この戦争で世界を救わなければ、もう……“あいつ”に顔向けできない」


 その言葉に、カイラはそっと目を伏せた。


「母さんのことだね……」


「カイラ。この戦争が終わったら、君に話しておかなければならないことがある」


 彼はまっすぐに父を見返し、小さくうなずいた。「ええ、聞きますよ。でもその前に、世界を救わなきゃね」


 その決意の瞳を前に、クライスは小さく頷いた。


 こうして、カイラとクライス――そしてアルタイル王国軍は、狂気に支配された魔国ジーンへと進軍を開始した。歴史に刻まれる、新たな戦争の幕が、今、上がろうとしていた。


第9話 追放


「貴様が……母を殺した、憎むべき悪魔……!」


 カイラの声が怒りに震える。魔王は、その憎悪を真正面から浴びながらも、ヘラヘラと唇を歪め、薄ら笑いを浮かべたまま彼女を見つめていた。


「召喚術——リヴァイアサン、イカリ、フレイム、サイクロン、ダイス!」


 その瞬間、カイラの周囲が白く眩く輝き始める。空が一気に黒く染まり、大地は唸るように轟いた。


「全部の神様か!?」悠が思わず声を上げた。

 カイラは自らが契約したすべての神々を、この場に召喚しようとしていた。


 空が裂け、次々と神々が舞い降りる。雷と炎、氷と風、古代の力が混ざり合い、現世に降臨するその様は、まるで天地開闢の光景だった。


 カイラは冷たく命じる。「撃ち落とせ。奥義《エンド》」


 無数の神々が、細く鋭利な光線を放ち、一斉に魔王へと浴びせた。


 異世界における魔法光線は、細ければ細いほど威力が増すという特性を持つ。そしてこの《エンド光線》は、必中必殺。受けた者は確実に死に至る——細く鋭いそれは、文字通りこの世で最強の攻撃手段と呼ばれていた。


「ぎゃああああああああああああ!!!!」


 魔王が絶叫し、身をよじらせ、のたうつ。


「今だ!デジャヴ総員、総攻撃を仕掛けろ!」


 カイラの号令と同時に、仲間たちが次々と飛び出した。


「よっしゃきたーッ!」

 エリーが拳を構え、地を蹴って一直線に魔王へと殴りかかる。


「強化魔法、バースト! おらぁっ!」

 ギャバットは咆哮を上げ、巨大な鉄槌を振り下ろした。


 クライスもまた剣を構えて駆けつけ、鋭い斬撃を繰り出す。


「久しぶりだな……決着をつけよう」


 魔王は苦悶の叫びを上げ、全身から黒煙を吹き上げた。


「なんかわからんけど、いいぞ。これで魔王は死ぬ!」悠がそう呟いたそのとき——


 突然、空間が歪んだ。


「やってくれるな、最強の戦力……火炎魔法!」


 転移してきたのは、白衣を纏った一人の男。メントと名乗ったその男は、医者の風貌をしていたが、明らかにただの人間ではなかった。彼が放った火球は、カイラの胸元に直撃する——が、煙の中から彼女が無傷で現れる。


「……お前、誰だよ」


「ただ医者の皮を被っただけの魔族さ」メントはニヤリと口角を吊り上げた。


 カイラは鋭く睨んだ。「で? 何の計算もなしに出てきたわけじゃないだろ?」


「君の父親はクライス王だ」

 メントは不意に、言葉の刃を放った。


 その一言に、カイラの動きが一瞬止まる。その刹那の隙を見逃さず——


「グランド! タイムトラベルだぁあああ!!!」

 瀕死の魔王が最後の力を振り絞り、笑いながら詠唱を始める。


「げへへ……ぐがげげがぐげ!」


 カイラの目の前に巨大なゲートが出現した。その先に広がっていたのは、視界のすべてを覆い尽くす、暴風の吹き荒れる謎の空間だった。


「奥義《トルネード》!」

 メントが再び詠唱し、猛烈な突風が吹き上がる。


「オイ、まじか……くそっ!」


 風に押されるようにして、カイラの体がゲートへと吸い込まれていく。


「カイラッ!!」ギャバットが叫ぶ。


 振り返ったカイラは、必死に手を伸ばしながら叫んだ。「ギャバット! あとは頼む!」


 その声を最後に、彼女の姿はゲートの奥へと消えていった。


「カイラァァァァァァァアアアアアアア!!!」

 クライスが絶叫し、怒りと悲しみをそのまま剣に叩き込む。


「貴様ァア!!」

 瀕死の魔王に向かって、剣を振り上げ、ザクッ! ザクッ! と何度も眼球を突き刺した。


 最後の咆哮とともに、剣をその首に突き立て——斬り裂いた。


 魔王は絶命し、長き因縁は、血の中で静かに終焉を迎えた。


第10話 オワリノハジマリ


 メントが笑みを浮かべながら言った。


「カイラは追放した。これで魔王の役目もおしまいだ」


 その言葉に、クライスが殺気を孕んだ声で応じた。


「絶対に逃がさない」


 彼の周囲には、デジャヴの仲間たちが自然と集まり、守りの陣形を築く。


 そこへ、不意にしなやかな足音が響いた。


「ごきげんよう、新しい軍隊の皆さん」


 優雅に現れたのは、ヴェンデッタ。闇に溶け込むような黒衣をまとい、冷ややかな微笑を浮かべていた。


 ギャバットが前に出る。


「クライス王、時間を稼ぐ。こいつは俺らが引き受ける」


 クライスが一瞬だけためらい、それでも力強くうなずいた。


「無理はするな。危ないと思ったらすぐに退け」


「押忍!了解っ!」


 エリーが拳を握り、気勢を上げる。


 だが、ヴェンデッタは余裕のまなざしを向けた。


「あなたたちじゃ、私には勝てないわよ」


「それはどうかな!」


 ギャバットの怒声とともに魔力が揺らぎ始めた。


「最奥呪法《スピア》」


 静かに詠唱したヴェンデッタの手元に、黒き槍が形成されかけたその時。


「氷結魔法《ボール》!」


 鋭い声と共に飛来した氷の球が、ヴェンデッタの術式をかき乱した。


「所長……!?」


 驚く悠の視線の先には、ロイスが立っていた。


「魔王退治の英雄が、こんなところで何を?」


 ヴェンデッタが皮肉を込めて問いかける。


「かつての仲間に加勢しに来たのよ。あんたこそ、私たちには勝てない」


 ロイスの言葉に、ヴェンデッタは口角を上げる。


「じゃあ私も仲間を呼ばないとね」


「何……?」


「《死体操術》」


 不気味な詠唱とともに、二体の影が地面から姿を現す。


「レガース……そして、キャプテン・ティード……!」


 緑に爛れた皮膚、崩れかけた肉体。アンデッドとなったふたりのかつての強敵が、唸り声とともに立っていた。


「馬鹿な……アレンが殺したはずじゃ……!」


 ギャバットが愕然と呟くと、ティードが低く笑った。


「俺たちはアンデッド。崇高なるヴェンデッタ様の力で蘇ったのさ」


 悠が静かに口を開く。


「……レガース。あいつ、もともと死体だったんだな。ダイアリーの戦闘の時から……」


 ヴェンデッタが、ふとロイスを見つめる。


「長く人間の世界に居座ってたようだけど、目的は何? 魔法使いさん」


 ロイスはまっすぐに答えた。


「私は人間の世界で学んだの。彼らの“優しさ”を」


「私たちは何も悪くない人間をさらい、食料にし、商品にしてきた。この事実から、私たちは目を背けてきた。……もう、やめましょう?」


「だから私が、異世界と人間世界の平和を繋ぐ架け橋になる」


 ヴェンデッタは鼻で笑いながら応じる。


「へぇ、そんなエルフは今までいなかったわ」


 そして一歩踏み出し、冷たい声で言い放つ。


「もういいかしら? ……死んでもらうわ、《最奥呪法ス――》」


 バァン――!


 銃声が響いた。ヴェンデッタの身体が仰け反り、その場に倒れる。


「な、なぜ……意識が……戻ったの……!?」


 彼女の背後には、ショットガンを構えるティードがいた。


「悪いな、魔女。俺を支配するには技量が足りなかったようだ」


「なにっ……!」


 メントもその光景に凍りついた。


「こうなったら……計画の最終段階に移行する!」


 剣を構えるクライスが叫ぶ。


「計画? 何をする気だ」


 その瞬間、メントが悠を見据えて叫ぶ。


「探偵! 世界を繋げられるのはお前たちだけじゃない!」


「この私も――《ウォーク》!!」


 ゴゴゴゴ……ッ! 大地が震え、天が裂ける。


「なんだよ、これ……」


 悠が呆然とつぶやく。


 空に浮かぶのは――もうひとつの地球。人間の世界そのものだった。


「わかるか? 探偵」


 メントの声が響く。


「これが月の軌道にぶつかれば、お前たちの世界は終わりだ。人間世界が崩壊すれば、隣接したこの異世界も地球の破片で滅びる」


「始めようじゃないか。――滅亡を!!」


 

 ――魔国ジーン 南収容所


 世界滅亡まで、あと六時間。


第11話 始期


 メントは高台の上から見下ろすように口を開いた。まるで語り部のように、ゆっくりと、しかし確信に満ちた声で。


「九百年前、この異世界には二つの種族が存在していた。人間とエルフ。互いに助け合い、共に暮らしていたんだ。争いもなく、まるで夢のような日々だった」


 空に浮かぶ地球を背に、メントの瞳にはかつての光景がよみがえっているかのようだった。


「だが、すべては一人の王によって壊された」


 声が低くなる。


「ロード家、初代国王――ファースト・クライス。彼は種族の共存を否定した。人間とエルフが手を取り合う姿を憎み、やがて呪いや魔法に没頭し、どちらか一方を根絶やしにしようとしたんだ」


 悠が小さく息をのむ。


「そして完成したのが“根絶やしの呪い”だ。エルフたちの精神を歪め、人間を憎むように仕向けた。やがて彼らは人間を奴隷とし、食料にするようになった……おぞましい歴史だよ」


 メントの声には怒りも悲しみも混じっていた。だがそれ以上に、燃えるような執念があった。


「そして最近、新たに目覚めた魔法がある――《ウォーク》。並行世界を接続し、自由に行き来できる禁断の力だ。探偵よ、君が使うその力……それも“魔法”に他ならない」


 悠が叫ぶ。


「だったら、俺や雪はどうしてそんな魔法を使えるんだよ!?」


「魔法は、ある条件下で非魔法使いに転移することがある。魔法を宿した者と接触したときだ。思い当たるだろう?」


 ――あいつだ。最初に忠告してきた、グリスって海賊。


 悠の脳裏に、あの男の顔がはっきりと浮かんだ。


 メントは一歩後退し、最後に言い残す。


「決戦の舞台は、京都だ。そこで待っているぞ――クライス」


「貴様はここで仕留める!逃がすものか!」


 クライスが剣を構えた刹那。


「待ちやがれぇ!!」


 ティードが怒りの咆哮を上げ、ショットガンを構える。


「俺の死体をよくも利用してくれたな、クズども……!」


 だが――その刹那、メントとヴェンデッタの身体は宙へと浮かび、空に浮かぶ地球の方角へ飛び去っていった。


「逃がすな!!」


 クライスとデジャヴも飛行魔法を発動し、その後を追う。


「チッ……エスケープ!」


 ティードの姿も、閃光と共に掻き消えた。


 残された悠が、空を睨む。


「奴ら、このままだと……日本で戦争を始める気だ。急いで戻らねぇと!」


「どうする気だよ……!」


 焦燥をにじませ、イザが尋ねる。


「リンク!」


 悠が空間を指差し、転移魔法を発動しようとしたその時だった。


「待ちたまえ、少年」


 静かに引き止めたのはロイスだった。


「……何ですか、所長」


 ロイスは目を伏せ、少しの沈黙ののちに口を開く。


「すまなかった。君を騙していたこと、そして……私たちが行ってきた罪を」


 だが、悠は首を横に振り、まっすぐにロイスを見つめ返す。


「まずは世界を救わなきゃ。それが済んだら、珈琲でも飲みながらゆっくり話を聞かせてくださいよ」


第12話 復活の狼


 同刻 ボルケーノ王国・港街


 暗い港の空気を切り裂くように、金属の鎖が地面を擦る音が響く。ティードは、拘束した兵士十名を引き連れ、堂々と港を進んでいた。足取りに迷いはない。彼の目的はただひとつ――かつての仲間たちの解放。


 「国王、時間がない。さっさと解放しろ」


 鋭く吐き捨てるようなティードの言葉に、出迎えたボルケーノ国王ダイカンは鼻を鳴らした。


 「どれが望みだ」


 「モンキーヘッド」


 その名が呼ばれた瞬間、城の地下牢から鉄格子の軋む音がした。ほどなくして現れたのは、異形の怪物――頭蓋骨に四本の脚が生えた異形の魔物だった。


 「へへへぇ! じゃあな、お前ら!」


 獰猛な笑みを浮かべながら、モンキーヘッドが足音も軽やかに走り出す。口元から、いつ爆発魔法が飛び出してもおかしくない。


 「ウッドマン」


 続けて、鈍重な地響きが牢獄から響く。姿を現したのは、大木のような体躯をもつ魔獣。伸びた枝がうねるように揺れ、まるで周囲を威嚇するようだった。


 その咆哮が城壁を震わせる。


 「ロック」


 「サンキュー、船長! これで自由だぜ!」


 最後に姿を現したのは人間の男だった。ロック――岩石魔法を操り、自らの体を岩のように硬化させる戦士。今は両手に担いだ巨大な木を軽々と振り回し、まるで自分の腕の延長であるかのように扱っていた。


 ――それが今のティードに残された、最後の戦力だった。


 かつての精鋭はもういない。ここにいるのは、かろうじて生き延びた者たち。それでもティードはこの仲間たちに賭けるしかなかった。彼らが死ねば、もう後はないのだ。


 「これで全部だな」


 ダイカンが静かに言い放つ。ティードが黙って頷くと、ダイカンは顎で兵士たちを示した。


 「さあ、拉致したうちの兵士たちを返してもらおう」


 ティードは無言で鎖を外し、引き連れてきた兵士たちを解放する。


 「ほらよ。返してやる」


 「……約束は果たされたな」


 ダイカンの声に含みはなかった。感謝も怒りもない。ただの事務的な処理だ。


 「お前ら、行くぞ」


 ティードが命じると、モンキーヘッド、ウッドマン、ロックが一斉に動き出す。彼らは港に停泊していた一隻の船に乗り込む。潮風に混じって、鉄と魔力の匂いが漂った。


 港の一角でそれを見つめていた警備兵が小声で問いかける。


 「……行かせてよろしいのですか、陛下?」


 ダイカンは一瞬だけ目を細め、冷ややかに笑った。


 「いい。奴らはこれから“京都”へ行く……メントを殺す気だ。どうせじきに、死ぬ」


第13話 京都全戦


――京都・四条河原町


 市民たちが眠りについた住宅街とは対照的に、四条河原町の歓楽街はまだ灯を失わず、夜を謳歌していた。しかし、そこに響く声は、いつもの酔客の笑いではない。


 無数の視線がテレビ画面に釘付けになっていた。スクリーンに映るのは、空に突如現れた“もう一つの地球”。世界は騒然としていた。


 「新たな惑星の襲来から一時間が経過しました。いまだ政府からの公式発表はありません。包見さん、どう見られますか?」


 スタジオに緊張した空気が流れる。司会者がマイクを向けた先、コメンテーターの包見が眉をひそめて答えた。


 「この軌道じゃあ……もう一個の地球、月にぶつかっちゃうよねぇ」


 別のコメンテーター・塩松が補足する。


 「月の周回周期から計算して、あと六時間がリミットです。衝突すれば、地球も無事では済まないでしょう」


 ――その頃、内閣府。


 「総理、集まった情報の開示について会見の決断を」


 官僚が声を荒げる。対面に座る小林総理は深く頷いた。


 「わかった。……そろそろ始めようか」


 立ち上がり、重い扉を開けたその瞬間だった。


 「初めまして、総理」


 ドアの向こうに、異形の存在が立っていた。


 「ぎゃあああああ出たああああ! エルフだああああああ!!」


 間近で噂の“エルフ”を目撃した小林総理は、見苦しいほど叫び声をあげた。警備員たちが即座に銃を構える。


 「動くな!」


 しかし、敵は動じなかった。


 「悪いけど、結界魔法を張ってる。銃なんて通じないよ」


 総理が震えながら問う。


 「け、けっかい……?」


 「総理、君のことはどうでもいい。でも、悪いけど――死んでもらうよ」


 次の瞬間、メントと名乗るエルフの口元がわずかに歪む。


 「爆発魔法」


 閃光と轟音。官邸は一瞬にして更地と化した。


 「ヴェンデッタには、各都道府県知事の排除を任せてある。これで数時間、この国は機能を失う」


 メントは姿を消し――


 ――次に現れたのは、生放送中の情報番組のスタジオだった。


 「うわあ!! びっくりした!」


 包見が驚き、司会者が震える声で叫ぶ。


 「エ、エルフです! 信じられません! エルフが転移してきました!」


 「すまないね。この番組を少し借りる」


 メントは悠然とカメラの前に立ち、語り始めた。


 「初めまして、人間の皆さん。私の名はメント。魔国ジーンの国王だ。残念ながら、月の周回軌道の関係で、あと六時間後に地球はもう一つの地球と衝突する」


 スタジオ内が凍りつく中、メントの宣言は続いた。


 「そこでだ。私は君たちに“チャンス”をやる。人類十万人、エルフ十万人。私の創り上げる惑星に、部下として住まわせよう。人間同士で殺し合うなり、話し合うなりして――選ばれし者を決めるがいい」


 「惑星を創るには膨大な魔力と酸素が必要だ。この京都に眠る人間とエルフの“生気”を、それに変換させてもらう」


 メントが語る惑星創造のプロセスは、狂気にも似た論理だった。


 岩石魔法で球体を造り、草木を生やし、魔法で建物を築く。水魔法で海を作り、生物を養殖。そして――命を、酸素と魔力へと変換する。


 「決まったら、京都に集まれ。歓迎しよう」


 メントは言い残し、スタジオを出ると、外へと歩き出した。


 テレビ局の外――


 「動くな! 貴様は包囲されている!」


 京都府警の警察隊がビルを完全に囲んでいた。メントはわずかに目を細め、肩をすくめた。


 「見ればわかるだろう。どけよ、警官ども」


 一斉に火を吹く銃口。だが――


 「だから言ったろう、意味ないって」


 メントの身体に銃弾は当たっても、傷ひとつつけられなかった。


 「氷結魔法・ロック」


 空気が変わった。突如として吐く息が白くなり、警官たちが足元を見下ろした刹那、氷が駆け上がるように全身を覆っていく。


 「う……わああ……!!」


 声が凍りつく前に、彼らの身体は完全に氷に閉ざされていた。


 その直後――


 「全国の都知事を殺してきたわ。もう、いいかしら?」


 現れたヴェンデッタが訊くと、メントは頷いた。


 「ああ、始めよう」


 「――死体操術」


 ヴェンデッタが詠唱すると、過去に死した一万名の兵士と海賊たちの白骨遺体が、次々と地中から這い出てくる。


 骸骨たちが夜の京都に散り、市民たちに襲いかかる。


 赤い悲鳴が、夜の街に響き渡った。


 ――そのときだった。


 「……追いついたぞ。クソ野郎め」


 空を裂くように、一筋の光が差す。


 クライス、そして“デジャヴ”の戦士たちが飛来し、地に降り立った。


 メントとの、正真正銘の最終決戦が、いま幕を開ける――。


第14話 京都全戦 PartⅡ


 京都の街を覆う静寂は、すでに過去のものだった。メントとヴェンデッタが操る数百体の骸骨兵が市民を無差別に襲い、混沌が支配する地獄絵図が広がっていた。


 その中、クライスが叫ぶ。「デジャヴ!人間を守れ!」


 仲間たちは一瞬、耳を疑ったように顔を見合わせた。ギャバットが驚きに声を上げる。「人間を!? クライス王、どうしてしまったのですか!」


 エリーも同調するように続けた。「そうっすよ!人間を守るなんて!」


 クライスは静かに、自らの剣を地に突き立てた。その瞳には迷いのない決意が宿っていた。


 「もう終わりにしよう。我々が間違っていたのだ。……今でも夢にルーシェが出る。そしてこう言うのだ。『人間を守って』、ってな」


 その言葉は空気を震わせるように響いた。


 「ずっと考えていた。これがエルフの在り方なのかと。ロイスの“人間の尊厳を取り戻す計画”を知り、これはやり直せるチャンスなのではないかと思った」


 ハンドルが口元に手を当て、低くつぶやいた。「クライス王……」


 「贖罪の前にまず、この地の人間を守る! お前たちの力を貸してくれ!」


 即座に、全員の声が重なった。「ハイ!」


 ヴェンデッタの口元に冷笑が浮かぶ。「これがあなたの下した決断なのね。でも私たちに敵うと思わないことね。呪法《ツンドラ》」


 空気が凍り、鋭利な氷の槍が群れをなして放たれる。


 その直後、氷の壁が立ち上がった。白銀の壁が凍てつく刃を受け止める。


 ロイスが転移してきたのだった。「氷結魔法《ウォール》」


 ヴェンデッタは眉をひそめる。「しつこいね、嫌われるよ? 魔法使いさん」


 ロイスは肩をすくめ、皮肉を込めた声で応じた。「しつこいのはそっちでしょう。どこまで“滅亡”に真面目なのよ」


 「魔女の相手は任せて! あなたたちはこの“偽物”を!」


 ロイスの言葉に背中を預けるように、クライスたちはメントを包囲する。


 「貴様、もう逃げ場などないぞ。降伏するか?」


 メントは静かに首を振った。「誰が逃げたと? この世界は、私が壊してやる」


 そして、光の奔流がクライスに向けて放たれる。


 「私の魔法は魔力を消費しビームを放つ!」


 剣がうなりを上げ、クライスが斬り裂く。「ふぅん!!」


 ビームは空を裂き、地を焼いた。だが、それを迎え撃った剣は光すら斬った。


 その時、低空でヒューンという音が轟く。自衛隊の軍用ヘリが何隻も到着し、上空から援護射撃を始めた。


 ビルの陰から釜野が姿を現す。手にはAKライフル。骸骨兵に狙いを定めた。


 「動くな!!」


 引き金を引き、銃弾が骸骨兵を砕く。


 「……あいつが頑張ってるのに、いつまでも待っておくわけにいかん!」


 破壊されたビルの残骸を縫うように、一人の男が静かに歩いていた。深くフードをかぶったその男は、崩れた窓辺に立ち、ゆっくりとスナイパーライフルを構える。


 「久しいね、悠くん……君を殺せる好機を、逃すわけにいかないよ」


 名取だった。


第15話 京都全戦 PartⅢ


 「リンク」


 呟いた瞬間、視界が歪む。次の瞬間には、京都の崩れかけた廃ビルの中にいた。


 瓦礫の間を縫い、急いで窓際に駆け寄る。眼下では、クライスたちが数百の骸骨兵を相手に激しい戦闘を繰り広げていた。


 「クソ、遅かったか……!」


 肩で息をしながら、腰のホルスターからリボルバーを引き抜いた。カチャリ、とシリンダーを開いて弾を確認する。――残り、5発。予備は、もうない。


 突然、耳を劈くような銃声が響いた。頬をかすめる鋭い衝撃――血が一筋、顎を伝って滴る。


 「な……!」


 思わず身をかがめながら、視線を上げる。向かいの瓦礫の上、スコープ越しに悠を見据える男――名取。


 「やぁ。君がここに来るとはね」


 「お前は……!」


 「地球はもう少しで滅びるらしいからさ。その前に、この国へ少しばかり里帰りしたくなってねぇ」


 奥歯を噛みしめた。


 「のこのこ戻ってきやがって……誤算だったな。お前はここで死ぬ」


 名取の目が細められる。すでに照準は悠の額に向けられていた。


 「やってみたまえ」


 スナイパーライフルの引き金が引かれる寸前、悠は身体を横に投げ出し、近くの岩陰に転がり込んだ。銃声とともに、粉塵が巻き上がる。


 名取も身を引き、瓦礫の壁に身を隠す。互いに視線を交わせぬまま、攻防が始まった。


 「クソ……この5発で奴を殺せるか……?」


 ひとりごとのように呟いた、名取の声が飛んでくる。


 「何をぶつぶつ言ってる?」


 次の銃弾が岩の端を吹き飛ばし、破片が頬を掠めた。


 「……もうこの岩も、時間の問題か」


 奴に背を向けたまま、脳裏に集中する。リンク――悠の転移能力。それで名取の背後に出られれば、勝機はある。


 「……やるしかない、リンク!」


 視界が揺れ、次の瞬間には名取のすぐ背後に立っていた。驚愕に振り返る暇すら与えず、悠は奴の首に腕を絡め、羽交い締めにする。


 全身に力を込めて締め上げる。


 名取の意識がみるみる遠のいていくのがわかった。このままなら、首の骨を折ることすらできる――


 「このまま折ってやろうか? あァ?」


 しかし、名取は執念で拘束を振りほどいた。そして振り返りざまに拳を叩き込んできた。


 倒れ込みそうになる身体を、なんとか持ち直す。だが、名取はすでにポケットからナイフを抜き、こちらに向かって駆けてきていた。

 咄嗟にナイフを引き抜き、鋼と鋼が火花を散らす。キィンと甲高い金属音が鳴り響いた。


 その隙を見逃さなかった。名取の腹に銃口を押し当て、ためらいなく引き金を引いた。



 奴の腹に穴が空き、名取は地面に崩れ落ちた。


 「じゃあな、殺人鬼。これで終わりだ」


 血にまみれた名取の唇が微かに動く。


 「……釜野君にも……よろしくね……」


 その言葉を聞き終えると同時に、悠はナイフを逆手に構え、迷いなく奴の首に突き立てた。


 名取の身体が、最後の震えとともに静かに沈黙した。


第16話 京都全戦 PartⅣ


 ついにティードたちは、仲間を解放した末に京都の地へと足を踏み入れた。


 「メントとヴェンデッタを探して殺せ。ただし、ヴェンデッタだけは生かして俺の前に連れてこい。この手で直々に始末してやる」


 命令を下すティードの声は、冷酷で揺るぎなかった。


 「おいおい、待ってくれよ船長!」と、モンキーヘッドが不安げに口を開く。「こんな危ねぇ戦場で、俺たちまで動かす気かよ!」


 しかし、ティードは容赦なく一喝した。


 「黙れ。貴様らは弱小海賊だ。俺の指示に従え」


 その言葉に、仲間たちは沈黙するしかなかった。


 「もう時間がない。新惑星を支配するのは、メントじゃない。この俺様だ」


 その時だった。突如、ビルの影から自衛隊が姿を現し、銃口を一斉にこちらへ向ける。


 「目標確認!撃てええええええ!!」


 轟音と共に、M4の連射音がティードたちを襲った。


 「ロックバリア!」


 ロックがとっさに地面から岩を隆起させ、厚い壁を形成する。銃弾が岩に跳ね返り、チンチンと音を立てた。


 ティードはその様子を睨みつけ、唸り声を上げる。「来やがったな、自衛隊……!」


 その瞬間、彼の身体が獣のように膨張し、毛が逆立つ。牙が剥き出しになり、目が血走った。


 「ぐおおああああ!!」


 咆哮と共に、ティードは両手に構えたダブルバレルショットガンをぶっ放し、敵兵を吹き飛ばしながら突撃した。


 その混乱の中、一機の軍用ヘリコプターが空を割って近づいてくる。


 「見つけたぞ……エルフ共……支配者はお前らじゃない。この俺だ!!」


 そう叫んだのはイザ。ヘリのハッチから顔を出し、次の瞬間、ミサイルを発射した。


 爆炎がティードたちの足元を包んだが、再びロックのバリアがそれを阻む。


 「また魔法か」とイザが悪態を吐く。


 ティードの表情が歪んだ。「鬱陶しい人間共だ」


 彼は地面に拳を叩きつけ、唸るように呟く。


 「最奥魔法――デビルズ」


 次の瞬間、大地が爆発するように揺れ、辺り一帯が火と煙に包まれた。自衛隊の兵士たちも、ヘリコプターごと吹き飛ばされる。


 「うおああ!!」


 イザの叫びと共に、ヘリは炎に包まれ、火球となって墜落した。


 瓦礫に押し潰されたイザは、もはやまともに動くこともできず、焼け焦げた半身で呻くばかりだった。


 その横を、重々しい足音がゆっくりと近づいてくる。


 「バカが……!」


 イザは最後の力を振り絞り、腰からウージーを引き抜いた。そして、ティードに向けて引き金を絞る。


 無数の弾丸がティードの胸を貫く――はずだった。


 「かすり傷だ」


 ティードは血を流していたが、致命傷には程遠い。イザの顔から笑みが消える。


 「……はぁ、はぁ……ち、畜生……!」


 ティードは剣を抜き、躊躇なくその刃を振り下ろした。


 「畜生めぇえええええ!!!!!!」


 スパン――イザの首が宙を舞い、命の灯火が消えた。


 その直後、ウッドマンが空を仰ぎ、唸り声を上げる。


 「グルルルル……」


 「どうした?」


 ティードが問いかけたその時、空中にワームホールが現れた。次の瞬間、中から血まみれの女が飛び出してくる。


 「やっと戻ってこれた……」


 それは、ボロボロの服と裂けた袖、血に濡れた肌のカイラだった。


 「なに……?」


 「不思議そうな顔だな、海賊」


 ティードの眉が跳ね上がる。「どうやって戻ってきた?」


 「方法は一つしかないだろう」


 「馬鹿な……転移先でタイムトラベルを……!?」


 言葉を失うティードを前に、カイラは何の前触れもなく地を踏みしめ、モンキーヘッドを粉砕した。


 「せ、せんちょおおおおおお!!」


 悲鳴と共に、モンキーヘッドの命は潰えた。


 「貴様ぁッ!」


 怒りに任せて放たれた二発の銃弾が、カイラの肩をかすめる。


 「燃えろよ」


 冷ややかに呟いたカイラが、火炎魔法をウッドマンに叩きつけた。木の巨体が燃え上がり、絶叫が響く。


 ティードは歯噛みしながら叫んだ。「ロック! 撤退だ! 奴には敵わない!!」


 そのまま、彼とロックの姿が光に包まれて消える。


 残されたカイラは、焼け焦げた瓦礫の中を見渡し、小さく呟いた。


 「……みんなを探さないとな」


第17話 京都全戦 PartⅤ


 京都の夜空に、火の粉が舞う。死の匂いが漂い、倒れ伏す兵の呻きが闇に溶けていた。


 クライスが鋭く剣を振り上げ、目の前の敵へと叩きつけた。

 鋼と鋼がぶつかり、火花が散る。クライスの剣と、メントの杖が交錯した。


 「やはりお前の剣は脆いな」

 メントの口元が冷たく歪む。


 「……なんだと?」


 そのやりとりを遮るように、ヴェンデッタが戦場を見渡しながら呟いた。


 「まさか、被害がこの京都だけだと思っているの?」


 ロイスの頬を一筋の汗が滑り落ちる。震える手で杖を握り直し、目を細めてヴェンデッタを見つめた。


 「あなたたち……やっぱり……」


 「貴様ら、やはり異世界にも死体を放っているな」

 クライスが低く言い放つ。


 そう――ヴェンデッタの死体操術は、すでに異世界にまで浸透していた。無数の骸骨兵が、各地に姿を現し始めている。


 クライスはその動きを見越し、アルタイル王国の守備をカノンに任せていた。


 「カノン……一人で大丈夫かな」

 ギャバットが呟く。


 「ギャバット、ハンドル! 今すぐアルタイル王国へ向かえ!」

 クライスが叫んだ。


 「でも、それじゃあなたは……!」

 ハンドルが戸惑う。


 「私たちは大丈夫っす! だから行ってください!」

 エリーが力強く背中を押した。


 「了解! じゃあ、ここは任せます!」

 ギャバットたちは飛行装置で宙に舞い、異世界へと向かった。


 そして、そのとき救世主が現れた。


 「待ってろぉ! すぐ行くからな!」

 ビルの屋上を駆け、カイラが宙を翔けて現れる。


 メントの目が見開かれた。


 「まさか……あり得ぬ……!」


 「驚いてるようだな。無理もないさ」


 「どうやって戻った!?」

 メントの声が裏返る。


 「答えはこれだ――タイムトラベルさ」


 ブゥン、と空間が歪み、ワームホールが出現した。その先には、恐竜が闊歩するジュラ紀の光景が映っている。


 「禁忌魔法……転移先で、それを……!」

 メントの声が震える。


 「正解。そして今、お前を殺しに来たんだ」


 その言葉に、クライスとエリーが駆け寄る。


 「カイラ……すまなかった。ずっと、君を騙していた……」


 「もういいんだ。それより、世界を救おう。――陛下」


 クライスは深く頷き、剣を構えた。


 ◆ ◆ ◆


 《アルタイル王国 王都》


 骸骨兵たちは既に王都に到達していた。


 「くそ! らちが明かない!」


 「諦めないで!」

 カノンが剣を振り抜き、骸骨の首を切り落とす。


 そのとき、突如として空間が揺れ、男が現れる。透明魔法で姿を隠していた彼は、ロングコートを羽織っていた。


 「氷結魔法・ボール」


 氷弾が放たれ、骸骨兵を次々と貫いた。


 「あなたは……?」


 「ただの海賊の裏切者だよ。……片付けるぞ」

 グリスは銃を構え、骸骨兵に連射を浴びせた。


 ◆ ◆ ◆


 《ボルケーノ王国 王都》


 「うおおおおおッ!!!」

 ダイカンが咆哮し、薙刀を振る。火柱が舞い、骸骨を焼き払う。


 「もうだめです! 城まで突破されます!!」

 兵士が怯えた声を上げるが――


 「うろたえるな!!! 行くぞ――火炎波ぁああああ!!」


 紅蓮の津波が押し寄せ、骸骨兵たちを一掃した。


 ◆ ◆ ◆


 《ハッタン王国 砂漠》


 砂漠の地中から、次々と這い出てくる骸骨兵。フロストが血まみれのまま、剣を握る。


 「こちらの体力がもたない……ここまでか……!」


 そのとき、風が巻き起こり、轟音とともに声が響いた。


 「俺様を忘れるなぁ!!」


 ズドォン、と砂嵐を切り裂いて現れたのは――ゲイル。


 「国王! 話はあとだ! 休戦といこうぜ!」


 「貴様……神獣を返せ!」


 「冗談を言えるだけ元気があるなら安心だ! そぉら!」


 ゲイルは巨大な木槌を振り回し、骸骨兵を粉砕していく。


 ◆ ◆ ◆


 各国で、正義と悪が交錯する――

 かつて敵対していた者たちが力を合わせ、世界の命運をかけて戦っていた。


第18話 京都全戦 PartⅥ


 ロイスの叫び声が響く。


 「最奥魔法! スノーマン!」


 その瞬間、雪と氷で形作られた巨人の魔獣がヴェンデッタに向かって突進を開始する。氷の足音が地面を揺らし、巨大な影がヴェンデッタを飲み込もうとしていた。


 「真っ二つにしてあげる! 最奥呪法スピア!」


 ヴェンデッタが叫ぶと、空間が歪み、光の槍がスピアとして現れる。その槍が空を裂いて雪の巨人を貫こうとする。


 「させるか!」


 突如、空から現れたカイラがその槍をかき消すように飛び込み、ヴェンデッタの腹部を一閃、真っ二つにした。


 「な……!?」


 ヴェンデッタは信じられないといった顔で、腹から流れる血を見つめる。傷口から溢れ出る血が冷気の中で蒸発していく。


 「これはアレンの分だ」

 カイラの言葉に、無言で頷くクライス。アレンを倒したヴェンデッタが、ついにその報いを受けた瞬間だった。


 「ふん…まずいな…」


 ヴェンデッタは歯を食いしばり、表情を歪めながらその場を離れようとする。だが、追い詰められているのはヴェンデッタだけではなかった。


 「見つけたぁ! メントぉ!」

 ロックの怒声と共に、岩のような巨人が足音を立てて近づいてきた。ドシドシと地面を揺らしながら、彼は自衛隊を無双するように倒しつつ、メントを追いかけていた。


 「こっちだ、クソ野郎!」


 悠がビルの陰から奪った斧を強く投げ、ロックめがけて放った。斧は空気を裂いて飛び、ロックに迫る。


 「探偵!」


 クライスが後ろから声を上げる。


 「こっちは任せろ! メントを追え!」

 クライスは言葉を続けると、すぐに走り去った。メントの後を追いかけ、悠が一瞬その姿を見失う。


 ロックは悠を見てにやりと笑った。


 「お前が探偵か? ここで殺してやるぜ!」


 ロックはモシンナガンを奪うと、悠の眼球を狙い、一発放った。銃声が響く。


 だが、ロックは無駄に終わることを知っていた。


 「残念、俺は岩石魔法の使い手だ。目を岩のように固くすることもできるんだよ!」


 悠は思わず呆れた。


 「目の強度を強化できんのかよ! 厄介だな」


 そのとき、空からカイラが叫ぶ。


 「じゃあ、俺が何とかする!」


 カイラは一気に空中へ飛び上がり、剣を振りかぶると、ロックの頭上を狙って振り下ろした。激しい音を立てて、鋼の刃がロックの頭部を貫き、岩のように硬い皮膚を切り裂いていった。


第19話 京都全戦 PartⅦ


 クライスは歯を食いしばりながら叫んだ。


 「逃がすか、卑怯者!」


 メントを追い詰め、彼の股間を蹴り上げる。メントはその衝撃でひとたび空中に跳ね、地面に倒れ込んだ。

 苦しみながら呻き声を上げ、メントは地面にうずくまる。


 「貴様が誰かなんて、この際どうでもいい。ただお前を殺す、それだけだ!」


 クライスは剣を握り直し、メントに向けて振り下ろす。その瞬間、メントが驚くべき行動に出た。


 「さすがクライス王だぁ!」


 メントは一瞬で杖の持ち手を引き抜き、その杖をまるで剣のように変化させた。刃のような形を取った杖がクライスの腹部に突き刺さる。


 クライスが叫び声を上げる間もなく、メントは立ち上がり、形勢が逆転した。


 「かつて我らは皆が王だった!」


 メントはそのまま倒れたクライスの頭に向けてショットガンを構え、冷たい視線を注ぎながら言い放つ。


 「だがこれからは、真の王は一人でいい。」


 その瞬間、銃声が響いた。


 背中に一発の弾丸が貫通し、メントは倒れた。血が地面に広がり、その命を絶たれた瞬間だった。


 「この世界は俺のものだぁ!!」


 ティードが現れ、メントの死体を無情に踏みつけて宣言する。彼の眼には冷徹な野心が光っていた。


 「さぁ、ケリをつけよう、兄弟。」


 クライスは力強く立ち上がり、ティードに向けて答える。


 「あぁ、決着をつける時だ!」


 クライスはその場から一歩踏み込み、瞬時に居合切りを繰り出す。鋭い一閃がティードの腹部を切り裂き、血しぶきが舞い散った。


 「ぬああああああああ!!!!!!」


 ティードは絶叫し、膝から崩れ落ちる。その最後の断末魔は、京都の空気を切り裂き、遠くまで響き渡った。


 そして、戦争は終息を迎える。骸骨兵たちは一斉に静止し、異世界の地球に開かれていたゲートが閉じ、元の位置に戻った。


 クライスは剣を地面に突き刺し、深く息をつく。


 「終わった…やっと…」


 その言葉に、長い戦いの終焉とともに安堵が広がった。


第20話 平和の道筋


 終戦から二時間後、雪の無事が確認された。彼女はロシアのカリ島で、現地警察に保護されていた。異世界での長い戦いを経て、ようやく平穏が訪れた。しかし、これから二つの世界は、元の生活に戻るための道を歩まなければならなかった。その道は決して平坦ではないことが、誰の目にも明らかだった。


 「これからも貢献していこう。世界を立て直すために。」


 クライスたちは異世界へ帰還し、深い決意を胸にこう宣言した。


 「全ての人間を、あちらへ引き渡す。」


 その言葉を皮切りに、二週間後。異世界で誘拐されていたすべての人間が、家族の元に帰還した。喜びと涙が交錯する中、無事に帰還した者たちはその身に抱えきれないほどの感謝と安堵を感じていた。


 しかし、その一方で、帰還できなかった者たちがいた。死んでいった人間たちも、多数存在する。


 だが、その死が無駄でなかったことを示すかのように、エルフたちは人間の尊厳を認め、共に歩む決意を固めた。それは、この終わりなき戦争における、平和への第一歩だった。


 クライスたちは、胸の中で静かにその事実を噛みしめた。この小さな一歩が、未来に向かって大きな意味を持つと信じて。


第21話 蘇った天敵


現代 アルタイル王国 スモーク山山頂墓地


 現代では、メントの遺体を墓に還す作業が行われていた。クライスたち、そしてデジャヴはその作業に徹していた。


 「そぉら!」

 ギャバットはシャベルを力強く振るい、土を豪快に掘り起こす。


 「これで、やっと終わったんだね。」

 カイラが静かに言うと、クライスが頷く。


 「あぁ、やっとな。」

 クライスは少し疲れた様子で肩をすくめる。


 「早く手伝ってくださいよぉ!」

 エリーはサボり気味のクライスたちに声をかけ、急かす。


 「ほぇぇ、つっかれたぁ…」

 ハンドルはシャベルを地面に置き、背伸びをしながら一息ついたその瞬間。


 突然、メントが入っていた棺桶から手が突き破ってきた。

 クライスは瞬時に剣を抜き、構えた。


 棺桶の木材が破れ、メントがそこから無理矢理這い出してきた。


 「私が生きていることに驚いてるようだな。」

 メントが低い声で笑う。


 「な、なんで…?」

 ハンドルは呆然とし、目を見開いてメントを見つめる。


 「私の体得していた禁忌魔法には、蘇生術がある。」

 メントが笑みを浮かべながら続ける。「死ぬ直前に全ての魔力をそこに込めることによって、数日後に見事に蘇る禁忌魔法だ。」


 「ば、馬鹿な…!」

 クライスが声を上げ、剣を構え直す。


 「ふははぁ!そしてこれで復讐の戦争をはじめることができる…!!」

 メントの目に狂気が宿る。


 「おれが貴様を葬る…!」

 クライスの声は冷徹で、怒りをにじませながら言った。


 「雷魔法!ライデン!」

 メントが杖を振るい、雷を放つ。


 「させるかぁ!ハンドル!」

 ギャバットが叫び、鉄槌を振るうも、メントの姿は無傷のままだ。


 「化け物め…!」

 ギャバットは歯を食いしばって呻く。


 「水魔法!ショット!」

 ハンドルはクロスボウガンを構え、矢の先に水魔法を込めて放つ。しかし、矢は反射し、跳ね返ってしまう。


 メントの雷が、エリーに直撃し、激しく炸裂する。


 「強化魔法!」

 エリーは体術を強化し、雷を素早く回避する。


 「はぁ!」

 クライスが一気に駆け、杖と剣の攻防戦が繰り広げられた。


 「お供する!」

 カイラも剣を抜き、クライスと共にメントの杖に斬りかかる。


 「氷結魔法 エイジ!」

 メントが呪文を唱えると、その瞬間、クライスたちは一斉に氷結魔法で凍りついてしまった。


 「貴様らでは私には勝てんよ、このまま氷ごと粉砕してやる!」

 メントは得意げに言い放ち、爆発魔法を放とうとしたその瞬間。


 「火炎魔法 ボルケーノ!」

 空からロイスが現れ、火炎魔法で氷を溶かす。カイラたちは自由を取り戻す。


 「ほう、火炎魔法で溶かすか。」

 メントはその状況に驚きつつ、空高く舞い上がった。


 「ロイス!感謝する!」

 クライスは息を切らしながら、ロイスに感謝の言葉を送る。


 「もういい、このまま終わりにしてやる。」

 メントは飛行魔法で空へと飛び立ち、杖をクライスたちに向けて構える。


 「最奥魔法 バッド!」

 メントは杖に全魔力を込め、その魔法を放とうとしていた。


 「彼を止めないと!彼の魔力量だと、王都、いや…この国が滅びる!」

 ロイスが焦りながら叫ぶ。


 「魔力を溜めている状態で岩石魔法で体を覆っている!全員の最奥魔法で奴の奥義を食い止める!これしかない!」

 クライスが冷静に指示を出す。


 「総員!武器を奴に向けよ!」

 クライスが命令を下すと、全員が一斉に武器を構える。


 「最奥魔法!ホワイトショット!」

 全員の武器が白く光り始め、最奥魔法が放たれる。


 「これで…終わりだぁ!!!!」

 メントの杖から黒いビームが放たれる。対するクライスたちの光線がぶつかり、その衝撃で空の雲が一気に消え去った。


 「うおおおおお!!いけえええ!!!」

 クライスが叫び、ビームがメントの黒いビームを突き破る。


 「馬鹿なぁ!!」

 メントは最後の叫びを上げ、ビームにさらされると、身体ごと消滅していった。


 「やっと…終わった…のか…!」

 クライスが息を整え、呟く。


 「ええ、そのようですね…!」

 カイラが静かに答え、クライスの肩に手を置いた。


 クライスたちは安堵の表情を浮かべ、肩を抱き合って立ち尽くしていた。


第22話 異世界誘拐事件録


 飛鳥探偵事務所


「…はよ!おきて!」


 突然、雪の声が耳に飛び込んできた。まるで夢の世界から引き戻されるように、目を覚ます。


 夢を見ていた。恋人の雪と、夕暮れ時の静かな砂浜に並んで座り、結婚について話している夢だ。あの穏やかな空気の中、言葉がようやく口をついて出た。


 「雪、話があるんだ。」


 雪は俺の肩にもたれかかり、穏やかに「なーに?」と微笑みながら聞き返してくれた。


 「俺と結婚してほしい。」


 ついに、ずっと言いたかった言葉が口をついて出た。あの夢の中で、ようやく勇気を出して言ったんだ。


 だが、その時、突然目の前が明るくなった。


「は!」


 雪の掛け声と共に、埃をかぶったソファの上で目が覚めた。夢から引き戻された現実に、しばらくはぼんやりとした状態だった。


「おはよ!凄いうなされてたね。」


 雪の笑顔が見え、私は安堵の息をついた。


「あ、あぁ...いい夢を見てた。」


 うん、あの夢は現実でも叶うかもしれない、そう思った瞬間、心の中で何かが温かくなった。


 でも、心のどこかで、やっぱりこの気持ちを伝えなければと思っていた。無意識に口に出していた。


「...雪、話したいことがあるんだ、大切な話。」


 雪が少し驚いたようにクスクスと笑い、こちらを見た。


「急に何?」と、少し不安げに。


 でも、この瞬間が、俺にとって一番大切なものだった。


「俺と、結婚してほしい。」


 ついに言ってしまった。その瞬間、心臓がドキドキと速く打ち、顔から汗がにじみ出るのを感じた。


 雪はしばらく黙って、じっとこちらを見つめていた。その静かな時間が、何もかもが確かに過ぎる瞬間だった。


 そして、ようやく雪が口を開いた。


「私でよければ、是非したいです。」


 その言葉に、俺は胸がいっぱいになった。恥ずかしそうに照れる雪を見て、俺もつられて笑顔がこぼれた。


 こんなに幸せな瞬間が、これから続いていくことを信じられる気がした。


 そして、俺に降りかかった全ての騒動が、今、こうして終わりを告げる。


 後世の時代に残すべき物語、それがここに記されるべきだと思った。


異世界誘拐事件録


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。